実務家弁護士の法解釈のギモン

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債権法改正-売主の担保責任(1)

2015-08-19 10:44:44 | 債権各論
 債権法の改正案では、「瑕疵」という言葉がなくなる。従前の民法では、売主の瑕疵担保責任として、売買の目的物に隠れた瑕疵がある場合の売主の責任が規定されており、これが有償契約に全面的に準用される形となっていたので、売主の瑕疵担保責任の理解は重要であった。
 また、この瑕疵担保責任が普通の債務不履行責任と性質が同じなのか違うのかで議論があり、同じという説を契約責任説、違うという説を法定責任説と呼んでいた。かつて(少なくとも私が学生だったころ)は法定責任説が通説と言われていたが、近時は契約責任説の方が有力のようで、債権法の改正案は、契約責任説の立場で立法化されたと言われている。

 その上で、「瑕疵」という言葉がなくなり、これに変わって「不適合」という言葉が用いられるようになる。「不適合」と言う言葉を条文に則して定義すると、引き渡された目的物が、種類、品質、数量に関して契約内容に適合しないことをいうことになる。したがって、ここでいう「不適合」の内容は、伝統的な「瑕疵」がある場合に限らず、広く捉えることになってくる。従前の理解を前提とすると、やや面食らう改正となっているが、改正案が契約責任説を採用したことと無関係ではないであろう。しかも、売買の対象がものではなく権利の場合でもその権利が契約に適合しない場合は担保責任の規定が全面的に準用されることになるので、要は売買における不完全履行は、不特定物においても全て新たな担保責任の規定により処理されることになると理解して間違いはなさそうである。

 以上のようなことから、売主の担保責任については大幅な改正がなされることになる。

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