本来であれば４３年の長きにわたり指揮者として、献身的に指導を継続してきた横山義子が書き記すべき表題である。しかし、現状の彼女は文章を書いたりすることが難しいので、私が書くことにした。献身的という表現をしたが、４３年間そばにいて見続けてきた者として、決して表現が大げさとは感じていない。横山義子がコールアイリスに注いできた愛情は、まさしく献身的であったと思っている。その彼女が最後のステージとして決断したのが６０周年記念演奏会であった。しかし、昨年３月３日、「交響詩岩見沢」の抜粋演奏をすべくステージに上がった際に倒れ、即入院、そのまま約半年の入院生活を送ることになった。８月中旬に退院はしたが病が完治したのではなく、以後、通院、投薬を継続しつつ自宅療養をしている。脳出血という病なので、発症した時間帯とか場所によっては一命を落としかねないところ、たまたま会場に居合わせた岩見沢市長松野哲氏の迅速なる救急車の手配等々、多くの方々のおかげで重大な身体的後遺症もなく済み、不幸中の幸いと感謝している。
しかし、コールアイリスにとっては重大な局面を迎えることになった。松下耕氏に依頼していた委嘱新作のこともあり開催の取りやめなどは難しい状況下、代表から相談を受けた。その中で通常練習の代役を私がやることになり、昨年の6月からピンチヒッター横山の出番となった。その後、演奏会のステージ構成や指揮者の検討が始まり、当初から決まっていた客演指揮者横山琢哉の他にヴォイストレーナーの一鐡久美子さんが１ステージ、そして横山直樹が１～２ステージを担当することになった。私の１～２というのは、もし可能であれば正指揮者横山義子が１ステージ（最終）を指揮をする、という期待を残してのものであった。結局、最終ステージ「思い出の曲」の指揮は正指揮者がやることになり、正指揮者の他に客演指揮者３名という臨戦態勢（？）が決まったのである。
記念演奏会に向けて本格的な練習体制に入って１年余、一貫して感じたことは団員一人一人の熱意と練習に取り組む真摯な態度の見事さであった。当然ながらチームワークも素晴らしく、これならば、指揮者の病を乗り越えてよい演奏会を迎えられそうだという予感は充分であった。私が担当することになった、委嘱新作「自分のための子守歌」は全５曲。松下耕氏がコールアイリスの特徴をよく理解されて、工藤直子さんの素敵な詩を題材にして情感あふれる佳曲に仕上げていただきました。演奏を聴いてくださった方からは、「若い合唱団には表現できない温かさと味わいの深さに感動しました。」の言葉をもらいました。ただ、今回は地震の影響で、松下さんの事前レッスンを受けることが出来ず、私と団員とピアニストだけで仕上げた新曲の演奏となったことは、別な意味で意義深く感じている。
４ステージそれぞれに良い演奏ができたと感じているが、何といっても最終ステージ、横山義子の指揮で歌ったアイリスの演奏は圧巻であった。涙、涙で声が出なくなるのでは？は杞憂であった。最終ステージでありながら疲れも感じさせず、時には伸びやかに、時にはしっとりと歌い切った団員の力は見事であり、コールアイリスの歴史と底力を感じるものであった。そして、会場のあちこちから涙を拭う人の姿を垣間見ることが出来たことも印象に残っている。さて、ピンチヒッター横山の次なる出番（最後？）は１１月の「コロフェスタin釧路」である。歌う人数はやや少なくなるようだが「自分のための子守歌」の再演を務めることになっている。そして、混声合唱団「樹」の出番もあるのだ。がんばろう！！
