EU・トルコ間難民協定が発効してから早3週間半が経ちました。協定については既に「EU・トルコ難民協定本日(2016年3月20日)発効」で説明しましたのでここでは割愛します。
協定発効後最初の統計が4月16日に独雑誌シュピーゲルで公表されました。
下の折れ線グラフは一週間にギリシャの島々に到達した難民数の推移を表しています。昨年の12月は週当たり2万5千人(1日当たり平均約3500人)の難民がギリシャの島々に到着することもありましたが、3月に入って激減し、4月に新しく到着した難民は殆ど居ないと言っていいくらいになりました。一日あたり平均110-374人が来ています。UNHCRによれば記録開始以来最小レベルだそうです。
3月20日以降に来た難民はトータル6,480人で、うち326人がトルコへ送還されました。
トルコへ送還された難民数が少ないのは、囚人のように施設に閉じ込められていることに不満を持った難民たちがデモやハンガーストライクばかりか暴動まで起こす騒ぎがあったので、トルコ送還は見送られ、実際に送還が実施されたのはたったの二日だったことが原因です。
また、レスボス島などのいわゆる「ホットスポット」と呼ばれる難民臨時収容施設に閉じ込められた難民たちが、難民申請をしなければ即座にトルコに送還されることになると知って慌てて申請をしたので、申請手続きが終了するまでは取りあえずトルコに送還されることはありません。同時にEUから派遣されてくるはずの審査官らがまだ必要なだけ現地に着任していないため、難民申請手続きは簡易手続きにもかかわらず時間がかかっているという事情もあります。
これまでトルコに送還された326人の出身国の内訳は以下の通りです:
パキスタン 241人
アフガニスタン 42人
イラン 14人
その他 29人
この送還ペースが続けば、いかに新たに来る難民数が減ったとはいえ、ホットスポットに留まらざるを得ない難民数は増える一方になります。
協定ではトルコに送還された難民一人につきトルコからシリア難民を一人EUに引き渡されることになっていますが、実際にEUに引き渡されたシリア人はたったの79人です。うち37人がドイツ、31人がオランダ、11人がフィンランドに送られました。
以上、シュピーゲルの2016.04.16付けの記事「今週の統計グラフ:EU・トルコ難民協定はこう機能する」より
4月19日の最新ニュースによれば、ギリシャのホットスポットで難民申請をし、かつ25日以上滞在している難民は外出が許されることになったそうです。先日ローマ法王がギリシャ最大のホットスポットであるレスボス島の施設モリアを訪問し、難民の人道的扱いと待遇の改善を強く求めたことも影響して、規則の変更に至ったようです。
ギリシャ本土にはまだ5万3千人以上の難民が留まっています。マケドニアとの国境イドメニでは一時マケドニア軍対難民の抗争と化していました。アラビア語のビラで煽られた難民たちがマケドニアの国境警備に投石したり、有刺鉄線を破壊してマケドニア側に侵入を試みたりしましたが、催涙弾やゴム弾などの反撃を受けたりして、けが人が多数出ました。
ギリシャはピレウスとイドメニの難民キャンプの解体を開始しました。そこにいる難民たちはバスで近くの公営難民収容施設に移動させられています。今週末までには無秩序キャンプの解体が完了する予定だそうです。
参照記事:シュピーゲル、2016.04.18付けの記事「ピレウスとイドメニ:ギリシャは難民キャンプを解体」