8703の部屋

「ハナマルサンの部屋」です。音楽、スポーツ 世相 等々 気ままに綴ります

アメージング・ツリー

2012-01-22 09:16:24 | インポート
長田 弘 詩 信長貴富 作曲の「アメージング・ツリー」の原詩を紹介します。

「アメージング・ツリー」は2009年9月26日、8703の誕生日に開催された【音の絆Ⅱ~横山直樹と仲間たち~】において初演されました。8703の古稀を記念して信長さんが作曲してくれたものです。

アメージング・ツリー               長田 弘

おおきな樹があった。樹は、

雨の子どもだ。父は日光だった。

樹は、葉をつけ、花をつけ、実をつけた。

樹上には空が、樹下には静かな影があった。

樹は、話すことができた。話せるのは

沈黙のことばだ。そのことばは、

太い幹と、春秋でできていて、

無数の小枝と、星霜でできていた。

樹はどこへもゆかない。どんな時代も

そこにいる。そこに樹があれば、そこに

水があり、笑い声と、あたたかな闇がある。

突風が走ってきて、去っていった。

綿雲がちかづいてきて、去っていった。

夕日が樹に、矢のように突き刺さった。

鳥たちがかえってくると、夜が深くなった。

そして朝、一日が永遠のようにはじまるのだ。

象と水牛がやってきて、去っていった。

悲しい人たちがやってきて、去っていった。

この世で、人はほんの短い時間を、

土の上で過ごすだけにすぎない。

仕事して、愛して、眠って、

ひょいと、ある日、姿を消すのだ、

人はおおきな樹のなかに。

    出典 詩集『死者の贈り物』(みすず書房)

   ※曲では詩の一部を使用しています。また、作曲上変更した箇所があります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする