虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

相談 やるべきことをさっさとできない子。必要最低限のことをしてほしい

2021-08-12 16:15:05 | 教育論 読者の方からのQ&A

障害ではなく個性なのだとわかっていても、宿題をさせたり、遅刻させないだけで、毎日が修羅場。
わが子の良さはわかっているけれど、必要最低限のルールだけは守ってほしいし、「やらなきゃいけないことならばさっさとやる」ということを、いつになったら分かってくれるのか……心が折れそうです。
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という悩みをうかがうことがあります。

修羅場となっている現状から抜け出し、子どもが自分の問題に、自分で向き合っていくようになるには、どうすればよいのでしょう?

いったん、これまでの経緯と今の様子と、今後の可能性を整理して考えてみると良いかもしれません。

上の悩みを打ち明けてくださった方によると、お子さんは園で何度か先生から指摘を受けて、発達検査を2度受け、発達障害はないと診断されたそうです。

ここで大事なのは、子どもさんの気がかりを、たくさんの子どもの世話をしている園の先生も指摘しているという点です。

つまり、この子に必要最低限のことをさせることは、保育や幼児教育のプロにとっても困惑するものだったはずなのです。

ですから、この子に必要最低限のことをさせるだけでヘトヘトになっている親御さんというのは、一般的な親御さんより神経質なわけでも、子どもに過剰に期待しているわけでも、しつけが下手なわけでもないことがわかります。

そのことを、親御さん自身が納得して、それでも子育ての責任を果たしている自分をねぎらってあげる必要があると思うのです。

検査をして明らかなハンディーキャップがなかったということですから、気持ちを切り替えることの難しさや、不器用さからくる作業の遅さや、嫌なことを後回しにしようとする態度や、時間にルーズで動作が鈍かったりするところは、一朝一夕には直らないけれど、本人が自分で自覚して直していかなくてはならないところです。



同じ親御さんが、次のようなエピソードをつけくわえておられました。

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それでも、入学と同時に一番問題が少なくて簡単そうな通信教育を始めて、そちらは週3回ほどやっていますがそれなりに楽しそうに取り組んでいます。知らない間に理解力もついていました。
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このエピソードからわかるのは、
ゆっくりではあるものの、できることはがんばっていこうという前向きな努力はする子だということです。
でも、できないことがある……ということです。



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必要最低限のルールだけは守ってほしいし、「やらなきゃいけないことならばさっさとやる」ということを、いつになったら分かってくれるのか……
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と親御さんが、子どもの愚図ぶりにやきもきするとき、親御さんの外の人間から、「親が、最低限のことを子どもにきちんとやらせてほしい。ちゃんとした親をしてほしい」と期待されると苦しくなることと思います。

もし、学校から帰宅するなり、ランドセルから連絡帳と宿題を取り出して、テキパキとすることを済ませ、ついでに明日の時間割まで合わせてしまって、「宿題は少ないから、お家のワークもしたいな」と言うような子を育てているとすれば、誰だって楽して立派な親ができるわけです。

そうでないから、毎日、苦労をしても、苦労をしても、報われなくて、親としての自信がぐらつくのですから。

でも、この状況は、子どもの側にも言えることなのです。
「やらなきゃいけないことならばさっさとやる」ことを心地よく感じて、集中することが苦にならないような脳に生まれて、手先も器用で、テキパキ動ける体に生まれたならば、自分から進んで、するべきことをこなしているはずですから。

「あぁ、割にあわない……」と感じても、自分の身体も脳も取り替えることは不可能ですから、思い通りにならない身体や脳を持って生まれても、それを受け入れて、がんばっていくしかありません。

宿題の塗り絵をグズグズするようなとき、「これくらいのことができない」と冷たく突き放すのではなく、塗り絵くらいは少し手伝ってあげて、そうした温かい雰囲気の中で、ほんの少しだけでも成長した部分を見つけていっしょに喜び合っていると、子どもの側も、小さな進歩に気がつくようになって、自分を励ましてがんばれるようになっていけるかもしれません。

苦しい努力をしている子を攻撃しても、0か100かの捉え方になって、全てを投げ出してしまうのがオチですから。


イヤイヤやっている子には、嫌な作業の中にも、小さな楽しみや進歩の喜びや面白いところがあることを、身近な大人が関わることで、気づかせてあげることが大切だ思っています。

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