虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

歴史は女で作られる(1955/仏)

2004年06月21日 | 映画感想ら行
監督:マックス・オフュルス
出演:マルチーヌ・キャロル ピーター・ユスチノフ

 19世紀、ヨーロッパの社会で一世を風靡し、さまざまな著名人・国王と浮名を流したローラ・モンテスの生涯を描く。

 なんていうと、女性一代記みたいですし、そういう風に見られないことはないけど、これはローラ・モンテスという数奇な一生の女性の生涯に寄せて、映画としての語り口みたいなものを見せてるような映画ですね。
 ローラ・モンテスはスペイン舞踊のダンサーとしてもてはやされ、栄華の日を作曲家リストや、バヴァリア国王の恋人として過ごした後に、落ちぶれてサーカスの見世物になります。実際、この女性にとって凄まじく残酷なシーンが連続していくわけで、さらし者にされ、不躾な質問を浴び、挙句が「たった1ドルで、あなたも元国王の愛人に触れられる」というありさま。その屈辱のシーンと彼女の回想の中の華やかな過去がまるで層のように重ねられ、まだまだ美しい彼女のその場の表情を一層痛切に見せていく。混ざり合うのではなく。重ねられる、という印象。
 印象的なシーンが多い。船上での窓越しのダンスシーンから一人舳先で空を見上げるローラ、リストとの別れの朝のローラ、パレードに向かってまっすぐ馬を走らせるローラ、針と糸を求めての大騒ぎ…
 本当の意味での賢さを持たなかったかもしれないが、きっと彼女はセンスがよくて機転が利いて、最高の恋人だったのだろう。しかし、皆彼女のもとを去り、しかし彼女はそれをきっぱり見送れる女だった。自分の生きたい様に生きる、と言い切る女だった。男女を問わず、世界はそういう人間に甘くない。