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ヒッグス粒子発見の本当の意義が分かる本

2013-04-30 | つぶやき

「強い力と弱い力」(大栗博司著、幻冬舎新書)という本を読んだ。昨年7月4日のCERNによるヒッグス粒子とみられる新粒子発見のニュースはセンセーショナルであったが、マスコミによる解説記事を読んでも、それがどのようなものか今一イメージできず、モヤモヤしていたが、この本を読んで霧が晴れた。この本は素粒子理論における「強い力」と「弱い力」の解説に焦点をあてて、「標準模型」の全体像を一般向けに解説した本であり、ヒッグス場/粒子は「弱い力」の解説の中で登場する。ヒッグス場は「弱い力」の謎を解くために導入されたものだからだ。執筆の動機は「マスコミのヒッグス粒子の解説記事が物理学者が知っているヒッグス粒子とは全く異なるものであり、もっときちんとした説明をしたかった」そうであり、「やさしくても本格的な説明を目指したい」と書いているように、新書版ではあるが、読みごたえのある、内容の濃い本になっていると思う。●マスコミの解説では空間にはヒッグス粒子が充満しており、その中を『物質』が進もうとすると邪魔されて速度が遅くなり、それが質量が生じたことになるというような説明が多かったように思うが、これは的外れの説明であり、『素粒子』に質量を与えるのはヒッグス場の作用(ヒッグス粒子が伝える)であり、質量が生じたため速度が遅くなるのだ。ヒッグス場の対称性の自発的な破れにより、「弱い力」を媒介するWボソンの他に、ヒッグス粒子が現れることが理論的に予言されたため、ヒッグス粒子の発見がヒッグス場の存在を実証することになるそうだ。また、ヒッグス場により質量が生じるのは『素粒子』であり、それは『物質』の質量の僅か1%を占めるに過ぎないのだ。残りの99%は陽子や中性子の中に、構成要素のクォークを閉じ込めている「強い力」のエネルギーである(E=mc**2の関係によりエネルギーと質量は等価)そうだ。ヒッグス場は万物の質量の起源ではないのだ。また、ヒッグス粒子はできてもすぐに消滅してしまうため、ヒッグス粒子で満たされた空間などは存在しないそうだ。●発見された新粒子がヒッグス粒子であることが確定すれば、物質の基本法則である「標準模型」が一応完成する(いくつか問題は残っているそうだが)ことになる。しかし、通常の物質は宇宙の全質量の5%を占めるに過ぎず、今後は、暗黒物質や暗黒エネルギーをカバーする理論/モデルの研究に重点が移っていくようだ。
(関連:2012/7/6マイブログ