goo blog サービス終了のお知らせ 

竹原BLOG:奈良民話祭り ― グリム童話・メルヘン・語りの文化 とっておきの話。 

夏の奈良民話祭り:8月5日(金)午後3時より奈良町物語館で4回公演!
奈良燈花会に行きがてら、ぜひ来てくださいね!

春の七草 囃子言葉

2013年01月14日 | 日記
みなさん、お正月はいかがでしたか?

お餅とお雑煮の食べすぎで、「正月太り」の方はいらっしいませんか?
私は七草粥でお腹(なか)の調整をしました。
近くのスーパーで「春の七草」を買ったら、こんなチラシが入っていました。





■春の七草

芹(セリ)     セリ科
薺(ナズナ)    別名:ぺんぺん草 アブラナ科
御形(ゴギョウ)  キク科
繁縷(ハコベラ)  ナデシコ科
仏の座(ホトケノザ)キク科
菘(スズナ)    アブラナ科
蘿蔔(スズシロ)  (今の大根)アブラナ科


頭の体操のため、7草の名前を唱えてみました。

「せりなづな 御形はこべら 仏の座 すずなすずしろ これぞ七草」

平安時代には、このように詠んで、覚えたそうですよ。
それではもう一度

「せりなづな 御形はこべら 仏の座 すずなすずしろ これぞ七草」

もう、ちゅうで言えますか?


■七草囃子


正月の六日の夜から七日の早朝にかけて、まな板の上に七つの道具をそろえて七草を
49回(7×7)叩き刻みます。
このときに唱える言葉が囃子歌となって七草囃子として各地に伝えられています。

   七草ナズナ、
   唐土の鳥が日本の土地に渡らぬ先に、
   セリこらたたきのタラたたき

   七草ナズナ、
   唐土の鳥が日本の土地に渡らぬ先に、
   トントンバタリ トンバタリ


   七草なずな 
   唐土の鳥と 日本の鳥と  渡らぬ先に 
   七草なずな 
   手につみ入れて あみばし とろき ひつき ちりこ
   げにげにさりげなきようにて 物の大事は侍りけり


 という鳥追い歌が一般的です。

七草粥は現代風にいえば、「鳥インフルエンザ対策」です。

 「大陸から渡ってくる鳥の翼にはいろいろな害虫や病気があるので、
 日本に渡って来る前に七草かゆを食べて厄を落とし、元気で1年間を過ごそう」

というのが、この囃子の由来だそうです。


みなさま、この一年もお互い、元気に過ごしましょう!








私の年賀状:今年はへびのように脱皮をして飛躍の年に!!

2013年01月01日 | 日記
2013年1月1日

奈良県民のみなさま!

ナーミン(奈良の民話を語りつぐ会)のみなさま!
奈良教育大、奈良大、梅花女子大、ハイデルベルク大の愛する学生のみなさま!
「なら・語りの入門講座」受講生のみなさま!
比較民話研究会のみなさま!
グリミン(グリムと民間伝承研究会)のみなさま!
【科研:超域する異界】のみなさま!

そして、このブログを開いてくださったあなたへ!


明けまして、おめでとうございます。

皆さまのご健勝とご多幸をお祈りいたします。
本年も、よろしくお願い申し上げます。

93歳の母とともに新年を迎えることができました。


今年4月から梅花女子大学大学院客員教授として
ドイツ伝承児童文学を若い学生たちとともに勉強できることになりました。
頭がボケない限り、グリム童話、日欧の伝承文学の研究に励んで行きたく存じます。

また語りの面白さを奈良のみなさまとともに実感できるよう、
奈良民話祭り、講演会を実施していきたいと決意を新たにしています。


奈良の民話を語りつぐ会代表  竹原威滋


以下は私の年賀状です。



では、今年も語りの文化を話題に、ブログを毎週末に更新で
綴っていきますので、ご覧くださいね!


ホームページも年賀ヴァージョンに更新しました!
ご覧ください!


グリム童話刊行200年の今年を振り返る!

2012年12月29日 | 日記
今年もあと、2日を残すのみ。

私は、今年3月に、40年間勤めた奈良教育大学を辞して、
少しはゆっくりできると思っていたのですが、
グリム童話刊行200年の年にあたり、
とてもあわただしい日々を過ごしました。

9月には、久しぶりにドイツに旅し、カッセルでグリムの国際シンポジウムに参加し、
グリムゆかりの諸都市(ハーナウ、シュタイナウ、マールブルク、ゲッティンゲン)を
歩くことができたことできました。




このスナップ写真は、カッセルの南方、郊外にあるメルズンゲンのホテルに泊まった時、撮ったものです。
この町は、木組みの建物がずらりと並んだ中世の街並みを残している素敵な町でした。

10月には、東洋大学と武庫川女子大学で、カッセルのグリム兄弟博物館のラウアー館長とともに
日本でのグリム国際シンポジウムに参加できたことです。
東洋大学では、チューリヒ大学のツィンマーマン教授(マックス・リュティーの3代あとの後任教授)と
知り合いになれたことです。ご夫妻を奈良観光にエスコートし、
「ならまち民話地図ドイツ語版」で案内しましたよ。


あとは、奈良県と近隣府県で講演にお招きいただき、グリム童話や語りが大好きな皆さんと出会えたことです。

5月:京都府精華町図館講演、大阪府高槻市空飛ぶアヒル講座
6月:奈良教育大学後援会講演
7月:奈良県川柳大会講演
8月:奈良民話祭り、
9月:和歌山県紀伊田辺市カルチャーof キッズ講演
10月:奈良子どもの本連絡会 40周年記念講演会
11月:羽曳野市子ども文庫連絡会講演会、奈良県平群町あすのす平群講演
12月:県立図書情報館講演

それに秋10回シリーズの「語りの入門講座Ⅱ」(10月~12月)。

さて、来年はどうなるかな?


とにかく、頭がめぐり元気なうちは、是非、みなさまとにごいっしょに
グリム童話と語りの世界に遊びたい!


来年もよろしくお願いします。

★ドイツ・メルヘン街道を歩く★その6:グリム兄弟が教鞭をとったゲッティンゲン

2012年12月22日 | 日記
今日は久しぶりに★ドイツ・メルヘン街道を歩く★シリーズのその6です。

グリム兄弟が教授として教鞭をとったゲッティンゲンの街を紹介しましょう!

ドイツでは大学があるために発達した町があります。
フライブルク、チュービンゲン、ハイデルベルク、マールブルク、それにゲッティンゲン
いづれも大学町として有名です。日本でいえば、京都でしょうか。




ゲッティンゲンのメイン・ストリートです。
商店街が並んでいますが、学生の自転車も並んでいるところがさすが、大学町ですね。




同じ通りに、マクドナルドのお店もありますよ。
ドイツのマックは、日本のように赤と黄のけばけばしさがなく、落ち着いたお店でしょ。
お店は、町の風景になじんでいますよね。




これは、ゲッティンゲンの旧市庁舎です。




内部は、歴史的な風景や各地の紋章が描かれた壁絵が豪華でしょう。
昔はここで市議会が開かれていたのでしょうが、今は左手の窓の見える部屋は、ツーリスト・オフィスになっています。




旧市庁舎前の噴水には「ゲンゼ・リーゼル」(ガチョウ番のリーゼル)、
3羽のガチョウを連れた娘のブロンズ像が立っています。




学生が博士論文を書いて、合格すると、学友たちがこの噴水前で、なりたての博士を祝福し、
博士は、この「ガチョウ番の娘」とキスをすることが許されるそうです。
いかにも学生町らしいですね。
この娘は、世界で一番多くキスをされた女性と言われています。

グリム兄弟はゲッティンゲン大学でドイツ文学、言語学、民俗学を教えていたのです。




かつて住んでいた建物は今はありませんが、同じ番地には茶色の建物で、いまは散髪屋さんが入っているようです。




グリム兄弟が1829年から1837年まで住んでいたと銘板で表示されています。

私は、ゲッティンゲン大学の民俗学研究室とメルヒェン百科事典編纂所で研究滞在しましたが、
次回の★ドイツ・メルヘン街道を歩く★その7でお話しましょう!

今からドイツの友人にクリスマス・メールを打ちます。

今日はこれでおしまい!



    。☆   。   。   。    。  。     
   。 ▲     。   。   。   。   。   
     ▲▲    クリスマスおめでとう!  。   。  。
   。▲▲▲ 。   。   。   。   。   。    
   。  ■    。   。   。   。   。   。  
     。   。   。   。  

すべてを照らす まことの光があって、世に来た。  ― ヨハネ伝 ー


Frohe Weihnachten und ein glueckliches Neues Jahr 2013!



2012. 12. 23.     竹原威滋









NHKカルチャーラジオ:高橋義人:グリム童話の深層をよむ。とても面白い番組だ!

2012年12月16日 | 日記
今、ラジオが面白い!
ラジオ深夜便は、中高年の人々の人気番組。

先日、教養講座「グリム童話と奈良の民話」の受講生から、

「NHKカルチャーラジオ 文学の世界

グリム童話の深層をよむ~ドイツ・メルヘンへの誘いを見て、刺激を得て

この講座にも出ることにしたのです。」

と聞いて、早速、講座のテキストを買って読んでみた。(950円・160頁・図絵が満載!)




講師は、高橋 義人(京都大学名誉教授・平安女学院大学教授)さんです。

専門は、ドイツ文学で、特にゲーテの文学に造詣が深い。

幅広い教養の持ち主で、グリム童話についても楽しく語っておられる。

私はグリム童話を近代の思想、特にカルヴァン派のフィルターの掛かったものとして

著書「グリム童話と近代メルヘンで論じているが、

高橋さんは、グリム童話には、キリスト教以前の文化、ゲルマン神話、古代文化が見て取れると説いておられる。


グリム童話は、伝承文学であり、古代から、また近代からも読み解ける人類の奥深い古典なのだ。

講座の放送内容を見てみよう!

   放送日(木曜20:30~21:00 ラジオ第2)
   
第1回 10/ 4 メルヘンとは何か-グリムとアンデルセン
第2回 10/11 グリム兄弟とは
第3回 10/18 「ヘンゼルとグレーテル」-メルヘンの表と裏
第4回 10/25 「いばら姫」-メルヘンと神話
第5回 11/ 1 [ホレおばさん」-古代ゲルマンの地母神
第6回 11/ 8 「白雪姫」-人の心を真にひきつける美しさとは
第7回 11/15 「ラプンツェル」-その長い髪のもつ魔力
第8回 11/22 「シンデレラ」(1)-危機において助けてくれるのは誰か
第9回 11/29 「シンデレラ」(2)-「千枚皮」と動植物への変身
第10回 12/ 6 「シンデレラ」(3)-サンタクロース祭と農耕儀礼
第11回 12/13 「赤ずきん」-狼とはいったい何者か
第12回 12/20 「蛙の王さま」-グリム版の「美女と野獣」
第13回 12/27 「鶴の恩返し」と「六羽の白鳥」-動物は「聖なる神」

残念ながら、あと2回の放送しか聞けない。

でも、テキストを読むだけでも、とても面白いよ!

次回の語り手講座でも紹介しましょう!

今日は、ラジオ番組の紹介でした。

冬もいよいよ本格的な寒さに! 風邪を引かないようにね! 

ノロ・ウイルスにも注意! うがいと手洗いを励行しよう!

あべのハルカス → 新うめだシティー:ドイツ・クリスマス市を体験!

2012年12月08日 | 日記
師走に入り、だんだん寒くなってきましたね。

日も早く暮れるようになり、
なんとなくさみしい気持ちになります。
百人一首のこんな歌を思わず、口ずさんでいました:

さびしさに宿をたち出でて眺むればいづくも同じ秋の夕暮  良暹(りょうぜん)

でも、先週の夕暮れ、老母を見舞いに施設を訪ね、屋上に登ったところ、




このように月が出ていました。

月下にみえる高層ビルは「あべのハルカス」です。
高さは300メートルを超え、超高層ビルでは横浜のランドマークタワー(296.33メートル)を抜いて
日本一の高さになったそうです。
竣工予定は2014年。地上60階の堂々たる威容は、まさに「平成の通天閣」だとか。

ハルカスとは「心を晴れ晴れとさせる」と言う意味の古語「晴るかす」から来ている造語だそうです。


この光景を見て、少しは「さみしさ」を紛らすことができました。


ドイツでは、こんな物悲しい季節に「クリスマス市」があるのです。


大阪には、ドイツのクリスマス市が再現されているのをご存知ですか?

新梅田シティー、空中庭園のあるビル前の広場です。

まず次のサイトをご覧ください:
ドイツクリスマスマーケット大阪2012

大きなクリスマス・ツリーもありますし、
ドイツのクリスマスの定番の「グリューワイン(ホットワイン)」も飲めるし、
「レープ・クーヘン」も食べれますよ。


ドイツではクリスマスの主役はサンタクロースではなく「ニコラウス」です。

12月6日にニコラウスが一年間良いことをした子どもだけにプレゼントをして、
そうでなかった子どもにはお仕置きをするので、
この日がニコラウスターク(ニコラウスの日)と呼ばれています。

ドイツ・クリスマスマーケット大阪では毎週末にこのニコラウスが会場に登場するそうですよ。
長いひげを生やしてビショップ(司教)の帽子をかぶり、長いマントと杖を持ったニコラウスが
会場内を歩くだけでも子どもたちは大喜び。
そしてニコラウスはプレゼントを渡したり、子どもたちと写真を撮ったりしてくれます。

日本でなじみのあるサンタクロースとはひと味違う、
ニコラウスとふれあうことでドイツのクリスマスがより一層身近なものになるでしょう。

あなたも、是非、週末に、恋人と、お子さんと、お孫さんと
梅田で、ドイツのクリスマスを体験してくださいね!!

2012年11月16日(金)~12月25日(火)、
平日は夜9時まで、金・土・日は午後10時までです。

詳しくはここをクリック!

ドイツクリスマスマーケット大阪2012

では、みなさま、お風邪をひかれませんように!


講演「グリム童話と奈良の民話」12月8日・22日・奈良県立図書情報館/奈良の秋・紅葉する木々!

2012年12月01日 | 日記
木々の紅葉、今年の秋は特に美しく感じますね!

しばし、奈良の秋、私の撮影した写真をお目にかけましょう!



奈良県庁の屋上より、大仏殿を望む




奈良県庁の西側の紅葉する木々




奈良教育大学校舎前にて。すごくきれいな紅葉!




我が家の応接間の窓から見える見事な薔薇、




私が手塩にかけて育てている四季咲きの薔薇、晩秋にも美しく咲いてくれました!


今日から師走ですね。

今年最後の講演、よろしかったら、是非聴きに来てください。

グリム童話の初版が出たのは、今から200年前の1812年12月20日です。
それを記念する講演です。

佐保川 まちづくり塾 教養講座C
「グリム童話と奈良の民話」 講師:竹原 威滋

  奈良県立図書情報館1F交流ホール 
   定員:100名(先着順)・無料

①12/8(土)13:30 ~ 15:00 
     ドイツ・メルヘン街道とグリム童話
②12/8(土) 15:10 ~ 16:40  
     グリム童話:いばら姫をめぐって

③12/22(土) 13:30 ~ 15:00
     ならまち・柳生・吉野の民話

詳しくは、下記のサイトをご覧ください。
教養講座C

今日のブログは、
奈良の素敵な紅葉写真と 
今年最後の講演の案内 でした。

これから、本格的な冬を迎えます。
みなさま、お風邪を召されませんように!



★ドイツ・メルヘン街道を歩く★その5:グリム兄弟が学生時代を過ごしたマールブルク

2012年11月24日 | 日記
グリム兄弟が学生時代を過ごしたマールブルクを訪ねます。




ドイツ鉄道・DBのマールブルク駅からすぐ近くにあるエリザベート教会です。
聖エリザベートは、この町の守護聖人です。




9月中旬、観光客が憩う市役所前広場です。




市役所の裏側、少し行くと、マールブルク大学の昔の建物があります。
グリム兄弟はここで大学生活を送りました。
この建物に今も大学の改革派教会があります。




その壁には、グリム童話「星の銀貨」の絵が掲げられています。




市役所の前から北西方向の通りにグリム兄弟が学生時代に下宿していた家があります。




「グリム兄弟の家」 1802年から3年間住んだところです。
経済的に苦しかったグリム兄弟は、この建物の2階の、右手の路地(坂道)に面した小さな部屋を借りて住んだのです。




お城に通じるその坂道を登って、らせん階段を登ると、階段の出口に来ます。




そこからはマールブルクの町並みが見えます。
左手に見えるルター派プファール教会の前をさらに登っていくと、




グリム兄弟の大学の先生、サヴィニー教授の家に着きます。
グリム兄弟はこの先生に法律学・文学・民俗学を学びました。




グリム兄弟はサヴィニー先生に見込まれ、先生の家によく出入りし、
多くの本も借りて、貪るように読みました。

グリム兄弟は、下宿から、山の中腹にある先生の家まで、よくもまあ、
先生に会いたい一心で、坂道、らせん階段を何度、息を切らして歩いたことでしょう!
私も往時をしのびながら、一生懸命、登りました。

グリム兄弟は先生の家で、『少年の魔法の笛』の編者
ブレンターノ、アルニムとも知り合いになりました。
その出会いをきっかけにグリム兄弟は、やがてメルヒェンを蒐集することになったのす。




さらに山腹を登ると、ヘッセン方伯のお城に着きます。
シンデレラもこんなお城の舞踏会で王子さまに会ったのでしょうか!!




お城の近くのお家には、7人の小びともいましたよ!!




お城の裏手には、「魔女の塔」もありましたよ!!


マールブルクの町はいたるところでグリム童話の世界に浸ることができます。

グリムによる観光・町おこし、さすがドイツならでは ですね。

次回は
★ドイツ・メルヘン街道を歩く★その6:グリム兄弟が教授として過ごしたゲッティンゲン です。

お楽しみに!











★ドイツ・メルヘン街道を歩く★その4:グリム童話の語り手フィーマンおばさんを訪ねて!

2012年11月17日 | 日記
しばらく途絶えていた★ドイツ・メルヘン街道を歩く★を再開します。
今日は★その4:グリム童話の語り手フィーマンおばさんを訪ねて!です。

★ドイツ・メルヘン街道を歩く★その3:グリム兄弟がメルヘンを集めた町カッセル
をまだご覧でない方は、まず、ここをクリックして見てください!




カッセルのグリム兄弟博物館にはご覧のように、
グリム兄弟がいつも所持していたグリム童話の初版と第2版が展示されています。
下段の2冊が初版です。上段の3冊が第2版です。
いづれもユネスコの「世界記録遺産」に登録されています。
第2版は1819年に出版されました。その第2巻は上記写真の上段右手の本です。




この写真は、拡大写真です。左ページを飾る口絵は、グリム童話の語り手ドロテア・フィーマン夫人です。
グリム兄弟の弟で画家のルートヴィヒ・エミール・グリムが描いたエッチィングです。

カッセル近郊の村に住む無名のおばさんを本の巻頭に載せるというのは
当時としては前例のないことでした。
グリム兄弟は名もない語り手を大切にしたのです。


フィーマン夫人はグリム童話第2巻の75話のうち、なんと14話にお話を提供しています。
おもなものを挙げると、

ガチョウ番の娘、かしこい百姓娘、もの知り博士、鉄のストーブ、悪魔のすすだらけの兄弟、
かわいそうな粉屋の小僧と子猫、悪魔とそのおばあさん。

フィーマン夫人はカッセルの近郊の村ニーダーツヴェールン村に仕立て屋の妻として住んでいて、
野菜等を町に売りに行き、その帰りにグリム兄弟の家に寄って、お話を語っていたそうです。

その村を訪ねました。




村の入り口の風景です。
なんやら大きな本が3冊、道に横たわっていますね。




実はこれはグリム童話第2版3巻本の大型レプリカなんです。
さすが「メルヘンおばさん」の村ですね。




少し歩いていくと、左手にフィーマンの家が見えててきます。




これが「メルヘンおばさん」の家です。




ここに1787年から98年までグリム兄弟の「メルヘンおばさん」
ドロテア・フィーマン(旧姓、ピアソン 1815年没)が住んだ
と表示された銘板が掲げられています。




また、フィーマン夫人の胸像も掲げられています。




フィーマン夫人も通っていた、この村の教会(カルヴァン派)です。




その教会のそばの「村の共同墓地」にはフィーマン夫人の墓碑も立っています。
そこで記念写真を撮りました。




フィーマン夫人は、この村からさらに車で15分ほどはなれたレンガースハウゼン村で
ビール醸造所の娘として生まれた。
この道はニーダーツヴェールン村からレンガースハウゼン村に通じる道です。




レンガースハウゼン村にあるビール醸造所の建物です。その壁に次の銘板が掲げてあります。




グリム兄弟に最も多くのすばらしいメルヒェンを提供した
カタリーナ・ドロテア・フィーマン(旧姓ピアソン)は
1755年このクナル・ヒュッテ(居酒屋)で生まれた。
子どもの頃、ドロテアは父親の居酒屋で多くのお話や伝説を
お店に来た客たち(商人、職人、運送人など)から聴いて、
のちにグリム兄弟にさらに語り伝えたわけである。




現在の醸造所・ビール工場の様子。




北ヘッセン地方のぜいたく
北ヘッセンのビール「ヒュッテ」




ビール工場の隣にビア・ホール(居酒屋)があります。
私が訪ねた時は、ちょうど結婚式の披露宴で賑わっていました。




その前の中庭には泉があり、その中央には人魚姿のフィーマン像がありました。




このビア・ホールでは、現在も毎土曜日夕方17時30分から「フィーメニン」と一緒に
お話し会(メルヘンの時間)が行われているそうです。

少し長いブログになりましたが、
「グリム兄弟のメルヘンおばさん」が今もこのように
村の人たちに愛されていることがおわかりいただけたでしょうか。

次回は
★ドイツ・メルヘン街道を歩く★その5:グリム兄弟が学生時代を過ごしたマールブルクです。

お楽しみに!



11月のグリム童話講演:17日(土)LIC羽曳野/20日(火)平群町中央公民館

2012年11月11日 | 日記
私の11月の講演会は下記の通り開催されます。
よろしかったら、お出でください。


■グリムまつり: グリム童話の世界へようこそ! 

講師  竹原威滋(奈良教育大学名誉教授)
 日時 11月17日(土)午後1時30分~3時30分
 場所 LICはびきの 2F 大会議室
 定員 小学生以上 50名 無料です
 主催 羽曳野市子ども文庫連絡会 
 後援 羽曳野市教育委員会
   子どもゆめ基金助成活動
 問い合わせ 菅谷純子 TEL 072-958-5470

グリム童話初版出版から200年にちなんで、ドイツ・メルヘン街道を辿りながら、
グリム兄弟の人生とグリム童話の成立過程を紹介し、伝承メルヘンの魅力に迫ります。
「お話の森」の上野さんに「蛙の王さま」を語っていただき、
さらにグリム童話「蛙の王さま」の各版を比較しながら、
グリム兄弟がどのようにして「聴くメルヘン」 から「読むメルヘン」へ仕立て上げ、
今日世界の子どもたちに親しまれるに至ったかを お話しましょう。
それではお話のはじまり、はじまり。

詳しくは 羽曳野講演会をご覧ください。


■「昔話とメディア」 ― グリム童話「いばら姫」をめぐって ―

講師 竹原威滋(奈良教育大学名誉教授)
語り 村上郁(京田辺市立中央図書館おはなしサークル“がらがらどん”主宰)
 日時 平成24年11月20日(火) 午前10時~12時
 会場 平群町中央公民館大ホール
 主催 平群町子ども読書活動推進ネットワーク
 参加費:無料
 申込み:不要
 そのほか:託児あり(要申込500円、申込み締切11月12日)
 問合せ先:あすのす平群(平群町立図書館)TEL 0745-46-1120

ネット社会に生きる子どもたちにとって、音声による伝承文化にふれあい、
文字による読書に親しむことがとても大切です。
講座では、グリム童話出版から200年にちなんで、
グリムの「いばら姫」を取り上げ、語りを聴いて、
絵本を一緒に読んで、さらにアニメを見て、三つのメディアの体験を通して
語りの魅力に迫ります。
地元 平群の民話 役行者の伝説「鬼取山の話」も語ります。
それではお話のはじまり、はじまり。

詳しくは 平群講演会をご覧ください。


ナーミンお話会、毎週水曜日に奈良市北部図書館で開催!

2012年11月08日 | 日記
ナーミン(奈良の民話を語りつぐ会)のお話会は
奈良教育大学絵本の広場では第2水曜日の午前10時より開催していますが、

今回新たに毎週水曜日午後3時半より奈良市北部図書館で開くことになりました。



近鉄「高の原駅」を降りて、改札を出て、右手に行き、陸橋を渡って左手に行くと、
「奈良市北部会館」の建物が見えます。
昨日、11月7日に初回のお話会がありました。
建物前の木も紅葉し、秋の風情を感じました。
この建物の4階に「奈良市北部図書館」があります。



これが、今回のお話会のプログラムです。



奈良の民話「爺にすいつこう」を語るナーミンテラー
そのあと、グリム童話「赤ずきんちゃん」が語られ、
ゲーム遊びもしました。



最後に絵本「いたずら 子ねこ」を図書館のスタッフに読み聞かせしていただきました。


お母さんに連れられた子どもたち、おばあさんたちも楽しく聴いてくださり、
私もおとぎ話の世界に、しばし吸い込まれました。

奈良の子どもたち、
毎週水曜午後は、お母さんたちと一緒にきてね!!

武庫川女子大でのグリム・シンポ盛会のうちに終了! ご参加ありがとう!

2012年11月01日 | 日記
今年はグリム童話が出版されてから、200年の記念すべき年
日本においても、ドイツからカッセルのグリム兄弟博物館からラウアー館長を迎えて
東京と関西でグリム・シンポジウムが開催されました。

■東京会場は、東洋大学創立125周年記念行事として大野寿子准教授のイニシアティブのもと
 「グリム童話200年のあゆみ-日本とドイツの架け橋として」と題して盛大に開催された。
 そのことに関しては前回のブロブで報告しましたので、ご覧ください。

■関西会場は、武庫川女子大学の野口芳子教授の科研究費給付による研究の成果のひとつとして
  「グリム童話刊行200年記念シンポ≪グリム童話とジェンダー ―文字・図像・音楽にみる家族像―≫」
 と題して日本独文学会の会員や多くの学生、グリム童話愛好家も集い、開催された。
 

<基 調 講 演>ベルンハルト・ラウアー(グリム兄弟博物館館長) 独日通訳:大野寿子
     文字から図像へ―19-20世紀における『子供と家庭のメルヒェン集』 挿絵史




講演中のラウアー博士


ラウアー氏は、ユネスコの世界記録遺産に登録されているグリム兄弟が所持していたグリム童話
初版・2版の紹介から、グリム兄弟の弟で画家のエミール・グリムの挿絵、そして
ロマン派、ユーゲント・シュティールから現代にいたるグリム童話の挿絵の歴史を
スライドを交えてわかりやすく講演された。




20世紀のメルヒェン「白雪姫」

オペラや映画としてもグリム童話は親しまれている。





メルヒェンの受容:文化的相違

日本の「狼と7匹の子ヤギ」、アフリカの「ブレーメンの音楽隊」
そしてアメリカ・ニューヨークの闇の街の「白雪姫」
時代は変わっても、世界のどこでも親しまれるグリム童話!!



<シ ン ポ ジ ウ ム>グリム童話とジェンダー ―文字・図像・音楽にみる家族像―
① 溝井裕一(関西大学准教授): 「解雇された兵隊」と近世の家父長制
② 金城ハウプトマン朱美(ドイツ語圏口承文芸研究者): 「ヘンゼルとグレーテル」から見る家族像の変遷
③ 山本まり子(聖徳大学教授): オペラにおける「ヘンゼルとグレーテル」 ―ジェンダーの視点から―
④ 竹原威滋(奈良教育大学名誉教授): グリム童話とヨーロッパ民間伝承にみる「白雪姫」のジェンダー観
⑤ 野口芳子(武庫川女子大学教授): グリム童話「白雪姫」に見られる家族像




左から順に、溝井、金城ハウプトマン、山本、竹原、野口の各発表者


シンポジウムの内容については、神戸新聞の10月29日の朝刊の記事を引用しておきます。―



 グリム童話刊行200年を記念したシンポジウムが28日、西宮市池開町の武庫川女子大学で開かれた。
「グリム童話とジェンダー 文字・図像・音楽にみる家族像」をテーマに、研究者たちがさまざまな作品を
取り上げながら発表。学生ら約150人が耳を傾けた。

 グリム童話(正式名称『子どもと家庭のためのメルヒェン集』)は200年前にドイツでグリム兄弟が編さん。
170以上の言語に訳されて世界中で親しまれている。
 シンポジウムでは、関西大学の溝井裕一准教授ら5人の研究家が登壇した。

 グリム童話のいくつかの物語に登場する「兵隊を解雇された男」を、溝井准教授は
「父権制社会において家長たりえなかった男性」と位置付け、当時の時代背景に重ねた。

 ドイツ語圏口承文芸研究者の金城ハウプトマン朱美さんは、「ヘンゼルとグレーテル」が
初版から改訂する中で、登場人物の母親を「悪い継母」に変えたことが、
読者の子どもたちに継母は冷酷だという印象をすり込んでいると指摘した。

 聖徳大学の山本まり子教授は、欧米で上演されるオペラ版の「ヘンゼルとグレーテル」では、
魔女役を男性テノール歌手が演じることが多いことを紹介し、公演映像も流した。

 奈良教育大学の竹原威滋名誉教授と武庫川女子大学の野口芳子教授は、白雪姫を題材に、
結婚観や女らしさ、美しさについて語った。

 武庫川女子大学1年生(19)は「小さいときから好きな白雪姫も、
自分で常識だと思っていたことが覆されたのが面白い。知らない話が多くて新鮮だった」
と話していた。(記者:金山成美)(2012/10/29 09:20)


ブログをお読みいただいている方々のなかにも
遠路はるばる来ていただいた方もいらっしゃいます。
どうもありがとうございました。

これからもグリム童話が未来に向けて、さらに多くの人々に愛されるよう
私も研究に励み、その成果をみなさまに発信していきます。

長いブログになりましたが、これに懲りず、毎週1度は更新しますので、見てくださいね。

ホームページも更新しました。

東洋大の基調講演「グリム童話の挿絵の歴史」聴いてきました!次の日曜28日武庫川女子大でも聴けますよ!

2012年10月23日 | 日記
『グリム童話』刊行200年記念国際シンポジウム
「グリム童話200年のあゆみ―日本とドイツの架け橋として―」が
先週土曜日10月20日午後、東洋大学にて開催されました。
500名を超える参加者があり、盛会のうちに終了しました。


<基調講演 1 〉 マールブルク?「だがこの町自体はひどく醜い」
―グリム兄弟と故郷ヘッセンとの相反的関わり―
ハルム=ペア・ツィンマーマン(チューリヒ大学教授)

<基調講演 2 〉文字から図像へ
―19~20世紀における『子どもと家庭のためのメルヒェン集』挿絵の歴史―
ベルンハルト・ラウアー(グリム兄弟博物館館長)

<シンポジウム>『グリム童話』研究がつなぐ過去と未来
  パネラー:溝井裕一、野口芳子、竹原威滋
  司会:大野寿子、田中雅敏

詳しい報告が東洋大学の下記のサイトに載っていますので、ご覧ください:

東洋大学『グリム童話』刊行200年記念国際シンポジウム



ラウアー館長の講演「グリム童話の挿絵の歴史」の映像の一コマです。

ラウアー氏の講演は次の日曜日10月28日武庫川女子大のグリムシンポジウムでも聴けますので、
関西方面の方は 是非来てくださいね。下記のサイトをご覧ください。
武庫川女子大・グリムシンポジウム「グリム童話とジェンダー」


シンポジウムの大役を果たし、ほっとして、東京でもう一泊して
六本木の国立新美術館で美術展「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」を見てきました。



展覧会のポスターです。
右の女の子の絵は画家ルーベンスが描いた5歳の愛娘の肖像画です。
さすが巨匠ルーベンスの絵だけあって、かわいい娘の表情をバッチリ捉えていますね。


国立新美術館は、黒川紀章の設計による斬新なガラス張りの建物です。

帰りの新幹線から夕闇せまる富士山を見ることができました。



緊張と安らぎの東京滞在の3日間でした。


★ドイツ・メルヘン街道を歩く★その3:グリム兄弟がメルヘンを集めた町カッセル

2012年10月15日 | 日記
今回は ★ドイツ・メルヘン街道を歩く★その3

グリム兄弟が中等学校時代を過ごした町カッセルです。
また、グリム兄弟がマールブルク大学を卒業してからメルヘンを集めだしたのもこの町です。

前回同様、写真で綴りましょう!



ヴィルヘルムスヘーエ公園の丘の上から展望したカッセルの町

楽しい少年時代をシュタイナウで過ごしたあと、
グリム兄弟は1798年に母の姉を頼って、カッセルに来て、
リュツェーウム(中等学校)に入学します。

二人はよく勉強ができたので、ヘッセン選帝侯の奨学金を得て
マールブルク大学で勉強します。
その後、再び、母の住むカッセルにもどり、
友人、知人からメルヘンを聴き、集めます。

カッセルは、グリム童話の誕生の地なのです。



グリム兄弟広場にある兄弟像です。ハーナウの像より小さいですが、
仲の良い兄弟の雰囲気が感じられますね。



兄弟像のすぐ近くにグリム兄弟が1814年から1822年まで住んだ建物です。
この3階を借りて住んだそうです。



これが「グリム兄弟博物館」になっているベレヴュ宮殿です。



グリム兄弟の特別展の看板のある入口です。



これは兄弟が所持していたグリム童話です。
そこには兄弟の手書きで貴重な書き込みメモがあります。

下段の2冊は初版の第1巻(1812年刊)と第2巻(1815年刊)で、ユネスコの世界記録遺産になっています。
上段の3冊は第2版です。両端のが第1巻と第2巻(1819年刊)です。真ん中のは注釈編(1822年刊)です。



グリム兄弟博物館には、世界中のグリム童話の翻訳本が展示されています。
池田香代子訳の日本語版も見えていますね。



これは、 楊武能訳の中国語版です。グリムは中国語で「格林」と書くのですね。



博物館の売店にはグリム童話に関するグッズが売られていました。



グリム兄弟博物館で9月中旬に開催された「グリム・国際シンポジウム」に参加しました。
ドイツ、日本、中国の研究者による発表・討論を通じ、最近のグリム研究の動向を知ることができ、有意義な集会でした。

主なテーマは、グリム童話における数「7」、中国のおけるグリム童話の受容、
ユーゲント・シュティールとグリム童話の挿絵画家オットー・ウッベローデ、DDRにおけるグリム童話、
映画における「白雪姫」、インターネットにおけるグリム童話、グリム兄弟とロマン派、
トーマス・マンとグリム兄弟などでした。



私も飛び入りで「ならまち民話地図」のドイツ語版、中国語版などの制作について紹介し、
民話の次世代へ伝えることの意義について話しました。



シンポジウムの休憩時間、中庭での語らいのひとときです。



研究集会のあと、ヴィルヘルムスヘーエ公園の丘の上に登り、ヘラクレス像を仰ぎ見ました。



丘からみたカッセルの町です。

中腹に「レーヴェンブルク城」が小さく見えていますね。
とてもメルヘンチックなお城ですよ。



そして最後に丘の展望レストランで、ヘッセンの郷土料理
おいしいソーセージとビールで乾杯!

楽しい2日間でした。

次回は、★ドイツ・メルヘン街道を歩く★その4:グリム童話の語り手フィーマンおばさんを訪ねて! です。

お楽しみに!

ナーミン会員が奈良新聞に「絵本のまど」を連載中! / ブログ版:番外編「七わのからす」ホフマン絵

2012年10月06日 | 日記
ナーミン(奈良の民話を語り継ぐ会)会員がリレーで
奈良新聞の人気コラム「絵本のまど」を今年末まで担当しております。

今までに次のような記事が載りました。

1) 8月6日---- 粟田妙子-----ごろはちだいみょうじん(福音館書店)
2) 8月13日--- 安岡理加---- ちんころりん(福音館書店)
3) 9月3日---- 藤井幸子---- おなかのすくさんぽ(福音館書店)
4) 9月24日--- 村上郁-------てとてとてとて(福音館書店)
5)10月1日----稲実美恵---- おつきさま(フレーベル館)

それぞれ、子どもたちの目線で絵本との出会いが
印象深く語られています。

今後も以下の日程で掲載されますので、是非 奈良新聞をご覧くださいね。
10月8日、10月22日、10月29日、11月5日、11月26日、12月3日、12月24日、12月31日

ところで、私も大みそかの日にスイスのカリジェの絵本を紹介するつもりです。
スイスの絵本はほかにも素敵な作家がいて、とても好きです。

そこで、新聞紙上でなく、このブログで番外編を特別掲載します。

七わのからす―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ)
フェリックス・ホフマン絵、瀬田貞二訳、福音館書店





 私がかつてスイスに留学中、恩師のマックス・リューティご夫妻を我が家の夕食にご招待したとき、
五歳の息子に贈ってくださったのがこの絵本のドイツ語原本だったので、とても思い出深い本です。

 父親の呪いの言葉で七人の男の子がカラスに変えられる! 
あまりに真に迫る表現にカラスのバタバタという不気味な羽音が聞こえてくるようです。
女の子は兄を捜しに住み慣れた村を離れ、森を通り抜け、世界の果てまで歩いてたどり着きます。

旅の不安と兄との出会いの喜びが実にうまく感情表現されています。

松岡享子さんは『昔話絵本を考える』でこの絵本を取り上げています。
子どもは昔話を聞きながら、想像の世界をはばたき、お話の世界をイメージします。

この絵本はスイスの子どもたちが頭に描くグリムの世界です。
なぜなら、この絵本に登場する夕どきの一家団欒、壺の落ちた泉、お城と教会のある村などは、
ごくありふれたスイスの片田舎で見られる風景そのものなのですから。

(奈良の民話を語りつぐ会・竹原威滋)