消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

本山美彦 福井日記 14 抹殺される大金鶏菊

2006-06-21 00:58:25 | 花(福井日記)
大金鶏菊(オオキンケイギク)が日本全国の空き地で咲き乱れる季節になった。黄金色に、まぶしく太陽を照り返す。群生しているので、余計に迫力を感じる花である。コスモスに似ている。春型のコスモスと思っている人が結構、多いのではなかろうか。ここ福井でも1週間ほど前から咲き出した。こちらの心まで明るくなる。とにかく美しい。

 しかし、残念ながら、平成18年の2月1日から、この花は、環境省によって、「第二次特定外来生物」の一つに指定されてしまった。特定外来生物とは、海外期限の外来生物で、生態系、人間の生命、農林水産業に悪い影響を与える生物であるとされているものである。「外来生物法」によって、栽培、保管、運搬、輸入が禁止されている。そして、今回、追加指定されたのが、オオキンケイギクなのである。販売すれば、個人の場合、懲役3年もしくは300万円以下の罰金、法人の場合には1億円以下の罰金が、科される。野外でも、個人の庭でも、植えると、個人では1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、法人の場合、5000万円以下の罰金が科される。

 あまりにもありふれた花、しかも、明治中期に日本の道路を飾るべく輸入された花である。けっして、荷物にくっついて自生したものではない。綺麗なために、家の庭に植えようかと想うひとがいるだろう。しかし、今年からそれは駄目になったし、街路や空き地では除草剤が撒かれる可能性がある。お互いに気をつけましょう。

 それにしても、北アメリカが原産の、この花の学名、coreopsis lanceolataは可哀想である。coreの単数corisはギリシャ語で南京虫を指す。これは、実の形が南京虫に似ているからである。lanceolataは針型という意味である。要するに蔑称である。
 もちろん、花屋からは今年になって消えた花である。

 あまりにも繁殖力が強いためなのだろうか。必要があって輸入されたのに、御用済みとなって抹殺される花を想うと身につまされる。遠いアフリカで、イラクの戦場で、わが日本で幾万回となく繰り返される、権力によって嫌悪されたものが抹殺されている人の世がこの花にダブってしまう。抹殺されるものは、どうあがけばいいのか。
 一首

誰ぞ知る 打ち棄てられし 
哀しみを 春が過ぎても 走る悪寒を