Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Jade And Sarsaparilla

2008-05-05 | SSW
■Jade And Sarsaparilla / Jade And Sarsaparilla■

  Jade And Sarsaparilla が残したアルバムは、レズビアン・デュオの作品としては比較的知られている人気の作品です。 Jade そして Sarsaparilla という名前は架空のカップルのことを指しているのか、それともお互いが呼び合っていたニックネームなのかは分かりませんが、いずれにしても本名ではありません。 では誰かというと、ボーカルとピアノの Janet Hood とボーカルのみを担当する Linda Langford のふたり。 サウンドは Linda Langford がリードボーカルをとり、Janet Hood がハーモニーを付けるというスタイルが多いのですが、アルバムは 1975 年という時代にふさわしく、オーソドックスな SSW サウンドというよりは、モダン・ジャズのフィーリングやグルーヴ感が色濃く打ち出された内容となっています。 
  
  アルバムのハイライトは何と言っても「It’s Gonna Take A Miracle」です。 ピンと来た方はその通り、Laura Nyro で有名なあの楽曲を取り上げているのです。 しかも、この出来が素晴らしく、Jade Hood のしっとりしたピアノをバックに、二人のボーカルが自由奔放に舞う様は、Laura Nyro にも引けを取りません。 CD 化されていれば、プレイリストに並べておきたくなるナンバーです。
  とはいえ、この1曲だけにアルバムを集約してしまうことはさすがにできません。 アルバムには、優れた曲がまだまだあります。 なかでも柔軟に跳ねるリズムセクションをバックにした「She’s That Kind Of Woman」や、ふたりの息のあったミディアム 「I Need A Drink Of Water In My Mind」は親しみやすい仕上がりとなっています。 また、Janet Hood のピアノの弾き語り主体のミディアム「I Can’t Stay, I Can’t Go」は、じわじわと盛り上がりを見せ展開が光る名演です。  他には、ラグタイム風の「Gimme A Pigfoot」やブロードウェイ・ミュージカルの要素を感じさせる「Talkin’」など個性的な楽曲が並んでいます。 まとまりという点で難があるといえば、あるかもしれませんし、荒削りな感も否めません。 また、全 8 曲という点で物足りなさは残るのも事実です。 ですが、このアルバムを繰り返し聴くと、ニューヨークの裏通りや街に暮らす人々の息使いが感じられ、当時のアンダーグラウンド・ミュージックシーンの懐の深さが伝わってくるようです。 

  二人のなかで、ピアノの演奏力などで卓越した才能を感じさせた Janet Hood は何らかの形で音楽活動をしているのではないかと思い、ネットで調べてみました。 すると、予想通りミュージカル系の作曲家として活動していることが分かりました。 さすがに、オフ・ブロードウェイですが、「Elegies For Angels, Punks and Raging Queens」といった作品のコンポーザーとしてクレジットされています。 このミュージカルのプロデューサーは Bill Russell という人物なのですが、実はこの Jade And Sarsaparilla のアルバムでは、マネージャーとしてクレジットされています。 Bill Russell と Janet Hood は、他のサイトでも「長年のパートナー」という表現をされているので、二人の音楽的なつながりは 30 年以上ということになります。 
  一方の、Linda Langford は残念ながら行方をつかむことができませんでした。 ですが、少しうれしかったのも事実です。 というのも、このレコードに残された永遠の空気感を共有するには、すべてが解明されてしまってはいけないような気がするからです。



■Jade And Sarsaparilla / Jade And Sarsaparilla■

Side-1
She’s That Kind Of Woman
Gimme A Pigfoot
Daytime
Talkin’

Side-2
I Can’t Stay, I Can’t Go
It’s Gonna Take A Miracle
I Need A Drink Of Water In My Mind
I’d Like To Be

Executive Producer : Maureen Boyce
Musical Producer : Steve Tarshis

Recorded and Mixed at intermedia studios , boston

Linda Langford : vocals
Janet Hood : vocals , all piano
Richard Appleman : double bass , electric bass
Gene Roma : drums (I Can’t Stay, I Can’t Go), congas
Bob Gullotti : drums

Submaureen Records JS 723