虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
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カルメン (1915/アメリカ)

2005年09月02日 | 映画感想か行
CARMEN
監督: セシル・B・デミル
出演: ジェラルディン・ファーラー 
    ウォーレス・リード 
    ペドロ・デ・コルドバ

 これは、高校生が借りてきたビデオで、それがジェラルディン・ファーラー主演、セシル・B・デミル監督のものでそんなものがあったのか!と今までまったく存在を知らず驚いてしまった。
 ジェラルディン・ファーラーについては前に読んだ推理小説で知っていた。
 彼女は1901年にデビューし、1922年に引退するまでその美貌と演技力で、特に若い女の子に人気があったオペラ歌手。その取り巻きの少女たちはジェリー・フラッパーと呼ばれ、小説の中でもまるでベイカー・ストリート・イレギュラーズとはいかないまでも、彼女の忠実な協力者となっている。ことほど左様に人気のあったソプラノ歌手で、映画に出たことは知っていたが実際に見られるとは思っていなかった。
 このビデオは、はじめに解説、次に映画用に編曲したビゼーの曲の入った本編、そしてジェラルディンの声で名場面をもう一度というつくりで、なかなか親切で、しかもオペラファンにも嬉しい構成。

 このカルメンはオペラ以上に悪い女で、はじめからホセを篭絡する目的で近づくし、ホセもいかにも純情そうで、いわゆるマジメ男を堕落させる悪女カルメンのイメージどおりの展開。
 ファーラーは声がないサイレント映画なのに実に魅力的でしかも良く動く。思ったよりも小柄。表情が大きいので時々顔の影が濃過ぎるように感じるときはあるけれど、天性女優なんだなあ、と思う。カルメンに見えるのだ!声は軽やかだった。当時の批評も入っているが、あまり好意的なのは多くないようだけれど、彼女は人が見たがっているカルメンのイメージを捉えて実に的確に演じていると思った。
 デミル監督のスペクタクルなシーンはそれほど多くないけれど、闘牛場のシーンはさすがの熱気。でも群集シーンよりホセが我を忘れて人を殺してしまうシーンが一番迫力があったと思う。
 
 いいもの見っけ、と嬉しくなった一本。

 ちなみにファーラーが探偵役を務める小説はこちら↓



気ままなプリマドンナ / バーバラ・ポール
中川法江訳 サンケイ文庫 昭和61年第1刷(けっこう古い)
 カルーソーやトスカニーニなど実在の人物が登場し、ジェラルディンは勝気で魅力的でちょっとわがままな自信に溢れた、でも己をよく知っているヒロインです。この小説の背景になるのもカルメンの舞台。

それにしても、こんなビデオを借りてくる高校2年生…
私のようにオタクと呼ばれる道を歩むのではないかと気がかりである。