2007年11月6日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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<あれも聴きたい、これも聴きたい> 集まれ!フレッシュ・ギタリスト in 徳島
 10月27日から11月4日までの9日間、徳島で行われていた第22回国民文化祭の一環として企画された“集まれ!フレッシュ・ギタリスト”と題したコンサートに招かれ、11月の2日、3日とかけて行ってきましたが、国民文化祭なるものの存在を、この年になるまで知らなかったことを少なからず恥ずかしく感じた2日間でもありました。この“集まれ!フレッシュ・ギタリスト”なる催しは、ここにも何回か名前が登場している川竹道夫さんが主催する徳島ギター協会が中心となって、今日本中で注目されている若手ギタリストを10人一堂に集め、順に演奏を披露してもらうという一大イベントなのですが、もうひとつ、川竹さんが永年尽力されてきたギターの製作家を育てるという試みの一環として毎年行われているプロ・アマを問わず新作の発表をする“手作りギター展示会”にもお邪魔させていただきました。
まず“集まれ!フレッシュ・ギタリスト”の方ですが、出演者の名前とプロフィールをご紹介します。
①山田 陽介 24歳(愛知県)
名古屋芸術大学器楽科 卒業
井深和弘、酒井康雄、岩永善信の各氏に師事
演奏:ヘンツェ 作曲 3つのティエント
②土橋 庸人 21歳(高知県)
2003年GLC学生ギターコンクール 高校生の部第一位
松居孝行、佐藤紀雄の両氏に指示 現在エリザベト音楽大学在籍中
  演奏:武満徹 作曲 フォリオス
③三良 裕亮 25歳(福岡県)
2000年 ヤマハギターコンクール一般部門最優秀賞受賞
2003年 第31回山口ギターコンクール第一位(グランプリ)
2005年 山陰ギターコンクール首席2位(1位なし)
福山 仁、中野 義久両氏に指示
演奏:ディアンス サウダージ第3番
   トゥリーナ セビリア幻想曲
④猪居 亜美 13歳(大阪府)
2000年 第25回GLC学生ギターコンクール小学低学年の部第一位
2001年 第23回ジュニアギターコンクール小学低学年の部第一位、
2004年 第29回ギター音楽大賞ジュニアの部優勝、第29回ギター音楽大賞重
奏&アンサンブルの部優勝、
父 猪居信之氏に師事
演奏:J.S.バッハ シャコンヌ
⑤加藤 早紀 10歳(東京都)
2005年 ジュニアギターコンクール最優秀賞、
2006年 GLC学生ギターコンクール小学高学年部第一位、GLC賞 共に史上
最年少優勝を果たす
第1回庄内国際ギターフェスティバルにおいて、オスカー・ギリアより優秀賞を受賞
演奏:F.ソル グランソロ
⑥廣川 叔哉 29歳(愛媛県)
2004、06年とスペインに渡り、パコ・フェルナンデス、エル・イルデ他に師事
演奏:エンリケ・デ・メルコール グラナイーナ
⑦松澤 結子 19歳(埼玉県)
第24回 ジュニアギターコンクール中学生の部第一位
第28回 GLC学生ギターコンクール中学生の部第一位
本木盛夫、小原聖子両氏に師事
演奏:アルフォンソ・エル・サビオ サンタマリア頌歌集より
アルベニス 朱色の塔
R.サインス・デ・ラ・マーサ サパテアード
⑧上野 芽実 17歳(宮崎県)
2006年 第52回九州ギターコンクール 第1位
  中野義久、L.ブラヴォ両氏に師事
  演奏:ブローウェル ソナタ 第1、3楽章、
⑨木村 裕 16歳(茨城県)
1999年 GLC学生ギターコンクール小学低学年の部第1位
第21回ジュニアギターコンクール第1位
2003年 第28回GLC学生ギターコンクール 小学高学年の部第1位
2005年 第30回GLC学生ギターコンクール 中学生部第1位、同時にGLC
賞(最優秀賞)を受賞
2006年 茨城県知事賞を受賞
父 木村義輝氏に師事
演奏:J.S.バッハ チェロ組曲第6番 プレリュード
   D.アグアド 序奏とロンド
⑩浅田 侑子 17歳(徳島県)
  2001年 第26回GLC学生ギターコンクール 小学高学年の部第2位
  2002年 第24回ジュニアギターコンクール 小学高学年の部 第1位
  2006年 第30回GLC学生ギターコンクール高校生の部 第2位
  2007年 第30回GLC学生ギターコンクール高校生の部 第1位、GLC賞
  川竹道夫氏に師事
  演奏:パガニーニ カプリス第24番(川竹道夫編)
     E.サインス・デ・ラ・マーサ プラテロと私

以上ご覧のように、皆素晴しい経歴の持主ばかりが一堂に会してのコンサートでしたが、確かにその結果は私の予想を充分超えたといってよい素晴しいものばかりでした。コンクールではないので一人ひとりに対する批評めいたことは言いませんが、ことに女性陣の活躍が目立ったように感じました。なぜかと言うと、男性陣には選んだ曲目によって随分損をしている人が多かったように感じたからです。このように非常に短い時間しか与えられていない時には、どんな曲目を選んだ方が聴衆に自分の実力が伝わり易いかをよく考えることが重要ではないでしょうか。たとえば最年少の東京の加藤早紀さんの選んだグランソロは、まさに彼女の技術の確かさと、さらに表現されている音楽性、芸術性が、いかに優れたものであるかを納得させるに充分でしたし、誰の目にも彼女の力は歴然としていたのです。この世に生まれ出てまだ10年しか経っていないことが嘘のような素晴しい演奏でした。大阪の猪居さんのシャコンヌもそうです。途中若干のミスはありましたが、それでも彼女が素晴しいテクニックの持主であることは充分理解できました。それに埼玉の松澤さんの朱色の塔なども、充分彼女の歌心は伝わってきました。宮崎の上野さんのブローウェルも女性らしからぬテクニックとダイナミックな表現力を感じさせましたし、最後に弾いた地元徳島の浅田さんのカプリスは、まさに今回のコンサートの最後を飾るにふさわしい絢爛たる効果を生み出していました。そういう意味で今回は女性陣の方が聴衆の皆さんからも若干正当に評価してもらえたのではないかという気がしました。しかし今回の若い10人の演奏を聴いて、私達団塊の世代としては、ここまでクラシックギターのレベルが上がってきたのかという、一種感無量な心持にさせられましたし、今まさに日本のギター界が世代交代しつつレベルも格段に向上してきていることに嬉しさもこみ上げてくるものがありました。そしていつも感心させられることは、川竹さんを中心とした徳島ギター協会の結束の固さです。いつも全員で演奏者を盛り上げ、会の運営に携わり、全員一致協力していかにも楽しそうにギターに貢献しているその姿です。それを見ているととてもうらやましくも感じられ、ほんの少しではありますが、徳島ギター協会のイベントに協力させてもらえたことが誇らしくさえ思えてくるのです。翌日は同じ会場の別なフロアーで行われている“手作りギター展示会”に出席し、昨日登場した若手ギタリスト数人による試奏会と、海外から一時帰国中の徳永真一郎君の演奏が行われ、会場大いに沸きましたが、この半年ほどの間に確実に腕を上げている徳永君を見ることができ、また旧交を温めることができたのは、私にとっても幸せな時間でした。
内生蔵 幹(うちうぞう みき)



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