実務家弁護士の法解釈のギモン

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再転相続人の熟慮期間(6)

2019-10-16 16:05:04 | 家族法
 参考までに考えると、916条が想定する再転相続ではなく、甲の相続につき乙の段階ですでに熟慮期間は経過してしまったものの、遺産分割等が何も行われないまま乙が死亡して丙が相続した場合はどうなるか。
 この場合は、乙の相続を承認した後は、もはやどうにもならないのだろうか。

 しかし、乙の相続につき、熟慮期間経過による法定単純承認の場合で、丙は甲の地位を承継することを知らなかったということは、当然に起こりうる。今回の判例の事案と、時間的なずれがあるに過ぎないだけの事案だからである。この場合どうするか。事実関係としては、乙の遺産はそこそこあるが、甲の債務を相続していたことにより、相続債務が甲・乙の総遺産を上回っていたような場合に問題となる。もし、丙がこのような事態を乙の相続における通常の熟慮期間中に知れば、乙の相続の放棄を選択していたであろう。しかし、熟慮期間中に甲の死亡を認識できなかった、あるいは判例の事案のように乙が甲の兄弟で、甲の子供が全員相続を放棄したことを丙が認識できなかった、という場合に、やや気の毒な気がする。
 このような事案では、もはや甲の相続を放棄することはかなわないが、乙の相続の熟慮期間を、丙が甲の地位も承継していたことを知ったときから起算すると解したいが、どうだろう。

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