2007年2月1日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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和声学あれこれ(3)「なぜ、短調の音階は3種類あるのか?」

今回は音階(スケール)についてのお話です。
ある高さの音を開始音として1オクターブに渡って段階的に並べたものを音階と云いますが、その歴史は古く、世界的にも、現代においても色々な音階が存在します。例えば教会旋法、アラビア風音階、五音音階、半音音階、全音音階等があります。これらについてお話すると大変難しくなりますので、今回は現在普通に使われている長・短二種類の音階に限ってお話しましょう。
例によってハ長調で説明致しますが、ドからドまで並んでいる各音の間隔を調べてみますと、ド(全音)レ(全音)ミ(半音)ファ(全音)ソ(全音)ラ(全音)シ(半音)ドのパターンが判ります。図1.
全音は長二度、半音は短二度とも云います。特にシは導音といい、ド(主音)への半音進行は最も重要でその調を決定づけます。この全・全・半・全・全・全・半のパターンはどの長調をみても変わりません。逆にいえば、どの音から出発してもこのパターンで並んでおれば長調と云える訳です。また、長調はこのパターン一種類です。ト長調でみてみましょう。ソから始まって(主音)ファに#がついてソに半音進行しています。ファがシになるわけです。従ってソラシドレミファ#ソがドレミファソラシドになります。余談ですが、ソラシ〜の読み方を固定ド唱法といい、楽器演奏の譜読みではこの読み方をしますが、歌の場合はソをドに読み替えた移動ド唱法を使います。理論書では混乱しないよう主音ソをIとして以下VII迄のローマ数字を使います。

さて、次は短調ですが、ハ長調の平行短調であるイ短調で説明しますと、まず、そのままラから音を順番に並べてみます。すると勿論♯や♭の付かない音階ができます。パターンを調べてみますと全・半・全・全・半・全・全で長調とは大分違います。これを自然短音階といいます。図2
ところがこの並び方ではソとラの間隔が全音でソが導音の役目を果たしておらず、西洋人の耳には不自然に聞こえたのでしょう、そこでソに♯を付けて導音にしました。これを和声的短音階といいます。図3   もう三百年〜四百年も前から付けております。これでやれやれうまくいくと思ったらまた不都合が出てきました。今度はファとソ♯の間隔が全+半の増二度になってしまい、なんとなくアラビア風に聞こえます。(ギターで試してみましょう) そこでファにも♯を付けてミとファ♯を全音、ファ♯とソ♯を全音として無理のない音程と進行にしました。
しかし、下降するときは自然的短音階でも不自然なく聞こえますので、ファとソの♯を取り払って使うことにしました。これを旋律的短音階といいます。
図4  今度こそやれやれと思ったらまたまた不都合が出てきました。
この旋律的短音階で和音を作るとファに♯が付いている為、主要3和音の一つであるサブ・ドミナントのIVが長和音になり、また、ファを含む他の和音も変化してしまい、図5(Vもソ♯を付けたため長和音)、短和音は主和音のみという結果になり、曲調に短調らしさが無くなってしまいました。そこで解決策として、メロディーで上行する時は旋律的短音階、下降する時は自然的短音階、伴奏(和音)で使う時は和声的短音階を使うことになりました。
これが自然的・和声的・旋律的の名前の由来と3種類ある理由です。
短調は結構面倒ですね。やっぱりマイナーなんだ。

次回は「自然の響きはメジャー?」を予定しております。
             
                             服部修司





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