ZDFの世論調査ポリートバロメーターが5月13日に発表されましたので、以下に結果を私見による解説を加えつつご紹介いたします。
EU・トルコ難民協定
「トルコ人のビザ義務撤廃についてどう思いますか?」:
いい 34%
悪い 61%
「EU・トルコ難民協定は失敗に終わると思いますか?」:
はい 59%
いいえ 34%
「難民のトルコへの送還及びトルコからの難民引き取りに関するEU・トルコ協定をどう思いますか?」:
いい 25%
悪い 68%
分からない 7%
以上のようにEU・トルコ難民協定の評判は最悪です。トルコ人のビザ義務撤廃に関しては欧州委員会は賛意を表したものの、それを認める条件としてトルコの反テロ法改正を求めたため、エルドアン大統領が怒り心頭で、「いつからトルコは外国からこのような指示を受けるようになったのか」と演説し、協定そのものまで疑問視するようになりました。もちろんドイツ人の協定に対する疑念は4月8日の世論調査でも明らかなように、緊張関係が生ずる以前からのことです。
「難民のEU内均等配分が成立すると思いますか?」:
はい 11%
いいえ 87%
「難民受け入れ拒否国には罰金を科すという案をどう思いますか?」:
いい 81%
悪い 17%
難民政策
メルケル首相とゼーホーファー・バイエルン州首相の難民政策支持率比較:
全体
メルケルの政策 49%
ゼーホーファーの政策 39%
CDU/CSU支持者
メルケルの政策 69%
ゼーホーファーの政策 38%
AfD支持者
メルケルの政策 6%
ゼーホーファーの政策 81%
「ドイツはこれだけ多くの難民を受け入れることができますか?」:
はい 54%(前月比-2)
いいえ 42% (+2)
政党・政治家評価
「CDUとCSUは重要な政治問題で。。。」:
一致している 27%
分裂している 63%
「両党の関係は今後。。。」:
改善される 11%
悪化する 21%
変わらない 60%
「もしCSUが全国展開するとしたらどう思いますか?」:
全体
いい 42%
悪い 47%
政党別賛成割合
CDU/CSU 39%
SPD 34%
左翼政党 40%
緑の党 35%
FDP 62%
AfD 76%
CDU党首メルケル氏とCSU党首であるゼーホーファーは難民問題で特に対立を強めています。だからいっそのこと姉妹政党ではなくして、CSUがバイエルン州以外でも独立政党として議員候補を出すとすれば、CDUは票割れで都合が悪いでしょうが、東独のAfD支持者たちの一部はCSUに流れるかもしれません。CSUは伝統的に右寄り保守政党で、「自分たちより右の政党はない」と自負してきました。AfDの躍進によってその伝統が破られてしまったことに危機感を抱いています。こうした文脈の中でAfD票を取り込もうと全国展開の議論が出てきているのでしょう。
次は歴史的な低支持率が続いているSPD(社会民主党)についてです。
「SPDの支持率の低さの原因は主に。。。」:
全体
代表的な政治家 46%
政策内容 46%
分からない 8%
SPD支持者
代表的な政治家 44%
政策内容 48%
分からない 8%
次の質問は現連立政権党の党首たちが党員から支持されているかどうかについてです。
メルケル―CDU
はい 21%
いいえ 72%
分からない 7%
ゼーホーファー―CSU
はい 62%
いいえ 23%
分からない 15%
ガブリエル―SPD
はい 31%
いいえ 54%
分からない 15%
メルケル氏の党内支持率の低さは彼女の党首再選及び首相4期目が難しいことを示しています。ヘルムート・コール元CDU党首兼首相の長期支配記録を破ることは無理みたいですね。
政治家重要度ランキング(スケールは+5から-5まで):
- ヴィルフリート・クレッチュマン(バーデン・ヴュルッテンベルク州首相、緑の党)、2.2 (前月比-0.2)
- フランク・ヴァルター・シュタインマイアー(外相)、1.9(-0.3)
- ヴォルフガング・ショイブレ(内相)、1.6(変化なし)
- アンゲラ・メルケル(首相)、1.4(-0.4)
- マル・ドライアー(ラインラント・プファルツ州首相、SPD)、1.3(-0.3)
- グレゴル・ギジー(左翼政党)、0.9(+0.1)
- ウルズラ・フォン・デア・ライエン(防衛相)、0.6(-0.1)
- トーマス・ドメジエール(内相)、0.6(-0.4)
- ジーグマー・ガブリエル(経済・エネルギー相)、0.4(-0.3)
- ホルスト・ゼーホーファー(CSU党首・バイエルン州首相)、0.3(+0.1)
注意:上のランキング写真の矢印は前回(4月22日)との比較を表しており、上記のカッコ内に示した前月比は4月8日の値との比較です。
連邦議会選挙
「もし次の日曜日が議会選挙ならどの政党を選びますか」:
CDU/CSU(キリスト教民主同盟・キリスト教社会主義同盟) 33%(変化なし)
SPD(ドイツ社会民主党) 21% (-1)
Linke(左翼政党) 8%(変化なし)
Grüne(緑の党) 14%(変化なし)
FDP (自由民主党) 7%(変化なし)
AfD(ドイツのための選択肢) 13%(+1)
その他 4% (変化なし)
支持政党にはSPDが1%減、AfDが1%増以外、特に変化ありませんでした。
1998年10月以降の連邦議会選挙での投票先推移:
政権に対する満足度(スケールは+5から-5まで): 0.6(前月比-0.4、前回比+0.1)
経済問題
一般的な経済状況:
いい 57%
どちらとも言えない 36%
悪い 6%
自分の経済状況:
いい 58%
どちらとも言えない 34%
悪い 7%
ドイツの経済は今後…?:
よくなる 24%
変わらない 54%
悪くなる 19%
予想は予想ですから、当てになるわけではありませんが、「良くなる」とすでに好況の現状が「変わらない」と見る人を合わせて8割に上るということは、経済的に楽観的な見方が大半ということですね。
国外問題
「アメリカ大統領としてだれを希望しますか?」:
ヒラリー・クリントン 90%
ドナルド・トランプ 3%
分からない 7%
これを見ると、トランプ氏はドイツで随分と嫌われていますね。私も彼の民族主義、アメリカ中心主義、女性蔑視には相当嫌悪感を抱いておりますので、彼を支持するアメリカ大衆の見識を疑わざるを得ません。
「ギリシャが行わなければならない改革は・・・?」:
厳し過ぎる 25%
ちょうどよい 51%
不十分 15%
「債務免除についてどう思いますか?」:
正しい 34%
間違っている 61%
IMFやEU諸国の多くはギリシャの債務免除を求めてあるいは賛成していますが、ドイツは先の財相会議で断固反対しました。その硬い姿勢を国民の6割が支持している、ということですね。 債務免除になれば、大国ドイツの損失は大きく、結局ドイツ納税者が損失を被ることになるので、免除に対して否定的な態度になるのはやむをえないことです。
「EUはお得?」:
利益をもたらす 37%
一長一短 42%
不利益をもたらす 19%
ドイツはEUの要だということもあって、EUに対する反感はEU脱退を検討しているイギリス程強くはありませんが、今後の難民問題やギリシャ救済問題の方針いかんによっては反発が強くなることも考えられます。
この世論調査はマンハイム研究グループ「ヴァーレン(選挙)」によって行われました。インタヴューは偶然に選ばれた有権者1.263人に対して2016年5月10日から12日に電話で実施されました。
次の世論調査は2016年6月3日ZDFで発表されます。
参照記事: ZDFホイテ、2016.05.13の記事「ポリートバロメーター」