WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『失われた時を求めて〈11〉 第六篇』(著者:マルセル・プルースト 訳:鈴木 道彦)

2013-11-16 20:54:26 | 本と雑誌
失われた時を求めて 11 第六篇 逃げ去る女 (集英社ヘリテージシリーズ)失われた時を求めて 11 第六篇 逃げ去る女 (集英社ヘリテージシリーズ)
価格:¥ 1,200(税込)
発売日:2007-01-19


グールドが亡くなったときのとても古い新聞記事の切り抜きが、実家のLPレコードに入っていて、なつかしく読んだ。大人になってからゴールドベルク変奏曲とブラームスのIntermezziがきっかけで、また日常的に聴くようになった。グレン・グールドの弾くピアノはどうしてこんなに素敵なんだろうと思う。ロマンティックに甘くてやわらかくて、それでいて音符一つの響きはむしろ硬くて、音と音とのあいだの間隔が神様のように絶妙なするどさとセンスで。



グールドと感受性の面でちょっと似ている、サン=サーンスのヴァイオリンソナタが「失われた時」ほぼ全編に繰り返す重要なモチーフ、ヴァントゥイユの小節のモデル。11巻は、パリの部屋の壁をコルクで貼って音を一切遮断したプルーストが頭脳と心のなかだけを探って華やかな言葉の花束を描きこんだ、信じがたい悲しみの世界。やがて愛よりもはるかに強い忘却がやってきて、有名な挿話、ヴェネチアで死んだはずの最愛の恋人からの電報が来たときには、それを「自分とは関係ないもの」として配達夫に返そうとするほど気持ちは冷めている。



それにしても最初はすぐ読めるだろうと思ったのに、なかなか読み終わるまで時間がかかる。