実務家弁護士の法解釈のギモン

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債権法改正-時効中断の概念整理(5)

2014-12-02 10:20:15 | 民法総則
 以上のように考えた場合の問題点が一つある。

 既に述べたように、訴え却下の場合の再度の裁判上の請求は、却下から6か月以内であれば完成猶予が継続することを当然の前提としているはずであり、一般的にいえば、時効の完成猶予期間中(特に尻尾の部分である6か月の猶予期間中)に別の時効完成猶予手続を取れば、時効の完成猶予は継続すると思われる。このことは、裁判上の請求のみならず、他の時効完成猶予事由でも同じである。
 ただし、催告後6か月以内における再度の催告だけは効力がないことを、改正仮案は規定している。再度の催告の効力がないことは、現行法上の判例であり、その判例を取り入れたといえる。

 しかし、改正仮案を前提とした場合に、訴え却下後6か月以内に催告をした場合の、当該催告の効力はどうなのだろう。現行法を前提に考えると、訴え却下後6ヶ月間時効中断が継続する根拠は、裁判上の催告という、催告の効力に基づく。そのため、現行法を前提に同様のことをしても、再度の催告となり時効中断効はないはずである。しかし、改正仮案では、時効完成猶予事由終了から6か月間までは事項が完成しないという改正仮案の規定ぶりからすると、この尻尾の6か月というのは当該事項完成猶予事由そのものの効力であり、催告の効力とは読めない。
 他方で、催告も他の時効完成猶予事由と並列的な規定ぶりとなっている。
 そうなると、明文で時効完成猶予の効力を否定した再度の催告の場合以外、例えば訴え却下後6ヶ月以内に催告をすれば、催告の効力としてさらに6か月延びることを認めるように読めてしまう。しかしそういうつもりではないであろう。

 以上の点は、実際に条文化された改正法案を見なければどうなるかよく分からない。結局、要綱の段階で想定していることと、要綱案の文言そのものががどのように解釈できるかは別問題であり、このことは、条文化の作業でも全く同じはずである。
 もし改正仮案が以上のように若干不備がありそうだとすると、その仮案を前提として条文化する際に、過不足のない条文化が可能なのかどうか、若干心配である。