WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『騎士団長殺し』(著者:村上 春樹)

2017-06-11 16:56:25 | 本と雑誌

東京は梅雨入り。毎年この時期になると食欲が落ちる恒例で、体重が42キロを切ってしまった。暑かったので久しぶりにプールに行き、気持ちよく全身の筋肉を使って黙々とひたすら泳ぎ、きれいにターンする練習をしばらくして水から上がると、来た、軽い立ちくらみ。体重が減ると必ず貧血がくる。嫌だなあ。

夕方、近くのバーで涼しい風に吹かれながらビールを飲み、店内にかかっているジャズを聴きながら読書。長年のファンゆえに行きつけのお店の嗜好とかライフスタイルがそういうところに落ち着いてしまうのか、この組み合わせ、村上春樹っぽい。最新長編は厚みのあるハードカバー2冊を、自宅での読書タイムで少しずつ読んでいたら最後までだいぶ時間がかかってしまった。私はこの人の言葉のえらび方と文の骨格が本当に好きだ。目で追うフレーズがとても美しくて簡単に離したくなく、今いる箇所から他のところへ飛んだり戻ったりして、まるで魚の好きな人が頭から尾までしゃぶりながら食べるみたいに味わい尽くす。ああ、満足。

これだけ長い間、内面の奥深いところから絞るようにして濃い小説を書き続けながら、ぜんぜん古くさくならない作家って稀有。それに今回はまた、満を持して(?)の一人称回帰である。視点の単一性を避けて奥行と幅を広げるために、一人称の語り手をふたり設定したり三人称にトライした過去の作品から、これは堂々「私」がひとりで語る、奔流のような壮大な感情の叙事詩。さらに本に出てくる食べもの(焼きたてのトーストとかさばいたばかりの新鮮なお魚の刺身とか)がおいしそうで、ありがたいことに食欲が復活してきた。