虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

和泉式部日記

2005年09月26日 | 
中原中也も、その詩に陶然となるけれど、凡人の手に負える人じゃないなあ、とため息が出る人です。
和泉式部は女性で、私の「かなわないなあ」の筆頭に上がります。

 冷泉院の皇子為尊親王の恋人だった和泉式部(当時人妻)が、疫病で皇子を亡くした後、その弟、敦道親王と恋に落ち、世間の糾弾にもかかわらず屋敷に移り、皇子の妻が憤激のあまり家を出るまでの10ヶ月を孤独感と恋の至福をともどもに描く。
 恋多き女と評判の和泉式部に、おそらくはじめは好奇心から近づいた親王が、お互いの魂の共感を感じて、恋の虜になっていくのが私にはどこか恐ろしいように感じる。和泉式部本人作説が有力になっているようだが、「憂し」「はかなし」な雰囲気と苦しみと孤独感に満ちて、それがまた、この世で心の寄り添える人と出会えた愛の歓喜の一瞬の至福の輝きを増しているよう。
 これは、自他の感情を深いところで感じ取り、その表現を創造する稀有な才能の行為であって、誰にでもできる恋ではない。残された情緒纏綿たる歌さえも、その余剰部分という気がするほど。その余剰部分たる歌が、生み出されるべくして生み出されたような宝石ぞろいなのだから。その心の呼吸が自然に言葉になったような歌が、私のような散文的な人間にも「これは私の心が求めていた言葉だ」と叫ぶような共感を抱かせずにいない。
 世間の目も痛く、人を傷つけている自覚も、罪悪感も十分すぎるほど感じていてもどうしても離れられない、自分のすべての心を相手に注ぎ込んでしまうような恋。

 私は、それほど深い恋をする能力は無いな、と読むたびに感じさせられる。でも、これは私の待っていた言葉なのだ。

 人間それぞれ能力とか、向き不向きがあって、私なんか事務的なことがきちんと出来ないとか、取扱説明書を読まない男って、むちゃくちゃ嫌いだ。別に親しくなければほって置けばいいようなものだけど、ビデオの再生画面が乱れてるのに、トラッキングも調整せずにそのままぶつぶつ言いながら見ている男は腹が立つ。実生活もきちんと抑えて、その上で芸術的飛躍も求めるのはぜーたく過ぎるし。
 私も波乱を含んだ人生には憧れはどっさりあっても、自分は無理だと思うし。
 座って本を読んで心を泳がせるほうが似合っていて、自分からシュトルム・ウント・ドランクに飛び込むと即座におぼれるだろう。
 無理なだけに、憧れは強烈なのかもしれない。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
取扱説明書を読まない男 (arudenteな米)
2005-09-28 07:45:31
いや、耳が痛い(笑)

自分はゲーム、機械類はまず触って直感的に分らないと説明書を改めて読むタイプなので。

最初からルール・操作が複雑なものは見ますが体感しながら痛い目にあわないと身体が覚えないという駄目な部分があります。

返信する
すいません (ningyo)
2005-09-28 08:05:03
言葉足らずでした。

「トラブルがあるのに、説明書も読まない」

と置き換えてください。

説明書に書いてあるような対処方法さえも知ろうとしない人は、やっぱり私は苦手です。
返信する