2008年4月のブログ記事一覧(2ページ目)-ミューズの日記
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昨日、今日と二つのコンサートがありました。

昨日は中川祥治さんによる「リュート音楽のひととき第5回~テオルボとバロックリュート」これはレクチャーコンサートシリーズとして年に2~3回のペースで行われています。パソコンに資料、写真などを用意して、スクリーンに映しながらお話と演奏を披露するというもので、リュートやルネッサンス、バロック音楽に馴染みのない方でも楽しく聴けると言うものです。演奏もさることながらお話もとても分かり易く勉強になります。長年の教員生活で身につけたものなんでしょうね。
今回は下記のプログラムでお話と演奏がなされました。

トッカータ第10番(ピチニー二)
組曲ト長調(ド・ヴィぜー)
ソナタヘ長調(ヴァイス)

なんだ!たったの3曲か!と思わないでくださいね。ヴィゼーの組曲も20分くらいありましたが、ヴァイスのソナタは30分以上の大曲ですからね。
ピチニーニとヴィゼーをテオルボで演奏し、ヴァイスがバロックリュートで演奏されました。テオルボはイタリアン・テオルボで全てシングル・ストリングなんですね。非常に長い楽器で上駒のあるところまでの弦長も76cmもあるそうです。ギターが65cmですから左手が大変ですよね。音量はとてもある楽器で昔は主に通奏低音に使われていたそうです。
でも私はバロック・リュートの方が音的に好きでしたね。音域も違いますが、高音の煌びやかで雅な響きが断然リュートの方が勝っている感じでした。

今日は酒井康雄さんによる「名曲&リクエストコンサート2」
一部はギターの名曲をプログラムされていますが、2部は用意した30曲の中からリクエストの多い曲を中心に演奏されるという趣向です。
このコンサートは3月16日(日)に予定されていたものが、酒井さんの体調不良で急遽延期になったものでした。しかし、この数日前からまたその持病が悪化して体調としてはあまり良くない状況でのコンサートとなりました。それでもやはりプロ。何食わぬ顔をして粛々と演奏して行きました。
一部のプログラムは:
1.グラン・ホタ    (F.タレガ)
2.アストゥリアス   (I.アルベニス)
3.アンダルーサ    (E.グラナドス)
4.ソレア       (R.S.デ・ラ・マーサ)
5.ティエント     (M.オアナ)
6.タラントス     (L.ブローウェル)
二部は全て聴けなかったので演奏した曲目は不明ですが、一番リクエストの多かった曲はソルの月光でした。人間も美しい人に人気が集まりますが、やはり音楽も美しい曲に人気が集中しますね。作曲する人はもっと美しい曲を沢山書いてくださいな。

この二部で演奏した曲は全て初級~中級レベルの曲で、ギター愛好家なら誰でも知っている曲なんですが、皆さんが大きな拍手で演奏を楽しんでいらしたのを見て、プログラムに難しい曲ばかりを並べる傾向のあるプロのコンサートももっと馴染みのあるプログラムにしてもいいのにと思いましたね。まあ、馴染みのある曲ばかりでは飽きるので適度に変化しないといけませんが・・・。


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昨日素晴らしいギターが入ってきました。
最近人気のアメリカの製作家、ケネス・ヒルです。今月19日から5月25日までの期間、オープン3周年記念セールを行うのですが、その中で「ケネス・ヒル&加納木魂フェア」も同時開催で行います。その為にケネス・ヒルが4本入荷してきたのですが、その中のハウザー37モデル・ハカランダ仕様が素晴らしいんです。お値段が126万円と手頃な割りに、この価格帯ではなかなかお目にかかることが出来ない音がしています。

深い、しかも見事なまでの響き、絞まった音、きれいな音色と三拍子揃っています。これは絶対お薦めの楽器ですね。いい楽器に出会うと嬉しくなりますね。昨日もミューズの講師二人に「どうだ、いい楽器でしょう!」と自慢げに見せてしまいました。その一人が「もう弾きたくない、弾くと欲しくなるから」と言いながら弾いていました。是非貴方も試奏してみてください。これは絶対買いの楽器です。

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先日ナクソスの新譜で「ウルクッル・ギター作品集」がやっと届きました。
このウルクッルと言う作曲家は私も知らなかった人で、生年も没年も不明の謎に満ちた作曲家なのですが、なかなか聴き易い曲を書いています。どうも1830年~1843年頃、ソルと同じ時代にスペインで活躍したようです。フルネームはLeopoldo de Urculluと言います。しかし、何故彼がここまで忘れ去られていたのかも不明と言いますから益々謎が深まりますね。そんな人の作品集をレコーディングして発売すると言うのですから、流石ナクソスです。

収録されている曲目は下記の通りです。
1.友情/2.ロッシーニ「ウィリアムテル」の主題による序奏と変奏とコーダ
3.主題と変奏 Op.10/4.ドニゼッティ「ベリサリオ」より「カヴァティーナ」
5.嘆き/6.ベッリーニ「異国の女」、ドニゼッティ「ローマの追放者」のアリアによるカプリッチョ
7.ベッリーニ「海賊」より序奏と変奏曲

曲名を聞いてもどなたも知らない筈ですが、どれも聴き易く、弾き易そうな曲です。技巧的には凝らずに素直に書かれたと言う印象です。恐らく自作自演していたんでしょうね。演奏者はEugenio Tobalinaと言うBilbao(スペイン北部のバスク地方)生まれのギタリスト。

この謎の作曲家の作品を是非一度聞いてみてください。すんなり入ってきますよ。



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「音は脳の中で初めて音楽になる!」その通りですね。
昨日は脳医学博士の中村先生にこのタイトルで講演をして頂きました。
彼の言葉をお借りすると、「脳科学的に言いますと、音は脳の外で起こっている物理現象、 音楽は脳の中で起こっている心理的現象、ということになります。 洒落た言い回しをすれば、音は空気や物を振動させる力のあるもの、音楽は人の心をふるわせる力を持っているものといってもいいかも知れません。
ですから、どんなに高性能な音響機器を使ったとしても、それ単独では「音」 は分析できても、「音楽」を分析することはできません。何故なら「音楽」は 人の心(つまり脳)の産物だからです。
ということで今回は、音が耳から入り、脳の中で音楽になるまでの道のりについて、 脳科学の最新の知見を織り交ぜながらお話しをしていきたいと思います。」と言う事で大変興味深いお話をして頂きました。

先ずは音が音楽として心に届くまでの道のりについてお話をして頂きました。音は二つの全く異なる世界を旅してから心に音楽として届きます。一つは音が耳に届くまでの空気の振動としての物理世界、もう一つは音が耳から入って鼓膜の奥のリンパ液を振動させて繊毛細胞が揺れる事で神経の電気信号に変わってからの認知脳科学の世界(心理世界)。この二つの世界は全く違うものなんですね。従ってそれぞれの世界における影響の因子も全く違います。
物理世界では弾き方、楽器の状態、ホールの環境、湿度温度、周囲の雑音などが影響を与える訳ですが、心理世界、脳の中で起こる電気信号に影響する因子としては、意識レベル、注意レベル、慣れ(飽き)・予測(期待)、好き・嫌い、体調・気分などになります。ふむふむ、成る程、ですよね。
従って、脳の中で感じた音は、実際に耳の外でなっている音とは違うんだそうです。例えばクレッシェンドなど音量のコントロールをどうするとクレッシェンドらしく聞こえるか?これは音のエネルギー(物理量)と感じた音の大きさ(心理量)とは異なるので、それらしく聞こえる弾き方があるんですね。書面で説明し難いので、お知りになりたい方はミューズお出でになった時にお教えします。

そしていよいよ核心に迫りますが、飽きない演奏とはどうすればよいか?
1.脳は飽き易い
2.脳は変化に敏感
3.脳の変化に敏感な性質は、音楽の様々な性質に共通する
と言う基本を踏まえ、
・単調な演奏は聴き手の注意力を散漫にし、眠気を誘う。
・音量、テンポ、音色など「適切な」変化が必要。
・変化のし過ぎ、無秩序な変化は逆効果
・秩序ある様式が構築された中で、時々変化するのが効果的。
・持続的に聴き手の注意を集めるのが最も基本的に大切

次に「心の伝わる演奏とは?」
心理世界の答えを考えるキーポイントは二つ
1.音楽はコミュニケーションである
 ・相手は機械ではなく、人間(語りかけるように)
 ・聴き手は、自分に向けて発せられていると感じられないメッセージには注意が向かない
2.脳は言葉や理屈なしでも、相手の気持ちや意図を理解する能力を持っている(ミラーニューロンシステム)
「心を込めた演奏」は必ず伝わる
 ・心を込める→感情のこもった話し方や歌をイメージし、本当にその気になってしまうのが簡単
 ・ミラーニューロンシステムは相手の心の状態を自分の心の中に鏡の様に映し出す神経システム→相手が楽しそうなら自然に自分も楽しくなる、悲しそうなら自分も悲しくなる。

つまり音楽は耳のみで聴くにあらず!と言う事です。
注意の向けられない音は心に残らないため、相手の注意を集める事が最も大切。例えば弾き始めの出だしの雰囲気作りはとても大事。また、人間は嫌われるとアラ探しをされてしまうので、ステージマナーや笑顔なども重要な要素となってくる。
等など、ここには書き尽くせない内容のお話を沢山していただきました。
ギター愛好家だけではなく、当日はピアニストやセラピストなどの方々も参加され、熱心にメモを取られていらっしゃいました。
また、中村先生には第4回もお願いしたいと思います。今回参加できなかった方も是非次回はお越し下さい。こんなによい話を聞かないのはもったいないです。



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<あれも聴きたい、これも聴きたい> ヴィラ=ロボスのショーロ

 最近思いがけなく素敵なCDが手に入った。それは先日久しぶりにミューズ音楽館へ伺ったとき、山下さんが「こんなの興味ない?」といって勧めてくれたもので、私の大好きなピアニスト“クリスティーナ・オルティス”の参加したヴィラ=ロボスのショーロが3曲入ったCD。私としてはクリスティーナ・オルティスと聞いたら迷うことなく購入。彼女は以前にもここで紹介したことがあるが、かなり昔から私のお気に入りのピアニストで、彼女のCDは見つけて買わなかったことがない。LPの時代に2枚。そしてこれまでもっていたCD7枚と、それに今回のものが加わって計8枚。殆んどがヴィラ=ロボスをはじめ南米の作曲家の作品を演奏したものが多いのだけども、中にはベートーベンのピアノ協奏曲全曲という変り種もある。もっとも彼女の師匠はあの有名な巨匠“ルドルフ・ゼルキン”なので、ベートーベンは得意中の得意なんでしょう。とても素晴しい演奏で、私の持っているLP・CDの中でもミケランジェリのものに匹敵するくらい気に入っている。

 今回はそのクリスティーナ・オルティスの参加したショーロの入ったCDのほかに、ヴィラ=ロボスのショーロを沢山演奏したものがもう一枚あるので、合わせてそれもここに取り上げることにした。それにはヴィラ=ロボスのショーロが8曲収録されていて、ギターでは“トゥリビオ・サントス”が参加しているもの。
ヴィラ=ロボスはショーロと名づけた楽曲を知られているもので1番から14番までと、番号のない作品を2曲(VL+Vc)、全部で16曲残しており、皆さんご存知の通りその第1番がギター・ソロのために書かれている。これをトゥリビオ・サントス“が演奏している。しかしショーロの起源のことを考えると、サントスの演奏はとても上手いのだが、あまりに手堅くカッチリと弾いていて面白い演奏とは言いかねる。もうすこし与太ったというか、ブラジルのこぶしが効いていて欲しかった。とにかく楽譜に書いてあるとおりに弾くだけではなんだか脳がないような気がする。このCDではその他に2番から7番までと(6番が入っていないが)、番号無しの2曲のショーロとそのほかにちょっとした室内楽が収められている。ショーロというのは特定なリズムや形式を表しているものではなく、もともとは街角で仲間が持ち寄った楽器で自由に即興演奏する、いわば仲間内の音楽なんだが、ヴィラ=ロボスはその起源よろしくショーロという名前で様々な楽器を使って様々な音楽を書いている。一応ここに紹介すると、第1番がさきほどもいったギターソロ。第2番がFl+Cl。第3番が男性Cho+Cl+Sax+Fag+3Frn+Trn。第4番3Hr+Trn。第5番がピアノ・ソロ。第6番がVl+Vc。第7番がFL+Ob+Cl+Sax+Fag+ゴング+Vl+Vc。第8番がオーケストラと2Pf。第9番がオーケストラ。第10番が合唱とオーケストラ。第11番がPf+オーケストラ。第12番がオーケストラ。第13番がオーケストラ+吹奏楽というちょっと変わった組み合わせ。第14番はさらにオーケストラ+吹奏楽+合唱。そして最後に番号なしでVl+Vc。同じような連曲としては有名な「ブラジル風バッハ」があるが、それに比べてさすがにショーロの方は楽器編成がヴィラ=ローボスのきまぐれなのであろう。“出鱈目”といったらよいか、まさにその起源を表している。あたかも「おれに書かせりゃ、どんな楽器の組み合わせでもいい曲は書けるもんさね。とどのつまりは才能よ!」とでも言っているかのようだ。もっともブラジル風バッハにしたところが、ご存知第5番のようにチェロとソプラノだけという組み合わせもあるので、やっぱりヴィラ=ローボスはちょっと変わったというか、“天邪鬼”な作曲家なのかもしれない。

この2枚のCDで重複しているのはピアノ・ソロにあてられた5番のみ。もちろんクリスティーナ・オルティスの演奏が野性味あふれていて抜群に素晴しい。またサントスが参加している方はおおよそ小編成のものばかりであるが、めったに聴けない曲ばかりなのでとても興味深いものばかりだ。それに録音はちょっと古いがなかなかいい音で録音されていて、オーディオ的にも楽器奏者の位置関係がはっきり分かって、そのあたりもなかなか面白い。そして今回の新しいCDに収録されているピアノとオーケストラのために書かれた第11番は、演奏時間も62分52秒と通常のピアノ協奏曲よりもはるかに大曲となっていて、ヴィラ=ロボスには他にちゃんとしたピアノ協奏曲が5曲もあるので(これもクリスティーナ・オルティスは全曲録音している)、そちらに含めてもいいんじゃないかと思わせるくらいの大曲だ。またこちらのCDは最新の録音ということもあって、もーれつに音がいい。“BIS”からの発売なんだが、以前リュートの中川さんがBISの古楽の録音が抜群に素晴しいと言っていたけども、たしかにその通り。目の覚めるような鮮やかな音で録られている。
ヴィラ=ロボスにはそのほかにもチェロのための協奏曲やハーモニカのための協奏曲なんていう変り種もあって(これがなかなか素敵な曲)、結構興味の尽きない作曲家である。そのうちにそれらも紹介してもいいかな、とは思っておりまするが。
内生蔵 幹(うちうぞう みき)

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