文春文庫
これもページが黄色くなりかけてる本。第1刷1985年、単行本発行が1980年。
エイズ以前のそれまでのピューリタン的な性道徳一色だったアメリカの性意識・行動が変革していく様子を、実際にその地での長い生活体験に基づいた深い洞察に基づいた性についての文化論。
ベトナム戦争とウーマンリブ、何よりも社会構造の変化によって社会全体で共有されていた伝統的なキリスト教価値観が不安定になり、またアメリカ本体の「個」の独立の強調と、人間の評価が「どんな役に立つか」という市場性志向が強くなった反動としての「人間らしく」というヒッピームーブメントなどのなかで、当時行われていた性の実験を丁寧に描写している。
第2章から7章までの婚前交渉、同棲、婚外性交、スウィンギング、オープン・マリッジ、グループ・マリッジで統計や当事者の声、また図解など著者自身の分析がとてもわかりやすい。
今の時点では、これがそんなに画期的だったのか、とか思う事象もあれば、グループ・マリッジやオープン・マリッジは坂口安吾じゃないけれど、人間の本性に反してないかと思う。嫉妬は自分でコントロールできるようなものではないから。著者自身もセックスパートナーを複数共有することの困難さを指摘し、性関係を中断したカップルのほうが生活の伴侶を続けていけるかもしれないと述べている。
・・・そして今はどうなったのだろう。
今文化的に性を分析するにもエイズを抜きには出来ないし、太平洋の対岸で見ている限りでは、処女性の価値もゆり戻しつつも元には戻れないような気がする。それに20世紀のウーマン・リブは、その現象が一部でどんなに浅はかに見えてもその影響力は決定的で、リブ以前とは口に出来る事柄がまったく変わってきている。
それでも、この本を読んでアメリカ人のパワー信仰は今に同じだと思うし、その何事にもじつに真面目に取り組む、読んでいるほうではその真面目さに悲喜劇を感じてしまい、これがアメリカというものであろうかとしみじみ思う。
最終章で引かれている孤独な独身者の言葉は今現在のものだと言ってもなんらの違和感は無い。
「誰でもいいからしっかり抱きしめていたいんだな。誰かと体と身体をくっつけていたい。セックスとは違うんだ。これはもっと感情的なものなんだ。女の子を抱きしめると心が温かくなる。」(31歳男性教師)
「誰でもいい、僕をかまってくれる相手がほしい。…誰か家にいて俺を励ましてくれる人間が、必要なんだな」(28歳男性株屋見習い)
「「たった一人で食事をせずに済むのなら、今すぐにでも男の人と同棲するわ。でも男の人と知り合う機会なんて無いんです。」(25歳新聞社秘書)
映画「ミスター・グッドバーを探して」に漂う凄まじい孤独感、これはイギリス映画だけど「ブリジット・ジョーンズの日記」で見た欧米社会のカップルプレッシャーなどを見るにつけても、日本社会にどっぷりつかって育った私は、順応するのが難しそうだ。
===============
余談になるけれど、最近のニュースで関連性のあるのを見たので。
64人の女子高生が妊娠した高校=米オハイオ州
【ライブドア・ニュース 09月05日】- AP通信によると、米オハイオ州カントンのティムケン高校では、現在、490人の女子高生のうち約13%にあたる64人が妊娠しており、その高い割合が全米で話題となっている。
アメリカの高校生の妊娠率は下がってきていたのだが、ここ最近上昇しているとのこと。これはブッシュ政権になってからの純潔教育が逆効果になっているのではないかという指摘もある。
うちにアメリカ留学の準備をしているのが一人いて、先輩からあちらの大学の講義ノートを借りたりしているのだが、こと生理学的に事実に関しては「もう全部書いてあって、図も詳細ですごい」らしい。大学でこれだけやってるのに、高校まではどうなんでしょう? 私は、身体を守るのに必要な知識はきちんと教えないといけないと思っています。日本も最近性教育の行き過ぎなんていっている人もいますが、マンガ雑誌で覚えるよりは学校でそれを見せられて気分悪くなったほうがましです。ただ、中高生の意見をきくと、男女別に分けたほうがいいかなとは思います。みんなの前で保健の本を読まされるのすごく恥ずかしいらしいです。
これもページが黄色くなりかけてる本。第1刷1985年、単行本発行が1980年。
エイズ以前のそれまでのピューリタン的な性道徳一色だったアメリカの性意識・行動が変革していく様子を、実際にその地での長い生活体験に基づいた深い洞察に基づいた性についての文化論。
ベトナム戦争とウーマンリブ、何よりも社会構造の変化によって社会全体で共有されていた伝統的なキリスト教価値観が不安定になり、またアメリカ本体の「個」の独立の強調と、人間の評価が「どんな役に立つか」という市場性志向が強くなった反動としての「人間らしく」というヒッピームーブメントなどのなかで、当時行われていた性の実験を丁寧に描写している。
第2章から7章までの婚前交渉、同棲、婚外性交、スウィンギング、オープン・マリッジ、グループ・マリッジで統計や当事者の声、また図解など著者自身の分析がとてもわかりやすい。
今の時点では、これがそんなに画期的だったのか、とか思う事象もあれば、グループ・マリッジやオープン・マリッジは坂口安吾じゃないけれど、人間の本性に反してないかと思う。嫉妬は自分でコントロールできるようなものではないから。著者自身もセックスパートナーを複数共有することの困難さを指摘し、性関係を中断したカップルのほうが生活の伴侶を続けていけるかもしれないと述べている。
・・・そして今はどうなったのだろう。
今文化的に性を分析するにもエイズを抜きには出来ないし、太平洋の対岸で見ている限りでは、処女性の価値もゆり戻しつつも元には戻れないような気がする。それに20世紀のウーマン・リブは、その現象が一部でどんなに浅はかに見えてもその影響力は決定的で、リブ以前とは口に出来る事柄がまったく変わってきている。
それでも、この本を読んでアメリカ人のパワー信仰は今に同じだと思うし、その何事にもじつに真面目に取り組む、読んでいるほうではその真面目さに悲喜劇を感じてしまい、これがアメリカというものであろうかとしみじみ思う。
最終章で引かれている孤独な独身者の言葉は今現在のものだと言ってもなんらの違和感は無い。
「誰でもいいからしっかり抱きしめていたいんだな。誰かと体と身体をくっつけていたい。セックスとは違うんだ。これはもっと感情的なものなんだ。女の子を抱きしめると心が温かくなる。」(31歳男性教師)
「誰でもいい、僕をかまってくれる相手がほしい。…誰か家にいて俺を励ましてくれる人間が、必要なんだな」(28歳男性株屋見習い)
「「たった一人で食事をせずに済むのなら、今すぐにでも男の人と同棲するわ。でも男の人と知り合う機会なんて無いんです。」(25歳新聞社秘書)
映画「ミスター・グッドバーを探して」に漂う凄まじい孤独感、これはイギリス映画だけど「ブリジット・ジョーンズの日記」で見た欧米社会のカップルプレッシャーなどを見るにつけても、日本社会にどっぷりつかって育った私は、順応するのが難しそうだ。
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余談になるけれど、最近のニュースで関連性のあるのを見たので。
64人の女子高生が妊娠した高校=米オハイオ州
【ライブドア・ニュース 09月05日】- AP通信によると、米オハイオ州カントンのティムケン高校では、現在、490人の女子高生のうち約13%にあたる64人が妊娠しており、その高い割合が全米で話題となっている。
アメリカの高校生の妊娠率は下がってきていたのだが、ここ最近上昇しているとのこと。これはブッシュ政権になってからの純潔教育が逆効果になっているのではないかという指摘もある。
うちにアメリカ留学の準備をしているのが一人いて、先輩からあちらの大学の講義ノートを借りたりしているのだが、こと生理学的に事実に関しては「もう全部書いてあって、図も詳細ですごい」らしい。大学でこれだけやってるのに、高校まではどうなんでしょう? 私は、身体を守るのに必要な知識はきちんと教えないといけないと思っています。日本も最近性教育の行き過ぎなんていっている人もいますが、マンガ雑誌で覚えるよりは学校でそれを見せられて気分悪くなったほうがましです。ただ、中高生の意見をきくと、男女別に分けたほうがいいかなとは思います。みんなの前で保健の本を読まされるのすごく恥ずかしいらしいです。