虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

希望の降る街 (1942/アメリカ)

2005年09月30日 | 映画感想か行
THE TALK OF THE TOWN
監督: ジョージ・スティーヴンス
出演: ケイリー・グラント
    ジーン・アーサー  
    ロナルド・コールマン 

 工場が全焼し、工場長が死ぬ。放火殺人で工場主に告発されたティルグは、町の感情を敵に回し、死刑は免れそうも無い。脱走した彼が逃げたところは、ガールフレンドの家の別荘。そこはちょうど、次期最高裁判事に推されようという、法学者が論文執筆のために借りたところだった。

 スターが揃って、映画自体もサスペンス、コメディ、ラブストーリー、シリアスな法廷シーンもちょっぴりというわけで、なかなか贅沢な映画でした。
 象牙の塔の教授が、実生活で不正と戦うティルグと、町の中の正義が通らない現実を知り、実力行使しても無実の彼を守ろうとする。そして、ティルグのほうは教授の高潔さを感じて、最高裁判事としての彼に傷をつけまいとする男同志の友情が育つ。そしてジーン・アーサーは、二人の男の間を揺れて、最後までどちらが本命かわからずに見るものを引っ張る。
 ティルグ役のケイリー・グラントの、ブルーカラーでも、ホワイトカラーでも馴染む演技力とシリアスなのにどこか暢気な逃亡者もあまり不自然でない軽やかさ、ジーン・アーサーの前向きな明るさ、コールマンの素敵な紳士ぶりにどっしりした安定感と、日本未公開とはいえ、今まで全然知らなかったのが不思議なほどリッチ感のある映画。
 最後はほっとするハッピーエンド。

 まあ、アメリカの正義が健在な時代のストーリーですが、それでも、感情が煽られるとリンチも辞さないというか、やはり「血に飢えた」といいたいような大衆気運が、わりと簡単に醸成される状況は恐ろしい。その中で、敢然と正義を守ろうとする弁護士さんも描かれるけど、本当に信念に生きるというのは命がけな状況だとつくづく思ったりもする。

 昔の映画が好きな人のほうが楽しめる映画だろう。