「墓」……「はか」が草冠だったって意識したことがあります?
「墓石」……草冠なのに石
「墓地」……草冠なのに土地
「八つ墓村」……歴代の村民はたったの8人だけ
「アキバの墓」……秋葉原のお墓
「墓室」……お墓のある部屋
「捨て墓」……捨ててある墓
「埋め墓」……埋めてある墓
「無縁墓」……赤の他人の墓
「墓園」……お墓の公園
「箸墓古墳」……お箸の墓だという言い伝えのある古墳
「お墓選び」……生者の特権
【ただいま読書中】『帰還兵はなぜ自殺するのか』デイヴィッド・フィンケル 著、 古屋美登里 訳、 亜紀書房、2015年、2300円(税別)
アメリカでは一年間に240人以上の帰還兵が自殺をしています。自殺未遂はおそらくその10倍。さらにその予備軍は……何倍? 本書には「200万人の帰還兵の20~30%がPTSDを負っている」という数字があります。著者はその膨大な「数字」の中から、数人の「個人」に関して丹念なルポを行います。
戦地での英雄。戦地から帰還した「ヒーロー」であることを地域社会や家族に期待される兵士。ヒーローであることを、あるいは普通の市民に戻れることを自分自身に期待する兵士。彼らの心情と行動が、まるで囁くような文体で描かれます。
アメリカがすごいのは、十億ドルかけて兵士転換部隊(WTUのちにWTB)を整備したことです。目的は、負傷した兵士の経歴に傷をつけずに彼らの心の傷を癒やすこと。PTSDの兵士も負傷兵なのです。(だから「もう任務に耐えられない」と申告して戦地から送還されるPTSDの兵士は、一般兵とは違う傷病兵用のヘリに乗ることになります)
別の意味ですごいのは、こういったプログラムにベトナム戦争の帰還兵が治療対象としてまだ参加していること。戦争の傷は、長く長く膿み続けるもののようです。
戦地から“無傷”で帰還する兵士は多くいます。PTSDを負っても、そこから快復する人も多くいます。しかし、永遠の罪悪感から逃れることができない人も多くいるのです。陸軍は本気でその原因を探ります。PTSDも兵士の自殺も、陸軍の“損害”ですから。しかし、一人一人はすべて事情が違います。自殺予防のために各ケースを精査し“教訓”を得ようとする努力は、空回りを続けます。しかし努力をやめるわけにはいきません。関係者は少しずつ疲弊していきます。戦地から帰還して、そのまま地獄で生き続ける人がいます。そしてその地獄は、兵士(元兵士)の周囲を少しずつ浸食しているのです。
この現実の恐ろしさに私はとてつもない圧迫感を感じます。それと同時に、自身の辛い状況をインタビューで著者に(読者に)語ってくれた人たちに、感謝も感じます。