えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

<遊び心のプログラム>ゲームを読む:『Nights』 1998年 セガ セガサターン

2014年12月27日 | コラム
・浮遊の遊び

3Dポリゴンを利用した奥行きのある表現を可能にした機械は、銃そのままのコントローラで操作するFPSや立体的なキャラクターを操作するRPGなど、より疑似的な体験をプレイヤーに与える。『Nights』はそんな出来そうでまだできないこと、ふわりと舞いあがり両手を広げてピーターパンのように飛び回る感覚を与えてくれるゲームだ。

『ソニック』シリーズを開発した『ソニックチーム』手がける本ゲームは擬似的に「空を飛ぶ」体験を中核にした3Dアクションゲームである。ステージの開始時は空を飛べない男の子か女の子を操作し、主人公のナイツが待つ場所へ向かうことが目的となる。ナイツの居場所に行かなくてもステージを探索することは可能だが、空を飛ぶことができないため行動範囲は限られる上に目覚まし時計型の追手がおまけについてくる。追手は男の子と女の子に触れることでゲームオーバーにすることができるため、プレイヤーにとっては憎き敵でありつつ、速やかにナイツと接触することが必要だと彼らに教える役割を持っている。そのためナイツの待つ場所は開始地点から近い位置に設置されており、よほどひねくれた遊び方をしない限りナイツの元にたどり着くことは容易だ。回数を重ねればプレイヤーは早々にナイツと交代するよう二人を操作するようになる。

ナイツと交代すればやっと空を飛ぶことができる。プレイヤーは空を飛んで一定のコースを巡回して特定のアイテムを集めて次のコースへ移動する。ステージに設定された全四本のコースでアイテムを集めてボスを倒せばステージクリアとなる。ナイツに追っ手はないが代わりに制限時間が設けられており、制限時間を過ぎると強制的に男の子・女の子へ交代してしまう。その代りにゴールへ到着しなければ同じコースを何度でも回ることができるため、立ち止まって触れると作動する仕掛けを探したり、道化師のようなポーズをナイツに取らせてスコアを増やしたりと行動の幅は広い。

ナイツには「歩く」動作が無く、地面に降りても浮いたまま立ち止まってしまうのでプレイヤーは常に「飛ぶ」感覚を以てナイツを操作する。現在とは違ってZ軸の移動は制限されており、一つのコースを飛んでいる最中は他のコースへ移動することができず、本当の意味で自由に飛び回ることこそできないが、地上の男の子・女の子の視点から彼らを見下ろす視点の移動と、動作にわざと緩やかな抵抗を入れることによって「空を飛ぶ」という行為をセガサターンの可能な機能へ落とし込んだ表現はコントローラと画面を通しても感覚へ直接「空を飛ぶ」ことを教える力がある。
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