株式買取請求権や価格決定の申立権と超過記載との関係について考えると、例えば1000株の株式を保有する株主がいたとして、仮に振替機関が1割の超過記載をしてしまったとした場合、1000株の株主はその1割に当たる100株分を会社に対して対抗できないということになる。この状態でもし、全部取得条項付種類株式の反対株主の買取請求や価格決定申立権が、同法147条1項の対抗できない権利であるとすると、株式買取請求権や価格決定の申立は900株分しか行使できないということになる。権利行使できない100株分については、超過記載をした振替機関に対して損害賠償請求をするということになろう。実際、立法者もこのように考えているのかもしれない。
しかし、まずそもそも、反対株主が買取請求をし、あるいは価格決定の申立をする場合、超過記載があろうとなかろうと、反対株主の有する株式の真の数が増減するわけではない。株式を売却すれば減じるが、その場合は、買取請求権も価格決定の申立権も消滅する。これは判例がいうとおりであるが、決して売却したわけではない。そうすると、超過記載が発生しなければ、反対株主の前所有株式について買取請求権や価格決定の申立権が認められたにもかかわらず、超過記載という、それ自体は株主にとっても会社にとっても全くの偶然の出来事でしかない事象が発生したために、買取請求権や価格決定の申立権が超過記載の割合だけ会社に対抗できなくなってしまうと、むしろ会社が得をするという関係が生じるのではないか。
そうだとすると、この場合に仮に振替機関が損害賠償義務を果たしたとしても、会社の利益の上に振替機関が損失を被ったということになり、不当利得関係が生じないのだろうか。もし、振替機関が会社に対して不当利得返還請求できるというならば、結局、超過記載があろうとなかろうと、はじめから株式買取請求権や価格決定の申立権を、反対株主の全所有株式について認めた方が手っ取り早い。
しかし、まずそもそも、反対株主が買取請求をし、あるいは価格決定の申立をする場合、超過記載があろうとなかろうと、反対株主の有する株式の真の数が増減するわけではない。株式を売却すれば減じるが、その場合は、買取請求権も価格決定の申立権も消滅する。これは判例がいうとおりであるが、決して売却したわけではない。そうすると、超過記載が発生しなければ、反対株主の前所有株式について買取請求権や価格決定の申立権が認められたにもかかわらず、超過記載という、それ自体は株主にとっても会社にとっても全くの偶然の出来事でしかない事象が発生したために、買取請求権や価格決定の申立権が超過記載の割合だけ会社に対抗できなくなってしまうと、むしろ会社が得をするという関係が生じるのではないか。
そうだとすると、この場合に仮に振替機関が損害賠償義務を果たしたとしても、会社の利益の上に振替機関が損失を被ったということになり、不当利得関係が生じないのだろうか。もし、振替機関が会社に対して不当利得返還請求できるというならば、結局、超過記載があろうとなかろうと、はじめから株式買取請求権や価格決定の申立権を、反対株主の全所有株式について認めた方が手っ取り早い。