虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

千葉から教育について研究している方が虹色教室にいらした時の記事です

2014-04-24 17:34:21 | 教育論 読者の方からのQ&A

 

千葉からいらした教育の研究をしておられる先生から、見学のあとでこんな感想を

いただきました。感想の一部を紹介します。

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ああなるほど、そうすれば子どもは興味を持ち、自分で工夫するようになるのか。

その連続でした。

教えているのだけれど、手取り足取りではない。

やり方を示すが、あとは任せる。そうすると、子どもたちがふくらませていく。

やってみせるときに、「高さが合うようにこうして・・・」というように、

言葉で理由を添える。これで、子どもの言語能力を伸ばしている。


算数は、印象を刻み込んで、さらりと切り上げる。これが、うまい。

言葉にすればこんなことになるのですが、ああすごいすごいと思って、

2時間がすぎました。

私も子ども心を思い出し、ベルトコンベアを引っ張ったり、輪ゴムをつけた風船を

耳に当てたりしました。

濡れたマジックボールの手触りは、なんともいえず心地よかった。

子供時代の、全身全霊の感覚で生きていたころを思い出しました。嬉しかったです。

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感想を読んで、

さすがに普段から個別の子どものニーズに応える方法を模索しておられる方ですから、

一度さらっと見学するだけで、いちいち説明しなくても、

どのような目的でその環境が用意されていて、どういう理由で言葉がかけられていて、

手伝い方、励まし方、どこで切り上げるのか……

といったどんな些細な配慮にも気づき、それがどのような効果につながっているのか

把握しておられるのに、こちらの方が「さすが……」と驚いてしまいました。

 

わたしの方が、

「あぁ、そういえば、子どもがこうすれば乗ってくれると無意識にやっていたので、

(ブログで)きちんと言葉にして伝えてこなかったことがあったな」と説明不足に

気づいたくらいでした。

 

 

 

「どうすれば興味を持ち、

どうすれば自分で工夫をし、

どうすれば自分の頭で考えるようになるのか?」

 

1年生の女の子グループのレッスンを例に工夫しているポイントを書かせていただきますね。

 

子どもたちはガムをワセリンを使っておばけ煙を作る実験や

手作りの船に歯磨き粉やせっけんをつけて動かす実験をしたあとで、

友だち同士で話し合って「かばん作り」をすることになりました。

 

 「かばん作り」は女の子たちに人気の工作で

教室でも何度かこしらえたことがあります。

最初に一人の子が、「かばんなら、作り方知ってる知ってる!」と言いました。 

何について知っているのか説明を求めると、次の3点でした。

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★ かばんは、素材のシートを半分に折ってから切ると、

同じ形が2枚切り取れるので、縁をテープなどでとめれば基本の形ができること。

 

★ 取っ手のひもは、2本同じ長さに切る必要があること。

 

★ 底の部分にまちを作るには、2枚のシートを貼り合わせてから、

三角形に折るといいこと。

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ほかの子らも、「わたしも知ってる、知ってる」と言いました。

 

「知ってる、知ってる!」と言っていたはずのかばん作り。

でも作り始めたとたん、さまざまな難題にぶつかりました。 

というのも、どの子も、みんなが「知っている」方法でかばんを作るのでは

満足できなかったからなのです。

 

「端っこをテープで貼るんじゃなくて、縫いたい」とのこと。

おまけに縫うために使う毛糸はシンプルな扱いやすいものではなくて

モコモコしたものやボンボンがついている特殊な毛糸で縫いたいというのです。

 

最初から決まった素材で決まった作り方をしていくのなら、

指示に従いながらていねいに作業していけば作品はできあがります。

でも「こういうふうにしたい!」という気持ちがあると、

次から次へとうまくいかないことにぶつかります。

すると自然に知恵を絞ることになります。何かをする上で、何に注意しなくては

ならないかも覚えます。

 

縫うために穴をあける作業は目打ちで行います。

怪我をしたらいけないので、目打ちを使う子は一人だけにし、

ほかの子は周囲をうろうろしたり、急に目打ちを使ってる子の近くにあるものを

取ろうとしたりしないように気を配ります。

 

穴をあけるときにテーブルを傷つけたらいけないので、

固めのスポンジを下敷き代わりにして、等間隔に穴をあけていきます。

 

そこで子どもたちが頭を抱えていた問題は、次のようなことです。

 

① ひもが穴に通らない!  

 わたしのアドバイス → 「穴の直径に気をつけて!」

「ひもの先が柔らかいままだと通らないよね。」

 

解決法 → 目打ちの後でえんぴつで穴を広げて、ひもの先をセロテープでくるんで

針のようにする。

 

② 縫った後でひもが抜けちゃった。 

解決法 → ひもの最後の部分に、結び目を作るかセロテープをとめておく。

 

③ 穴を大きくしようとすると、そこから裂けてシートが敗れちゃった。 

解決法 → 縁をセロテープで覆う。

 

④ キラキラしたシールが5人で分けにくい。 

解決法 →まず、1列ずつ人数で分けることにし、残った塊を分数の考え方で分ける。

 

「こういうふうにしたい」という自分のイメージを実現しようとすると、

「必要は発明の母」じゃないですが、うまくいかないことにぶつかって

必要に迫られると、発明や工夫が生み出されるものです。

 

また、それは「難しいでしょ」と思うことも、最初から、「できないよ」と決め付けず、

何とかうまくいかないか試行錯誤していると、

子どもの側から画期的なアイデアが生れてくるころは多々あります。

 

たとえば↓の写真にあるボンボンつきの毛糸にしても、

「それじゃあ縫えないよ」と言うのは簡単なのですが、

「どうして縫えないのだろうか」と理由をよく検討し、

別の視点から方法を探ってみると、解決法はあるものです。

 

ぼんぼんのある位置からひもの先まででカットしたものをたくさん作って

一つの穴ごとにひもを結ぶ形で作っていく……とか、

穴のサイズをぼんぼんが通るくらい大きくして縫って、

縫い終えてから穴をふさぐ工夫をする……など。

 

「こういうふうにしたい!」という思いからスタートする物作りは

苦労したわりに仕上がりはイマイチ……という結果に終わることも多々あります。

 

それこそ「こういう物を作りましょう」と

最初から「できあがるもの」がわかっているキットで作ったり、

大人の指導のもとで作ったりした方が、作品としたら見栄えのいい価値がありそうな

ものができあがるのです。

それを痛烈に感じるのは、

作品として何を作ったのやらよくわからない物ができあがるときです。

 

↑は小学3年生の★ちゃんの作品。

コースターにひたすらきれいな柄のマスキングテープやビニールテープを

貼りつけただけ……という作品です。

 

このマスキングテープ……

「高価なものだからね!貴重なものだから、大事に使ってちょうだいね」とわたしが

口うるさく注意するのを聞いて、よりいっそう無駄使い熱に火がついたのか、

★ちゃん、せっせせっせとテープを貼りまくって作っていました。

(★ちゃん、かなりのいたずらっ子です)

 

★ちゃんは感覚が優れている子で、できあがり作品をイメージして作るというより

製作過程の素材との触れ合いを楽しむような作り方をする子です。

わたしもほんの少しで300円もするテープをこれだけ無駄使いさせるからには、

その場にいる子全員に、円の面積をテープで貼って埋めていくと、いかほど必要か

しっかり体感してもらいました。

 

ついでの単位量あたりの計算も。

このくらい「しめしめ無駄使いしてやったぞ」という経験をすると、

「3メートル300円のテープを1キロメートルの道にまっすぐ貼っていきます。

テープは何円分いりますか?」

なんて問題もリアルにイメージすることができるでしょう。

 

こうした作品を工作と呼べるのかどうか……は別にして、

物作りがその後に学ぶ算数とつながっているのは確かです。

また、頭の使い方を習得するのにも役立っています。

 

同じ日、★ちゃんはコースターにビーズやスパンコールをつけて

アクセサリー類を作る方法で画期的なアイデアを発見しました。

これまで、コースターに飾りをつける子たちはボンドかテープでつけていました。

が、★ちゃんは、こよりにビーズやスパンコールを通してから、

コースターに目打ちで穴をあけて、こよりで飾りを取り付けるという方法を

考え出したのです。 この作り方だとボタンなどもはずれにくいし、

ビーズの連なっていくデザインの美しさを表現しやすいはずです。

 

作品としての「できあがり」の良し悪しだけでなく、

製作工程について独創的なアイデアを練ることも大切なことを

★ちゃんの作品を見せながら子どもたちに伝えました。

 

    

 ↑女の子たちの綺麗な作品。

 


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