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実務家弁護士の法解釈のギモン

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会社分割と詐害行為取消権(3)

2011-12-05 13:11:47 | 会社法
 現物出資が詐害行為となるならば、そもそも本来の金銭出資、すなわち株式会社設立時あるいは新株発行時の株式引受人における通常の金銭出資自体の詐害行為性も問題としうるはずである。しかし、金銭出資の詐害行為取消権の可否ということになると、実はやや怪しい。

 どういうことかというと、現行会社法で説明すると、次のような条文関係となっているからである。
 持ち分会社に関しては、その設立において、社員がその債権者を害することを知って持ち分会社を設立すると、設立取消原因となる。これは会社法832条2号である。当該債権者が設立取消の訴えを提起できることになる。この規定は、詐害行為取消権を会社法的に整理し直した条文といわれる。会社法は、持分会社に関しては詐害的会社設立を一応意識した立法をしているのである。
 これに対し、株式会社においては、この種の規定を欠いている。そのため、株式会社の設立時においては、設立行為そのものの詐害行為性を問題として株式会社の設立を阻止することは不可能と解さざるを得ない。
 さらに、会社法51条では、設立時発行株式の引受に関して、原則として民法93条から96条までの規定による無効や取消の主張を認めない。
 項下条文構造との関連が大問題なのである。

 もし、こうした条文関係から、株式会社においては設立時あるいは新株発行時の金銭出資そのものの詐害行為取消を認めないとなると、現物出資の詐害行為取消を認める判例の方が間違っているという可能性もあり得ると思うのである。

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