徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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オーストリア:2017年国民議会選挙結果 強烈な右傾化

2017年10月20日 | 社会

 

 

今年のヨーロッパは選挙続きです。ドイツに続いてお隣のオーストリアでも10月15日に国民議会選挙が行われました。19日に郵便投票を含めた最終結果が出ましたのでここに簡単に報告します。

投票率は2013年より5.09%ポイント上昇して80%となり、その上昇率は史上最高だそうです。

一番の勝者はÖVPことオーストリア国民党で31.5%(2013年比+7.5)。

現与党のSPÖ(オーストリア社会党)は選挙翌日の結果ではFPÖ(オーストリア自由党)に負けていましたが、郵便投票分で若干挽回し、得票率26.9%の第2勢力となりました。

右翼政党であるFPÖは得票率26%(2013年比+5.5)で第三会派になりました。

その他議会入りしたのはNEOSおよびピルツ・リストの2党で、緑の党は4%の壁を超えられませんでした。ピルツ・リストというのは元緑の党議員で「対汚職戦士」として知られていたペーター・ピルツが独自に立ち上げた候補者リストのことです。

ÖVPはドイツのCDU/CSU(キリスト教民主・社会同盟)の姉妹政党で、今回の史上最年少の党首セバスティアン・クルツ(31)による右翼を抱き込むような選挙戦略が特にCSUから注目されていました。CSU党首であるホルスト・ゼーホーファーはかねてより「CDU/CSUより右の合法的政党はない」という意見の持ち主で、AfDに負けないように右翼受けする政策を掲げるべきだと主張してメルケル首相と衝突していました。ÖVPの大勝利はもはやゼーホーファーの党内地位を強めるものとはなり得ませんが、メルケル首相の立場を弱めることにはなりそうです。

ÖVPは右翼政党であるFPÖと連立政権を形成するものと見られ、クルツがすでにFPÖ党首ハインツ・クリスチアン・シュトラッヘと会談しています。両党は2000-2002年に連立政権を形成し過去があり、今回はその右翼連合政権の復活となります。

FPÖの得票率26%と比べればドイツの右翼政党AfD(ドイツのための選択肢)が得た13%弱の得票率がかわいく見えて来るものです。FPÖは基本的に反ヨーロッパの立場なので、首相候補のクルツが「オーストリアのEU離脱はない」と主張しているものの、EU政治において、特に難民政策においてはメルケル・ドイツに敵対するものと予想されています。

国民議会選挙の一番の争点は難民政策でした。党首討論を見ましたが、セバスティアン・クルツは他に問題がないかのようにどんなことも難民政策に結び付けて強引に議論を進めているように見受けられました。彼の若さとさわやかな外見による人気がÖVPの得票率の伸びに貢献したという部分もあるでしょうが、彼が煽った難民に対する不安も得票に繋がったことは否定できないでしょう。難民も殆どおらず、直接問題が起こっているとは考えられない地区で特にÖVPの得票率が上がったことがそのことを示しています。

参照記事:

Die Presse, 19. Oktober 2017, "Wahl: Das Endergebnis inklusive Wahlkarten(選挙:郵便投票を含む最終結果)"

Die Presse, 19. Oktober 2017, "Nationalratswahl 2017: Gesamtergebnis, Detailergebnisse, Wahlbeteiligung, Koalitionsrechner und Wählerstromanalyse(2017年国民議会選挙:総合結果、詳細結果、投票率、連立カルキュレータ、有権者動向分析)"


ドイツ:2017年連邦議会選挙結果