消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

 野崎日記(12) 新しい金融秩序への期待(12) USTR―目指すは医療保険市場

2008-11-22 19:03:14 | 野崎日記(新しい金融秩序への期待)


 USTRは、日本が規制改革と市場開放を一層進めて、日本の全国民の利益となるような「新しい革新的な製品やサービスの開発を促すこと」が大事であるとのプレスリリースを出した。

 そのプレスリリースでは、医療分野が米国の最大の関心事項であることが強調されている。


 「今年の要望書で特に重点的に日本に求めているのは、医療機器および医薬品分野の技術革新を支援するさまざまな政策を実施すること」、「新しい日本郵政グループ各社が」競合する民間企業を圧迫しないこと、「銀行における保険商品の窓口販売の完全自由化を予定通り実施すること」であるとしている。

 この短い宣言に、日本の医療市場の米国への開放、しかも、医療保険とのセットで開放されるべきであるとの米国の強い意志が集約されている。

 そのためにも、日本の公的な医療保険制度は廃止されなければならない。周知のように、米国には、公的な医療保険制度はほとんどない。映画「シッコで完膚無きまで批判されたのが、米国の医療保険制度である。米国は、日本もまた、公的な保険制度を縮小して、民間保険を拡充せよと迫っている。要望書は言う。

 「共済は日本の保険市場において民間と直接競合する保険商品を提供し、相当な市場シェアを有している」、共済は、「民間の競合会社に比べて大幅な有利な立場」にある。そのためにも、「共済の監督や検査に関する規則と規制の徹底的な見直しを行う」べきであると。

 米国は、一方で、規制緩和を標榜しながら、他方で、共済を厳しく規制せよと要求しているのである。かつて、日米保険協議において、医療などの第三分野において、日本の大手保険会社は米国の強い要請で一定期間規制された。そのこともあって、日本の医療保険の分野は米国保険会社の独壇場になった。この苦い経験は、忘れられるべきではない。

 公的な共済を失えば、日本の真の宝である国民皆保険制度まで民営化の名の下に廃止されてしまうであろう。保険診療から混合診療へ、そして、医療が保険会社に管理される自由診療へと流れて行くことを米国政府は画策しているのである。

 金持ちだけが高度な医療を受けられ、貧乏人は、支払ったわずかの保険料に見合う貧弱な医療しか受けられないという米国の悪しき制度に向かって、日本の医療制度が突進しているのである。


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