Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Patti Dahlstrom

2007-08-04 | SSW
■Patti Dahlstrom / Patti Dahlstrom■

  久しぶりにアーティスト特集を行おうかと思っています。 そのミュージシャンは、Patti Dahlstrom です。 何故、彼女を選んだかというと、その主な理由は 3 つです。 まず第 1 に、アルバム 4 枚を残しながらもその後いっさいの音楽活動がないこと。 第 2 に、マイナーな SSW にしては多くのアルバムを残した割には、語られる機会がほとんど無いこと。 そして最後に全てのアルバム・楽曲が未だに CD 化されていないこと、です。
  そんな Patti Dahlstrom は、1972 年に UNI から今日ご紹介するデビュー作を発表。 翌年 1973 年から 1976 年にかけては、20th Century から 3 枚のアルバムを残しています。 彼女のことを初めて知ったのは 20 年ほど前ですが、そのときには 20th Century からの 3 枚だけだと思っていたので、このアルバムを入手したときには、幻のファーストを手にしたかのような気持ちになったのを覚えています。 同じような現象は、Andy Pratt の「Records Are Like Life」でもありましたが。

  さて、Patti Dahlstrom の作品を語る上で欠かせないのが、Severin Browne との関係と LA の豪華なバック・ミュージシャンによるセンスあふれる演奏です。 そんなことも 4 回に分けて触れていければと思います。

 まずは、このデビュー作を聴きなおしてみましょう。 Michael Omartian のピアノが目立つ「Wait Like A Lady」は、どうしても Carole King を意識せざるを得なかった 1972 年という時代を感じさせる曲。 女性 SSW としてはかなりキーが低いのも特徴です。 つづく「And I Never Did」は、ストリングスのみをバックにしたスロー・バラード。 静寂を切り裂くかのようにピアノの強いタッチが響くと Severin Brown 作曲の「Get Along , Handsome」の始まりです。 アルバムのなかでも特に印象的な出来栄えになっているこの曲は、初期の Patti Dahlstrom の代表曲です。 ボーカルも力強く粗野な感じです。 つづく「Comfortable」は、Robbie Leff という人物の作曲。 この曲もメロウでメランコリックなバラード。 中盤から後半にかけての Jim Horn のサックス・ソロが印象的です。 A 面ラストの「This Isn’t An Ordinary Love Song」も彼女のパッションが深く込められたミディアムです。 まだ若いというかラフな彼女のボーカル・スタイルが合わないという人はここでリタイヤという感じでしょうか。

  レコードを裏返します。 「Weddin’」は、ラグタイム風のアレンジによるテンション高めな曲。 この曲も Robbie Leff の作曲です。 つづく「I’m Letting Go」は、しっとり決めているつもりですが、どことなく野暮ったさが残るバラード。 Severin Browne の曲です。  「What If」は、日本のニューミュージック風のメロディとアレンジが妙になじむ曲で、B 面ではベストかもしれません。 力みのないボーカルは、セカンド・アルバムに通じるとも言えるでしょう。 「Ollabelle And Slim」は、元の Patti Dahlstrom のアルトが饒舌に歌いかける感じですが、それが聴き手にとっては重たすぎるのだよ、と言ってあげたくなります。 ラストの「Rider」は、さすがにラストに置かれているだけあって、淡々と渋みのあるサウンドが広がります。 大草原を駆け抜けるライダーのように、自身もアメリカの音楽シーンを席巻する夢をみていたことでしょう。 

  こうして久しぶりに通して聴いてみると、Patti Dahlstrom のボーカルがまだ未完成というか固いなあという印象です。 もっとマイルドに、もっとビターに表現力を増し、ソングライティングに磨きがかかればヒットの可能性も無くはないという気がします。 おそらく、20th Century のスタッフはそう考えたのでしょう。 
  逆に言うと、このアルバムが全く売れなかったことが理由で、UNI はこの 1 枚で契約を終了することになったのです。



■Patti Dahlstrom / Patti Dahlstrom■

Side-1
Wait Like A Lady
And I Never Did
Get Along , Handsome
Comfortable
This Isn’t An Ordinary Love Song

Side-2
Weddin’
I’m Letting Go
What If
Ollabelle And Slim
Rider

Produced and Arranged by Toxey French
String Quartet and Background voices arranged by Michael Omartian

Guitar / leader : Ben Benay
Piano : Michael Omartian , Jerry Peters
Drums ; Joel O’brien , Gene Pello , Toxey French
Bass : Jerry Scheff , Jack Conrad
Congas : King Errison
Tenor Sax : Jim Horn
Strings : concert master – Sid Sharp
Background Vocals : Tibor Zelig , Harry Hyams , Jesse Ehrlich

UNI 73127