Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Jim Grady

2008-05-12 | SSW
■Jim Grady / Everything Is As It Should Be■

  Jim Grady のセカンドは同時代のプリ AOR 的なサウンドで特にマイルドでメロウなテイストが好みの方は必聴のアルバムです。 ハリウッド録音だった前作から一転し、ニューヨークでレコーディングされ、レーベルも RCA へ移籍しています。 詳しいクレジットは無いのですが、1975 年当時のセッション・ミュージシャンの洗練された演奏をバックにしたと思われるこのアルバムのもつ優雅で気品あるたたずまいは、純白のスーツを身にまとった Jim Grady の姿とシンクロします。 裏ジャケットの顔は Freddie Mercury そっくりなのですが。

  このアルバムを聴きたかった目的は A-4 の「As Far As We Can Go」です。 この曲は Donny Gerrard の 1976 年の名盤のラストを飾る名バラードなのですが、僕が Jim Grady の名を初めて知ったのは、このアルバムでの作曲者クレジットだったのです。 あまりに切なく胸が締め付けられるような名曲の作曲者ということで、彼を探求する旅が始まったのです。 Donny Gerrard はソウル色の強いシンガーなのですが、ここで聴くことのできるオリジナルも遜色のない出来でした。 Jim Grady のボーカルも表現力豊かで高揚感がたまりません。 この曲は僕の琴線に触れまくりなのです。
  アルバムは他にも名曲が目白押しです。 冒頭の「Yesterday Today」はシルクのようなストリングスに包まれたノスタルジックな名曲。 Teddy Randazzo のアレンジセンスが遺憾なく発揮されています。 曲間がわからないようにメドレー的に始まる「Forward All My Letters」も可愛らしいメロディーとキャッチーなサビが耳に残る完成度の高い傑作。 そして、親しみやすさと個性では「Do It All Again」が郡を抜いているでしょう。言葉では表現できない愛情と優しさにあふれたナンバーです。 B 面では、アルバムタイトル曲の「Everything Is As It Should Be」がお薦め。 エレクトリック・シタールのイントロだけで 100 点をつけたくなります。 この曲はうねるようなメロディーとボーカルの力量によって盛り上がっていくバラードですが、中盤でのひねりのある展開には驚かされます。 個々に取り上げなかった曲もアルバムの統一感のなかに順応した仕上がりを見せていますので、特別に印象を悪くすることはありません。

  このアルバムに大きく貢献しているのは、やはりプロデュースとアレンジでクレジットされている Teddy Randazzo でしょう。 彼は 1950 年代からボーカリストとして活躍し、次第に職業作家・アレンジャーへと転進していった経歴の持ち主ですが、このアルバムで聴かれる洗練された大人の音楽は、彼の影響が強く感じられます。
  その Teddy Randazzo と Jim Grady を引き合わせたのは誰なのでしょうか。 僕はひそかに共同プロデューサーとしてクレジットされている Mike Berniker ではないかと推測しています。 Mike Berniker の名前でピンと来る人はほとんどいないと思うのですが、僕は彼のプロデュースしたレコードをもう 1 枚だけ持っていました。 それは、Susan Pillsbury です。 あの謎の歌姫と Jim Grady に意外な接点があったとは驚きです。 時代としては 2 年ほどのギャップがあるものの、もしかするとセッションで参加したミュージシャンがダブっている可能性がありますね。 レコードのクレジットは目を凝らして見てみるとこんな発見があり、その楽しさはちょっとした探検気分を味わせてくれます。
 
  最後に Jim Grady の話を少しだけ。 彼のアルバムはこの 2 枚だけだと思っていたのですが、実は 1979 年に 3 枚目のアルバムがあることが判明しました。 同じ RCA からリリースされたそのアルバムは「Touch Dancin’」というタイトルなのですが、どうやらタイトルから来る予感のとおりディスコ・サウンドへと変容してしまったようなのです。 とあるサイトで見つけたジャケット写真を見て衝撃を受けました。 時代に流されたとはいえ、直視できません



■Jim Grady / Everything Is As It Should Be■

Side-1
Yesterday Today
Forward All My Letters
Do It All Again
As Far As We Can Go
Post Card From Spain

Side-2
Right Or Wrong
A Man’s Kind Of Woman
It’s All Gone Wrong
Everything Is As It Should Be

Produced by Mike Berniker and Teddy Randazzo
Arranged by Teddy Randazzo
Vocal Arranged by Jim Grady
Recorded in RCA’s Studio D , New York City

RCA Victor APL1-1112