現行法では、無効・取消の際の既履行債務の返還について規定が存在しない以上、一般原理原則で考えざるを得ず、その結果、不当利得返還請求の問題として処理される。
ところが、不当利得返還請求権の基本的な考えは、「現存利益」の返還である。そのため、極めて極端な例でいうと、例えば売買契約において既に履行が完了していたという事案の場合で売買契約が無効または取り消されると、売主は不当利得返還義務として売買代金相当額を返還すべきはずであるが、給付された売買代金を無駄に使用して既に残っていないというような事案の場合、はたして売主に「現存利益」があるのかないのかという問題が真剣な問題となってしまう。
しかし、買主の方が目的物を返還しなければならないのに売主は「現存利益」がないという理由で不当利得返還義務を免れるというのは、どう考えてもバランスが悪い。
他方で、意思表示の無効や取消ではなく、契約の解除の場合は、現行法でも原状回復義務が定められている。そのため、無効や取消のような問題は起きない。
そこで、解除の場合の原状回復義務を、無効・取消の場合にも導入しようという趣旨が、改正仮案の表向きの趣旨であろう。
ただし、理論的な問題はそれだけでは済まず、この改正仮案は、民法の基本原理に対して多きな影響を及ぼしていると考えざるを得ない。
ところが、不当利得返還請求権の基本的な考えは、「現存利益」の返還である。そのため、極めて極端な例でいうと、例えば売買契約において既に履行が完了していたという事案の場合で売買契約が無効または取り消されると、売主は不当利得返還義務として売買代金相当額を返還すべきはずであるが、給付された売買代金を無駄に使用して既に残っていないというような事案の場合、はたして売主に「現存利益」があるのかないのかという問題が真剣な問題となってしまう。
しかし、買主の方が目的物を返還しなければならないのに売主は「現存利益」がないという理由で不当利得返還義務を免れるというのは、どう考えてもバランスが悪い。
他方で、意思表示の無効や取消ではなく、契約の解除の場合は、現行法でも原状回復義務が定められている。そのため、無効や取消のような問題は起きない。
そこで、解除の場合の原状回復義務を、無効・取消の場合にも導入しようという趣旨が、改正仮案の表向きの趣旨であろう。
ただし、理論的な問題はそれだけでは済まず、この改正仮案は、民法の基本原理に対して多きな影響を及ぼしていると考えざるを得ない。