徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『The Murder on the Links(ゴルフ場殺人事件)』(HarperCollins)

2019年03月28日 | 書評ー小説:作者カ行

『The Murder on the Links(ゴルフ場殺人事件)』(1923)はポワロシリーズの第2作です。アーサー・ヘイスティングズがフランスから帰国するカレー行きの列車の中でシンデレラと名乗るアクロバット女優の少女と出会うところから始まります。帰英すると同居人の探偵エルキュール・ポワロのもとにフランスのMerlinvilleにあるお屋敷Villa Genevieve(ジュヌヴィエーヴ荘)に住む富豪Paul Renauld(ポール・ルノー)氏から助けを求める電報が届き、二人は即渡仏し、ジュヌヴィエーヴに向かいますが、時すでに遅く、ルノー氏はその日の早朝に殺害されてしまっていました。二人は警察の捜査に加わります。夫人は、二人組の暴漢が夫を拉致したと証言しますが、犯人たちは、わざわざ拉致した被害者を屋敷のすぐ隣にあるゴルフ場予定地で殺し、墓穴まで掘りながら死体を埋めずに放置するという不可解な行動をしていたことになるため、夫人の証言が真っ赤なウソだと見抜いたポアロは、同時に「彼女は、夫殺しの下手人ではない」とも結論付けます。一方のヘイスティングズは、事件の翌日、以前カレー行きの列車で同乗したシンデレラと殺人現場近で思わぬ再会を果たします。物見高い彼女に請われるまま死体の安置場所を案内しますが、後でその場に保管されていた凶器の短剣が紛失していることが発覚し、さらにその翌日、紛失したはずの短剣を胸に突き立てられた浮浪者の死体が、敷地内の物置小屋から見つかります。その死体にはルノー氏のものと思われる服が着せられており、死亡時刻はルノー氏の死よりも前、48時間以上前と推定されたため、事件は複雑な様相を呈します。

たびたびルノー氏のもとを訪ね、金銭を受け取っていたと思われるDaubreuil(ドブルーユ)夫人がルノー氏殺害の夜にジュヌヴィエーヴ荘を訪ねたかどうか使用人の意見は分かれ、ルノー氏と彼女の関係がいわゆる愛人関係なのかどうかも不明。ドブルーユ夫人の娘Marthe(マルト)は素晴らしい美貌の持ち主で、ルノー氏の息子ジャックがマルトと結婚すると父に伝えると、猛反対されて大げんかになります。ジャックは父親ドブルーユ夫人の関係については何も知らなかったようです。結局このポール・ルノーとドブルーユ夫人の過去の繋がりが事件を解くカギとなりますが、重層的な構造で複数の理論が成り立つため、紐解くのは困難を極め、決定的な証拠を欠く中で、ジャックが父殺しのかどでポワロに対抗心を燃やすジロー・パリ警察警部によって逮捕・起訴されます。この後ストーリーは2転して意外な真犯人にようやく辿り着きますが、自白して自殺とかいうのではなく新たな殺人に失敗して死んでしまうところが凄惨な感じです。

その凄惨な印象を和らげるかのように二つの恋が成就します。ヘイスティングズはシリーズ第1作で女性にプロポーズして失笑を買っており、今回も美貌のマルトを女神のように讃え、一方でシンデレラに対して鼻の下を伸ばしているという節操のなさなので、彼はずっとこのまま女性に振られ続ける三枚目の役割なのかと思っていましたが、最後にシンデレラとうまくいって、ちょっと意外でした。

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