2008年3月9日のブログ記事一覧-ミューズの日記
ミューズ音楽館からの発信情報  ミューズのHP  http://www.muse-ongakukan.com/

 



<あれも聴きたい、これも聴きたい> A.タンスマンのギター協奏曲

 つい最近、長い間楽しみにしていたCDがやっと手に入った。上にあるようなご存知A.タンスマンによる“ギターと管弦楽のためのコンチェルティーノ”の他、タンスマンの手によるギター独奏の作品が全て収録されたCDである。ギターソロはあの有名なフレデリィック・ジガンテ(ツィガンテ)。オーケストラはロイヤルバレエ交響楽団、指揮はアンドリュー・ペニーというあまり聞いたことのない名前の指揮者。製作はストラデヴァリウスというイタリアの会社で、以前オスカー・ギリアのポンセばかり入ったCDを製作した会社だ。
 今回手に入ったCDは世界初録音とうたってあるが、ギター界にとって少なからず貢献のあったタンスマンの作曲したギター協奏曲を、何故今まで誰も録音していなかったのだろうか。聴いてみると技巧的にそんなに難曲というほどではないように思えるので、「演奏不可能」という理由からではなさそうだ。内容からいうと、超有名な“アランフェス協奏曲”ほどではないにしろ、そんなに聴き難い曲でもない。いつも馴染んでいるタンスマンの作品に比べて多少アカデミックな部分もあって、セゴヴィアにしてみればそんなに好みの作品ではなかったのかもしれないが、それでもそれなりに聴き易いフレーズがそこかしこに出てきて、それほど魅力のない作品とも思われない。むしろ少ないギター協奏曲の中では「親しみ易い名曲」の部類に入れてもおかしくない作品だ。それでは何故か。何故CDの解説にもあるように、このCDが世界初録音なのか。確かにアランフェス協奏曲のようにソロギターの技巧を最大限発揮しオーケストラと丁々発止とやりあうということもなく盛り上がりには欠けるので、ステージで取り上げ生で演奏して格別効果の上がる曲とも思えずむしろ舞台栄えしないといったらいいか、とにかく難しい曲だ。が、・・・がである。今では録音技術も進歩し、CDの音源としての効果は充分発揮できるであろうことは容易に想像がつく。にもかかわらず今回発売になったジガンテの演奏するこのCDが世界初録音なのである。ここのところは私にすればまったく理解不能なので、お分かりの方はぜひともお教え願いたいものだ。

 それにしても四楽章からなるこの作品を聴いてみると、なんとなくプロコフィエフ風な作風のどこかにちょっぴり東洋的なムードを溶かし込んだというか、やはり一種独特な雰囲気をもった作品になっている。しかしコンチェルトというからには、もう少しギタリストがその技術と表現力を売り込める「見せ場」というものが欲しい気がすることも確かだ。いまひとつこの作品の「語りたいところ」というか「売り」が判然としない。ただ最終楽章だけはさすがに少し盛り上がりを見せ、ギタリストにも活躍の場が与えられているようだ。ともかく初めて耳にする曲のこととてどうも評価がまだ定まっていないが、恐らく今後あちこちで少しづつは取り上げられ演奏される機会が増えてくるかもしれない名曲である予感はする。

 そのあとに続く収録曲は以下のようなものだが、おそらくタンスマンのギターのための作品は全て網羅されているのではないかというようなCDとしては意義のあるしっかりした構成になっていて大変好ましい。
①ギターと管弦楽のためのコンチェルティーノ
②3つの小品
③組曲「カバティーナ」
④バラード(ショパンを讃えて)
⑤ポーランド風組曲
⑥スクリャービンのテーマによる変奏曲
⑦マズルカ
⑧ワレサを讃えて

コンチェルトに続くこれらの曲もジガンテはそっけないほどのリズムと表現力で弾いているが、セゴヴィアとはまた違った世界がそこには開けており、ひょっとしたらタンスマンはこのように弾かれるべきなのではないかといったような気がしないでもない。
皆さんもぜひ一度お聴きになってみられることをお勧めする。
内生蔵 幹(うちうぞう みき)


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )