2011年にカナダのD-Wave Systemsという新興企業が世界初の市販量子コンピュータ「D-Wave」を発売して以来、D-Waveは量子コンピュータと言えるのかどうか賛否両論があったそうだが、昨年5月にGoogleとNASAが共同で設立した「量子人工知能研究所(QuAIL)」が第2世代の「D-Wave2」を購入し、注目を集めたそうだ。一方、スイスチューリヒ工科大学の理論物理学者が「D-Wave2」の性能試験を実施した結果、性能は従来型コンピュータ(Microsoft研究所から提供を受けたクラスタコンピュータ)と比べて大差ないことが判明したという。●D-Wave2は東工大理学部長の西森教授が世界で初めて提唱した「量子アニーリング」という理論に基づいており、従来型の「量子ゲート」方式の量子コンピュータとは全く異なるという。D-Wave2は超伝導回路を用いて特殊な磁性体である「スピングラス」を模した実験装置であり、この装置で量子アニーリング現象を発生させることで「組み合わせ最適化問題」が解けることになるそうだ。「組み合わせ最適化問題」はスケジュール最適化、人工知能、医薬品開発など様々な分野で登場するが、問題の規模が大きくなるとスパコンでも厳密解を現実的な時間で求めることはできないため、D-Waveマシンで厳密解が求められるようになればインパクトは大きいという。●量子アニーリングに関する研究は殆ど進んでいない状況から、今後、実験を重ねてマシンのチューニングを行っていけば、演算能力を飛躍的に高めることは可能との見解もあるそうだ。D-Wave Systemsの上級副社長は数年以内に従来型コンピュータを圧倒する性能を実現することは十分可能と話しているそうだ。 ⇒ http://gigazine.net/news/20140623-d-wave-first-quantum-computer/、http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20140801/368476/、http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20140801/368477/
D-Waveマシンは量子力学を応用して、組み合わせ最適化問題を解く専用マシンと言えるようだ。日本の国立情報学研究所(NII)はD-Waveを上回る可能性がある日本独自の新型量子コンピュータの開発を進めているそうだ。半導体の微細化による性能向上も限界に近づきつつあることから、今後、量子コンピュータなど新方式のコンピュータへの期待は益々高まることであろう。