町田,鶴川に向かう。目的地は白州次郎、正子夫妻が、昭和18年より居を構えた白州邸。
「私はコレクションと言うものをしたことがない。
第一に先立つものに欠ける。
そんなことは性に合わない。
で、私に手に負える範囲の好きなものを、あれこれ買っているにすぎないが、
長年やっている中に、おのずからそこに一つの基準といったようなものは出来上がっていった。
ひと口にいえば、
私は日常生活に使えるものしか買わないのである。
したがって大変個人的なもので、自慢してお目にかけるようなものは一つもない。
言ってみれば物を喰べるように買っているだけで、努力して集めたものはないのである。
白州正子
過ぎ去ってしまった時代の暮らしということでなく、真に生き抜くための清々しい姿勢がそこここに今も在った。
正子さんの審美眼で選ばれたもの、育てられたもの、大切になさっておられた「ものたち」が、
今もなお邸のあちらこちらで静かに正しく息づいていた。
主が居ないなあと、ずっと道具たちは気付いているのだろうけれど。
次郎さんが亡くなる少し前にお二人で京都に旅され、そこで絵付けをされたお湯のみもあった。
大胆に大きく、「丸」が描かれたお湯のみ。「丸い円」が描かれたその筆跡が。いかにも大らかで。
大振りのお湯のみの真ん中に鎮座するその次郎氏の「丸い円」に惚れた。
お湯のみの直ぐ近くに・・・亡くなられる数年前(4年前?)に書かれた直筆の「葬式無用 戒名不用」の遺言。
以前。日曜美術館でだったか・・・知ったのだった。まさにこの遺言を。
その時とても驚き、衝撃的だったのを思い出す。
出来得るならば私もそうしたいのだ。記しておかねばと!
しつこいですが・・・苦笑。次郎さんのお湯のみの「丸い円」。本当に美しかったなあ。
最後の京都旅行のお二人のお写真もとても素敵でした。
緑深い静寂に包まれた鶴川の白州邸。
何年もの間、訪れてみたいと思っていました。想いが叶いました。
教えて頂けたこと一つずつ・・・叶えていきたいと思います。