消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

野崎日記(174) 道州制(16) 橋下大阪府政と関西州(16) 

2009-06-10 06:58:53 | 野崎日記(新しい金融秩序への期待)


 


(16) 二〇〇〇年二月一七日に施行された「特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律」は、「民事調停法」の特例として機能している。これまでの民事調停手続よりも、債務者に有利なものとなった。破産しか立ち直りの機会がなかったものに、「特定調停」という選択肢が増えたと言える。経済的に破綻するおそれのある債務者(特定債務者)の経済的再生に資するため、民事調停法の特例として特定調停の手続きを定めることにより、特定債務者が負っている金銭債務に係る利害関係の調整を促進しようとする目的を持つ。①支払不能に陥るおそれのあるもの、②事業の継続に支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済する事が困難であるもの、③債務超過に陥るおそれのある法人が同法の適用を受ける(http://homepage2.nifty.com/sihoushosi/tokutei.html)。

(17) 政府が、再生を容易にする法律を相次いで成立させた背景の分析として、田中[2008]がある。この論文は、〇二~〇四年にかけてのデータを用いて、自治体の出資比率の高まりや、自治体の損失補償といった要因が、第三セクターの法的再生を過剰化(法的清算を過少化)させる方向に破綻処理の選択を歪ませてきたと結論づけている。

(18) 伯野[2009]は、大鰐町も含む地方のリゾート施設の赤字が地方自治体を行き詰まらせている態様を、「自治体財政健全化法」と「損失補償」との関連性で浮き彫りさせた密度の高いルポルタージュである。

(19) 地方自治体における一般会計とは、福祉・教育・土木・衛生などの市町村の基本的な施策をおこなうための会計であり、主な歳入には、市町村税・地方交付税・国庫支出金等がある。

 特別会計とは、法律で特別会計とすることが決められている国民健康保険会計や老人保健会計などの事業会計や、市町村が独自に設けている交通災害共済事業会計、土地取得会計など。公営事業会計も特別会計の一つである。

 公営事業会計とは、法律の規定により、いずれの団体も特別会計を設けてその経理をおこなわなければならない公営企業や事業に係る会計をいい、次のように分類される。①地方財政法施行令第三七条に掲げる事業に係る公営企業会計、②国民健康保険事業、老人保険医療事業、介護保険事業、収益事業、農業共済事業、交通災害共済事業及び公立大学附属病院事業会計、③上記①および②の事業以外の事業で地方公営企業法の全部または一部を適用している事業に係る会計である。

 公営企業会計には、病院事業や上水道事業などがあり、これらの会計には一般会計と同様の経理をおこなっているものと、地方公営企業法を適用し、民間企業と似た経理をおこなっているものがある(http://www.pref.hiroshima.lg.jp/www/contents/1205301696632/files/0.pdf )。

(20) 橋下府政が発表した「今後の財政収支の見通し(粗い試算)」では、次のように記されていた。

  「この試算は、二〇〇八年度において『収入の範囲内で予算を組む』ため、また将来的にも安定的な財政運営をおこなうためにどれだけの取組額が必要かを試算したものです。試算結果については、上方・下方に相当の幅を持って理解する必要があります。 これまで府は、財政再建団体への転落を防ぐため、減債基金からの借り入れや通常よりも多い府債の借換えといった、いわば『負担の先送り』をおこなってきました。二〇〇七年二月におこなった試算では、こうした手法を活用することを前提に、二〇一一年度までの試算をおこない、二〇一〇年度に単年度黒字になるという見込みを示してきました。しかし、今回、その後の状況の変化を踏まえ、二〇二一年度までの粗い試算をおこなったところ、単年度黒字となるのが二〇一四年度に遅れるうえ、二〇一六年度には実質公債費比率が二五%を超え、財政健全化団体になる見込みとなりました」。

 「自治体財政健全化法では、実質公債費比率が二五%以上となった場合などに、『財政健全化計画』に基づく財政健全化が義務づけられます。その場合、次のような支障が考えられます。①行政サービスの見直しによるサービス水準の低下、インフラ整備の中断や見直し、使用料・手数料の値上げなどが必要になる可能性があります。②『財政健全化計画』を定め、実施状況について総務大臣から勧告される場合もあるなど、府の自主的な行財政運営が一定制約される可能性があります。さらに、実質公債費比率が三五%以上となるなど、『財政再生団体』になると、国の関与による確実な再生が求められます。将来世代への負担の先送りである減債基金からの借り入れなどをやめ、かつ、実質公債費比率を財政健全化団体への転落ラインである二五%以上としないためには、二〇〇八年度で約一、一〇〇億円、二〇一六年度までに総額六、五〇〇億円の改革取組額が必要との見通しとなりました」(http://www.pref.osaka.jp/zaisei/)。

(21)  「地方分権一括法」とは通称で、正式名は、「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」である。地方自治法を主とした地方分権に関する法規の改正に関する法律であり、既存の四五七の法律(一部勅令を含む)について一部改正または廃止を定めた改正法である。地方自治法改正を中心とした大半の施行は二〇〇〇年四月一日だが、一部法律については施行が前後している(ウィキペディアより)。

(22) 「三位一体改革」は、日本において国と地方公共団体に関する行財政システムに関する三つの改革、すなわち①国庫補助負担金の廃止・縮減、②税財源の移譲、③地方交付税の一体的な見直しをいう。三位一体改革は、二〇〇一年に成立した小泉純一郎内閣における聖域なき構造改革の目玉として、「地方にできることは地方に、民間にできることは民間に」という小さな政府論を具現化する政策として推進されているもの。公式文書としては二〇〇四年一一月二六日の政府・与党合意「三位一体の改革について」が初出とされる。

 〇四年度はこの改革によって、国庫支出金が一兆三〇〇億円、地方交付税が二兆九〇〇〇億円、それぞれ削減され、六六〇〇億円の税源移譲がおこなわれた。しかし、実際には、税源移譲額よりも補助金削減額の方が大きかった。加えて、地方交付税と財源対策債とを合わせて約二兆九〇〇〇億円が削減された(削減率一二%)。このため〇四年度の予算が組めず、基金の取り崩しや管理職の給与カット等でしのいだ地方自治体もあった。このような経緯で地方の改革への不信感が募ってきたため、「骨太の方針二〇〇四」で三兆円規模の税源移譲を明記した。それに従って、〇四年一一月、政府・与党が二・四兆円分の税源移譲に合意。〇五年一一月、政府・与党が〇・六兆円分の税源移譲に合意(合計三兆円)。〇六年度税制改正で所得税から個人住民税への税源移譲を実施。〇七年から個人住民税所得割を一律一〇%に(都道府県四%、市区町村六%)。しかし、補助金は大幅に削減され続けている(ウィキペディアより)。


 引用文献


田中広樹[2008]、「第三セクターの破綻処理効率性とガバナンス-法的処理を申請した法
     人別データに基づく実証分析」、『会計検査研究』第三七号、三月号。
地域政策研究会(自治大臣官房地域政策室内)編[1997]、『最新地方公社総覧』ぎょうせ
     い。
伯野卓彦[2009]、『自治体クライシス-赤字第三セクターとの闘い』講談社。
深澤映司[2008]、「第三セクターの破綻処理と地方財政」、『レファレンス』第六八九号、
     六月号。
前澤貴子[2007]、「地方自治体の財政問題と再建法則」、『調査と情報-ISSUE BRIEF』第
     五八五号、五月八日付。


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