細野豪志ブログ

衆議院議員 細野豪志の活動報告です

小泉政治を振り返る

2006-08-30 22:29:11 | 沈思黙考
このところ、小泉政権の評価を聞かれることが多くなりました。今日は、書評を交えながら、小泉政権を振り返ります。

この間、巷では多くの小泉本が流布した中で、私の小泉評と重なる部分が多いのが、某紙政治部の「外交を喧嘩にした男」です。日米同盟の記述など、礼賛が過ぎる感がなきにしもあらずですが、小泉外交の演出の巧みさと、功罪(日米同盟とアジア外交)のコントラストは的確に表現されていました。

総理の再訪朝の発表は2004年5月14日。同じ日に小泉総理の年金未加入が公表されました。ジェンキンス氏と曽我さんの再会は、参議院選挙の投票日の2日前でした。そうした演出がなされる度に、演出を疑問視する我々の声は、外交の成果と映像の力にかき消されました。

そうした小泉外交が行われた経緯が、この本には詳細に書かれています。社説を読むと民主党の主張と一致しないことの多い某紙ですが、周辺取材の徹底ぶりは、新聞社の政治ものとして評価されて良いと思います。政治家が回顧本を出すことの少ない我が国において、事実を書き残すことは、メディアの役割の一つかも知れません。


「5年で駄目ならクビをはねろ」伊坂幸太郎氏が書いた小説「魔王」に出てくる政治家・犬養の言葉です。ファシズム、テロ、そしてそれを支えるメディア政治がこの小説のテーマです。この小説のモチーフが、覚悟を口にした小泉総理と今の時代であることは間違いないでしょう。伊坂氏は私と同い年。彼の時代に対する洞察力には感心しました。

靖国を前後して起こった加藤紘一氏の自宅への放火。当初は変人の犯行と切り捨てていましたが、先日、自宅にあった「魔王」が目が留まって、認識を改めました。今の日本社会には、嫌な雰囲気が漂っています。

「いつ参拝しても批判があるので、8月15日に参拝することにした」とは、参拝直後の小泉総理の一言です。政治家に、社会の雰囲気を変える力は無いのかも知れません。ただ、今本当に必要なのは、時代に煽られることなく、静かに国民に語りかける政治家ではないかと感じています。