実務家弁護士の法解釈のギモン

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会社法改正要綱案(2)-監査・監督委員会設置会社

2012-08-03 10:07:16 | 会社法
 法務省から、会社法の改正要綱案が公表された。ただ、中身を見るとほぼ原案と変わりはなさそうである。したがって、見出しは「要綱案」と変えてみたが、実質は前回からの続きである。

 日本でも、もともと戦後の法改正で取締役会の設置が義務づけられた後は、監査役の権限は会計監査に限られていた。取締役の監督は取締役会が行うのが当然だったからである。さらに、証券取引行政における公認会計士による会計監査の義務づけも行われ、上場会社では公認会計士による会計監査も実質的に義務とされてきた。以上の過程で取締役会による監督と公認会計士による会計監査がそのまま会社法的にうまく機能すれば、少なくとも上場会社においては監査役の制度の必要性は存在しなかっただろうという予想もできなくはないのである。
 ところが、現実には取締役会による取締役の業務執行の監督が機能しなかった。歴史的にはここで日本独自の機関設計への突進があったのではないだろうか。結局、監督機能の強化のために、監査役の業務監査権限を復活させざるを得なくなったのである。こうなってくると、今度は監査役制度を廃止するどころかコーポレートガバナンスの充実を図るために監査役の権限を徐々に強化していく歴史となっていく。

 これが、日本の監査役制度の独自の発展につながっていった経緯であろう。

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