実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

債権法改正-売主の担保責任(5)

2015-09-17 11:29:44 | 債権各論
 担保責任には期間制限がある。買主が不適合を知ったときから1年内に不適合を通知しないと、損害賠償請求や解除も含めて担保責任に関する権利を失う。契約不適合の事実を通知すればよく、権利行使をする必要まではないようである。

 ところがなぜか、この期間制限は数量不足と権利が売買の対象であった場合の不適合の場合には適用されないという。ここに、「不適合」という要件でで統一した担保責任の効果の中でも唯一「不適合」の内容による違いが生じるところである。
 なぜこのような期間制限に区別を設けたかについて、物の本に書いてある理由は、数量不足は引渡をする売主にも比較的容易に判断できる事柄だからだといい、権利の際の不適合は売主が契約の趣旨に適合した権利を移転したという期待を抱くことは想定しがたいとか、短期間で契約不適合の判断が困難になるとも言い難いとかが、理由とされる。
 しかし、本当にそうだろうか。権利に関する不適合については、最終的には法律判断であり事後的判断になってしまうので、期間制限から外すことは分からないでもないが、数量不足はどうなのだろう。数量不足で想定される一場面としては、納品書等の帳票上は契約通り100個引き渡したことになっているが、後になって買主が90個しか引き渡されていないと主張し出す場面が想定されると思う。
 このような場合に本当に比較的容易に判断が付くと言えるだろうか。個人的には数量不足を期間制限から外したのはやや疑問なのだが……。

 なお、期間制限については、売主が悪意重過失であれば適用されない。そのような売主を保護する必要がないからである。

コメントを投稿