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成瀬巳喜男監督『銀座化粧』その4

2015-10-26 06:12:00 | ノンジャンル
 今日の朝日新聞の朝刊で、モーリン・オハラさんの訃報が報じられていました。ネヴァダ州の核実験により放射線を浴びて早くガンで亡くなったジョン・ウェインを筆頭に、ここに来てついにジョン・フォード組の方々がすべてこの世を去ったことになったようです。

 さて、また昨日の続きです。
 旅館。ユキ「これから新橋演舞場に行きましょうか。あら、もううちに帰りたいんですか?」「ええ。東京は苦手です。銀座はなおさら刺激が強すぎます。目に見える星は6千万、望遠鏡だと10億。見えない星の方が多いのです」「銀座もそうですわ。目に見えない星こそ、取り上げてほしいですわ。ちょっと理屈っぽくなってしまいましたわね。ところで石川さん、子供はお好き?」「ええ、子供は大好きです」「では、なぜ奥さんをお持ちでないの?」「機会に恵まれなかっただけです」「機会は自分でお作りにならなけりゃ。前に結婚したことがある女はどうお思いになる?」「そういうのは全く気になりません」「本当?」。そこにショウコが来る。ユキ、ショウコと廊下に出る。ショウコ「ハルオちゃんが見えないの」ユキ「すぐ帰るわ。じゃあ、あの人と演舞場に行ってあげて。何を訊かれても知らぬ存ぜぬで通せばいいから」。部屋に戻り、石川に「私の妹のショウコです。演舞場にはこの子がご一緒します」。ユキは部屋を出る。ショウコに微笑みかける石川。恥じらうショウコ。
 ユキ家に着き、師匠やその夫に会ったあと、ハルオを探しに出る。救急車の音。太鼓を叩く男に付いていく子供たち。紙芝居。ハルオがボール遊びをしていた公園はすでに無人。ラーメン屋。方々を探し回ってきたユキは帰ってきて、路地で座り込む。占いの結果を伝える師匠。そこへ「川に子供が落ちたらしいぞ!」の声。
 夕方。「助かったが、よその子だった」と言った師匠の夫は「警察に届けよう。ユキさんは少し休んだら」とユキに話しかける。そこへ「ハル坊が帰ってきたぞ」の声。ハルオ「魚釣りに行っていたんだ。こんなに釣れたんだよ」。ユキ、ハルオの前にしゃがんで、「一体どこに行っていたの? 随分心配したじゃない」ハルオ「~船に乗せてもらったんだ」「何で一言言っていかないの? ほんとに悪い子ね」とハルオの体を何度もぶつ。ハルオ、泣き出す。師匠「よかったわね」とユキを慰める。ハルオが去ったあと、ユキ涙する。
 旅館の部屋。石川、ギリシャ神話の星座の話をしている。星座の名前を聞いて、ショウコ「知りません。存じません」「では北斗七星は?」「それなら知っていますわ」「やっと知っていると言いましたね」「え?」「これまでは知りません、存じませんばかりでしたよ」。2人で笑う。「僕の国へ一緒に行きませんか?」「ええ、連れていってくださいな。でもダメですわ」「なぜ?」「ご迷惑になると思います」「そんなことありません。僕の方こそご迷惑なのではないかと」。ショウコ、窓に腰かけ、「あれでしょ? 北斗七星」「そうですね」。光輝く北斗七星。
 戸締りをして部屋に入るユキ。割れたガラスを直してある窓。ハルオ、寝る。ユキ、裁縫。
 訪ねてきたシズエとユキは歩きながら話す。「石川は今朝一番で発ったわ。それでね、若い女が上野まで送りに来たらしいわよ」。がっかりするユキ。シズエ「分かんないわね、男って」。ユキ、「夕べ、あまり眠れなかったの」と言ってシズエと別れ、お菓子を取り出して食べながら、川面を見つめる。
 部屋で鼻歌を歌うショウコ。帰ってきたユキはプンプンに怒っている。「ショウコちゃん、昨夜どうしたの?」「石川さんが泊まっていけとおっしゃって」「あなたを見損なったわ」「でも泊めていただいただけよ」「信じられると思ってるの?」「石川さんはそんな人じゃない。あんなにいい方をだましてるのが辛くなって何もかもしゃべってしまったの。ごめんなさい」「私に謝ることないわ。石川さんを好きになったんじゃない? いい人ですものね」「近いうちに迎えに来てくれるって」「そう、正直なところ、驚いたわ。まじめに考えてね。私もショウコちゃんが幸せになれれば、うれしいのよ」。ショウコ、泣く。「バカね。今ごろ汽車はどこら辺でしょう」と言って、ユキはタバコを吸う。
 建設現場で作業を見るハルオ。隣の大人に「おじちゃん、今何時?」。ユキの住む家。ユキは藤村に「師匠の旦那は藤村(とうそん)の詩集をあなたのものと勘違いしたのよ。商売うまくいってるの? しっかり頼みますよ。私も心を入れ替えて働くわ」藤村「私も子供が来年中学生だ。頑張るよ。ではさよなら」。
 路上のハルオ。藤村近づく。「藤村のおじさん?」「坊や、(お小遣いをあげようと、胸ポケットを探り)またな」。
 ハルオ「お母ちゃん、行くの?」ユキ「いい子だったら今度の日曜、動物園にね」。2人、指切り。ハルオ、『春が来た』を歌う。ユキが橋を渡り、映画は終わる。
 
 縦の構図の多用、必要最低限のカット割りと的確なショット、カメラの巧みな動き、思い切った省略、素晴らしい演出、真横からのショットなどのハッとするような画面。これらのように『映画』の美点が多く見られました。成瀬監督の知られざる傑作の1つです。

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成瀬巳喜男監督『銀座化粧』その3

2015-10-25 06:36:00 | ノンジャンル
 一昨日、WOWOWで放映されたダリル・ホール&ジョン・オーツの日本武道館ライヴを見ましたが、彼らのヒット曲が思っていたより多いことに驚きました。今聞いても少しも古びていませんし、その音楽性の高さを再認識した次第です。それにしても1時間余りの公演で、装置もいかにもシンプル、そしてラストの『キッス・オン・マイ・リスト』と『プライベイト・アイズ』での気を抜いたダリルの歌い方。日本は彼らにとって格好の“お客さん”になっているのではないかな、とも思いました。

 さて、また昨日の続きです。
 朝。シズエがユキの部屋を訪ねてくると、師匠の夫はユキにもらった戸の自慢をし、シズエにも勧める。シズエは菅野がカンカンだったことをユキに伝えると、ユキは「20万を都合するのはもう止めた」と言う。シズエは「疎開していた時に知り合い、プラトニックな思いを抱いていた相手、大地主の次男である石川キョウスケが上京してくる。石川には自分が戦争未亡人ということになっていて、嫉妬深い葛西にも知らせていないので、石川に東京見物をさせてやってほしい」とユキに頼む。
 上京してきた石川にシズエは「こちらは女子大学を出て、今はピアノを教えてらっしゃる未亡人のユキさん。私は婦人民主クラブで抜けられない」と言う。あわてたユキに対し、シズエは2日だけだから、知らぬ存ぜぬでうまくやってくれと言う。
 東京見物をする石川とユキ。建設現場で建設予定の景色を覗き窓で見る。
 夜の銀座。酒は全然飲めないと石川。ユキの勤めるバー『ベラミー』の看板を見て、「ベラミーという名を聞いたことがある」と石川が言い、ユキはあわてるが、石川は「モーパッサンの小説にあった。お好きですか?」と言い、ユキは「はあ」と答える。ギターを持った流しの男がすれ違いざまにユキに挨拶すると、石川は「音楽家とお知り合いですか?」と言い、またユキは答えを濁し、「こんなとこ、つまりませんから」と銀座を離れようとする。しかし、先日の無銭飲食の男がユキを見て踵を返すのと発見し、ユキは思わず「ドロボー!」と叫んでしまい、石川は男を捕まえる。男は謝り、返すつもりだったと言って、金を取り出すが、石川がユキに「他に盗まれたものはありませんか?」と言うと、男は怒り出し、反論しようとする。ユキは自分の身分がばれそうになり、石川を連れて急いでその場を離れようとするが、男は2人を追う。やがて人込みに2人が消えると、興奮した男は「ドロボー!」と叫ぶ。
 旅館。風呂上りの石川は、「こんなところにいると神経衰弱になる」と言い、シズエの言動を不思議がり、「何か隠しているんじゃないでしょうか? ご存じないですか?」とユキに訊く。ユキは話題を変えて、窓に腰かけ、「月がきれい」と言うと、石川は「星を知ってますか?」と訊く。「北斗七星なら」「我は北斗七星にして、千歳ゆるがぬものなるを~。詩は好きですか?」「好きですが、この10年は忙しくてダメですわ」「忙しい時ほど詩が必要です」。
 ハルオに詩を読むショウコと、本を音読するハルオ。ユキが帰ってきて、ショウコに「ハルオは寝た?」と訊くと、ハルオが寝たふりをして「寝たよ」と答える。ハルオは明日のことを訊き「明日は動物園か。すげえなあ」と言う。ショウコはユキに「ママ、お金の都合ついたみたいよ」と言うと、ユキ「女給なんかいつまでも続けるもんじゃないわ。早くいい人を見つけて結婚しなさい」「理想通りの男の人なんているの?」「いるわ、案外なところに。見つけたら何もかも捧げて生きるの」「今夜の姉さん、とても張り切っているのね」「あなた、星知ってる? アンドロメダとかカシオペアとか」「私は北斗七星しか」「我は北斗市衛生にして、千歳ゆるがぬものを~。北斗七星みたいにしっかりした男を見つけなさい」「お姉さん、思い出し笑いなんかして、気持ち悪いわ」。
 ラッパを吹く少年。ハルオは路地で泣いている。慰めるショウコに「お母ちゃんは嘘ついた」と言うハルオ。「これあげるから、遊んでらっしゃい」とショウコ。
 「東京を気に入られたようで。今日はどちらに行きましょうか?」とユキ。「天文台には行きたいですね。明日には帰らなきゃならないので」と石川。「随分お忙しいのね」「今朝電報がありまして」。
 ボールを投げ、他の子と公園で遊ぶハルオ。1人の子の母親が「ご飯よ」と呼びに来ると、皆帰り、ハルオは1人残される。
 ユキ「動物園は子供連れが多いですね」石川「子供は喜ぶでしょうな」。石川は喧嘩に負けて地面に伏せて泣いている子供を立たせてやる。
 師匠の夫、ハルオに「坊や、今日は学校ないんだね?」「うん」(また明日へ続きます……)

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成瀬巳喜男監督『銀座化粧』その2

2015-10-24 05:17:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 橋の上から川を見るハルオを仰角で。ポンポン船を俯瞰で。橋を反対側に渡り、柵に上り、ポンポン船が来るのを待つハルオのショット。「ハル坊」。バストで左手前にハルオ、右奥に藤村。「何見てるんだい?」「あの船、お台場まで出るんだって」「あー、網打ちに行くんだね。行ったことあるかい」「ううん」「そうか、近いうちにオジサン連れて行ってやろう」。真横から2人。「本当?」「ああ、本当だよ」と2人笑い、船見る。左手前にハルオ、右奥に藤村のフルショット。藤村、ポケットから財布を取り出し、「ああ、いけねえ。坊やにお小遣いやろうと思ったんだが」。右手前に藤村、左奥にハルオのバストショット。「買えばお釣りくれるよ」。その逆のショット。「あ、ハハハハ。そうか、ハハハ。買えばお釣りくれるか。あ、なるほど。ハハハ」。
 (以下、ショットの説明は省きます。)師匠「お前でももうけること、あるのかねえ」。夫、頭を指して「ここだよ。この問題だよ」と言い、札を数える。「何さ、今まで損ばかりしてさ」。
 バー。歌を歌う少女。ぜんべい売りの少年たち。客の1人が女給のショウコ(香川京子)を映画に誘うが、チーママのユキが断らせる。金を払うはずの友達が来ないと無銭飲食をした男に付いていったユキだったが、飲み屋でその友達を待っている間に、男は逃げてしまう。
 翌日、部屋の掃除をするユキとショウコ。ショウコは病気の父を抱えていることを話す。金持ちとの縁談があるとショウコが言うと、男はケダモノだとユキは言う。同僚のトシコは子供もあるし、夫も働いているので、一番幸せかも、と2人で話すが、「もうちょっと金さえあれば」とユキが言う。いい人を探すのは難しいと話す2人。ユキは、景気がいいらしいシズエを訪れ、金を借りてくるとショウコに言う。
 道を歩くユキ。紙芝居。チンドン屋。シズエの家。シズエの旦那の葛西は「藤村も以前は景気がよかったのに、今の落ちぶれようはひどい。世の中はもっとうまく立ち回らなきゃ」と言うが、ユキは「あの人、悪いことはできないから」と藤村を擁護する。葛西が外出すると、シズエは「葛西とはうまくやってるが、もちろん、好きな訳じゃないわ。世話になってるだけ。結婚できなけりゃ、まずお金」と言い、ユキに菅野を旦那にする話を勧める。ユキは藤村の奥さんとお子さん、ハルオのことを考えて、藤村との縁を切ったと言う。
 雨。ハルオは学校からいろんな人の傘づたいに帰ってくる。
 師匠の生徒(田中春男)はすぐ気が散り、他の生徒の笑いを誘う。
 雨の中、夜にハルオはそば屋に1人で来て、かけそばを注文する。
 バー。客はいない。女給たちはユキにママがバーを売りに出すつもりであることを知らせる。やり方が古いと言う若い女給たち。花売りの少女は帰り、傘を差した男(田中春男)が雨の中に立ちつくしている。喫茶店。子供を他の女に託し、女が出ていく。ママ、ユキに「客引っ張りの女よ」ユキ「人ごとじゃないわ」「20万、都合してくれる人、いないかしら?」「ちょっと当たってみるわ」。
 電話ボックスで菅野にユキが電話すると、もう会社を出たとの答え。ボックスを出ると、菅野(東野英治郎)が現れる。菅野「いいところで金のかからないところがある」と、ユキを自分の会社の倉庫に連れていく。「君の面倒を見る。これは手付だ」と言ってユキの体に手を回そうとする菅野。「いりませんわ」と言って、体を引くユキ。落ちたお札を手で集め、「天下の通宝なのに」と言う菅野。「見損なわないで」とユキ。菅野はまたユキを無理やり抱こうとするが、ユキは逃げ出す。
 自分の部屋で朗読をしていたハルオに師匠の夫が声をかけ、風呂に誘う。
 バー。男(田中春男)は、先日酔っぱらって下手な長唄を歌ったことを詫びに来たと言うが、流しに促されて、また下手な長唄を歌いだす。タバコを吸い、やり過ごそうとするユキら女給。男が女を探しに来て、長唄を歌う男に「おかしな声出しやがって。ヌカミソが腐る」と言い、長唄を歌っていた男は気分を害する。男がユキの肩に手を伸ばし、それを軽蔑した目で見つめるユキ。
 夜。ハルオの部屋。ハルオは師匠の夫に「正直でまじめで元気なら、何の仕事をしていても卑しくないと母ちゃんが言ってた。僕は科学者になってノーベル賞を取りたいんだ」と言うと、夫は「おじさんは“のーめる”賞も取れなかったな」と言って、ハルオを笑わす。机の上の『藤村詩集』を手に取り、「藤村さんは詩を書いてたのか」と言って、その本を借りていく師匠の夫。(また明日へ続きます……)

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成瀬巳喜男監督『銀座化粧』その1

2015-10-23 04:52:00 | ノンジャンル
 WOWOWシネマで、成瀬巳喜男監督、石井輝男助監督の’51年作品『銀座化粧』を見ました。
 タイトル。服部時計店を仰角で撮るショット。地下鉄の出入り口と大勢の人波。時計店の中からのショットで、セーターを着た少年が現れる。少年の斜め後ろからのショットで、少年、左上を見て「おじちゃん、今何時?」。少年が手前のショットで、サラリーマン、腕時計を見て、それを何度か振り、店のショーウインドーを見る。ショーウインドーをパン。走り出す少年をパン。少し俯瞰で向こうへ道を走る少年。縦の構図で奥から走って来る少年。三味線の稽古の音が聞こえる家を斜めから撮ったショット。縦の構図で、少年が走るのを止め、2階を見るショット。部屋の中からのショットで、少年が戸を開ける。少年の視点から、くたびれた男物の革靴が一対乱雑に並んでいる。座って稽古をしている師匠と生徒を斜めからフルショット。「ハルオちゃんかい?」と師匠。縦の構図で、少年、戸を閉め、手前の路地を走り、角を曲がると、パンしたカメラが上昇し、2階を映し、鏡に向かっている女(田中絹代)の顔。「ハルオですか?」。縦の構図で奥から男(三島雅夫)が現れる。「誰もいないよ」「そう?」。男、腰かける。左手前に女、右奥に男のショット。「えーと、どこまで話したかなあ?」「紹介状をもらってどうとか」「そう、行ったんだ。ところが世の中広いようで狭いね。その支配人ってのが君、知らないかなあ。ナルトギって男。よく昔俺が飲みに連れてった奴だ」「顔見りゃ知ってるかもしれないけど」「ああ、知ってるよ。いやー、って訳でね。さっそく外交の方、やっていただきましょうってことになってね」。男、立ち、畳に座る。「そう、それは良かったわねえ」。男手前で奥に鏡に向かう女のショット。「うん? うーん、まあ俺もこの辺で何とか恰好つけないことにゃ、お前さんにも迷惑かけっぱなしだし」「私のことなんか。(男、マッチ探す。)あ、あってよ。(女、マッチを男に渡す。)ああ、それよりも奥さんと坊やがかわいそう」「女房はいいが、子供だけはなあ」。鏡に映った女。「お互い様。子供のために苦労するわね。そう言えばハルオ、どこへ行ったのかしら」。カメラ、隣の部屋から。女、立ち、ふすまの陰に消える。「うん、(マッチ消し、タバコ吸う)サチコさん、元気?」「マダム? うん、とても元気よ」「うん、やり手だからなあ。よろしく言ってくれ。近いうちに伺いますからって」「何売りつけんの? 今度は」「やだなあ、さっき話したろ?(風呂敷を開く)~堂のベル、見本を置いてくよ」「大丈夫? 本当に~なるの?」「う~ん、絶対。太鼓判を押すよ」。すふまの陰から女、現れる。「藤村さんの絶対と太鼓判は信用できないから。うふふ、帯締めてよ」「うん」。女の背後から男が帯締めるのを映すバストショット。「どう? もっときつく?」「結構よ」。藤村、女の肩を触る。女は振り向き、警戒の目をして、体を離す。藤村、目を伏せる。外から2人を写すショット。「さあ、そろそろ退散するかな」「(帯の紐を結びながら)よかったらお茶漬けで一杯食べていったらいかが?」「そうもしてられない。明日は仕事始めだから」「しっかり頼みますよ」「ああ」。三味線の師匠と生徒を映すショット。生徒「お願いします」と礼をする。稽古が始まる音。階段を降りる藤村を送る女。室内から玄関を映すショット。「靴も新調しようと思ってるんだが、いつも思ってるだけだ」「じゃあ、~様」。振り向く藤村。「な~に? 忘れ物?」。藤村のバストショット。「すまないけど、いくらかない?」。女のバストショット。仕方がないわね、という表情で「いくら?」。藤村のバストショット。「三百円でも二百円でも。(女に近づき)外交に回る足代だけでいいんだ」。女のバストショット。「そんなお金、向こうでくれないの?」。藤村のバストショット。「くれることはくれるんだけど、後で清算してからなんだ」。女のバストショット。帯から財布を出して「これしかないわ。(男に近づき)これで勘弁して」。女の背後からのショット。「あ、悪いなあ、度々。(三味線の師匠の方を真顔でチラッと見て)じゃあ」。女のバストショット。戸を開ける音。仕方がないわねえ、という表情で後ろを振り向くと、左から師匠現れる。「おユキさん、(ユキ、左を振り向く。)~これ?」と男を指すポーズ。「ええ」「しっかりしなくちゃダメよ。(ユキ、下を向く)いくら昔世話になったことがあるからって、今じゃ別にどうってことないんでしょ?」「ええ。そりゃ(笑う)」「甲斐性のない男って一番始末が悪いわねえ。うちの人もその~なんだけど」「また今日も競輪?」「(うなずき)毎日ですからね。あきれかえっちまうよ。今日こそ、とっちめてやらなくちゃ」「まあ」。2人、笑う。(明日へ続きます……)

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三池祟史監督『神さまの言うとおり』その2

2015-10-19 06:46:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 “バイオハザード”をやるシュン。母「物置の片づけやった?」「明日やるよ」「1カ月もそのまま」「明日やるって」。ゲームオーバー。チャンネルをニュースに変えると「建物の前の無人の車、突然爆発」と報じている。「歩行者16人死亡、日本人の被害者はまだ確認されず。反政府グループの犯行か?」。
 登校する学生たち。「おはよう、シュン」と声をかけた金髪の女子は、ベルを鳴らしながら自転車に乗っている。メガネ「お前さあ、何で彼女と付き合わない訳?」「家が隣同士ってさ、ガキの頃からいつも一緒にいたから、今さらそういう感じでもない。(笑顔で自転車をこぐ女子。)あるでしょ? そういうの」「彼女、もてるぞう。いつまでもそばにいるとは限らないぞ」「はい、はい、まあそのうちにねえ」。
 階段をメガネが上り、シュンも上がろうとして振り返ると、男子を殴っている男子。横たわっている無数の男子。殴っている男子はシュンと目が合うが、また横たわってる男子の方を見て蹴り飛ばす。メガネ「あいつら、楽しいのかねえ」。ドスッという音。
 世界史の授業中。先生「高畑?」「は、はい」「もういいよ。寝てて」。笑い。「はーい、ここテストに出るぞ」。黒板に血しぶき。床に無数の赤いビー玉。驚く生徒たち。先生の首にダルマが乗っていて、机の上に飛ぶ。
 死体の山とシュン。「神様、僕の退屈を返してください」。「チューチューチュー」とダルマ。「お前はネズミや。もうすぐ来るで。猫が来るで」「ネズミ?」「猫が来るでえ」。シュン、後ずさりしながら「猫が来る……」。1人の女子、戸を開け、怯えている。「あー、イチカ」「シュン、あーあーあー」と腰抜かす女子。シュン、廊下に出る。イチカ「良かったー、生きてて」「他のみんなは?」「他に? 私、自分を助けたくて~(声が震えていて、聞き取れない)スイッチを押したの。あたし、みんな殺しちゃった。私のせいだよ!」「いや、俺も同じだ。俺が~」「ねえ、これって何がどうなってるの?」「いやー、俺にも分かんないよ。そうだ。警察に」。携帯を取り出すが、“圏外”の文字。「なんで?」「チューチューチュー、お前らはネズミや。もうすぐ猫が来るで、来るでえ!」「ここから出よう。警察に知らせないと」。2人、出口へ走るが、どの扉も開かない。シュンが消火器を扉のガラスにぶつけても、消火器は跳ね返される。唯一開いた扉は体育館への扉で、2人が体育館に入ると、扉は閉まってしまう。開けようとすると「無駄だよ。一度中に入ったら出られない」。ネズミの着ぐるみを着た生徒もいる。「はー、何だ? これ」。床に巨大な文字が書かれている。“ネコにすずつけたら、おわり”。イチカ「どういうこと?」ネズミの1人「さあ、君たちも早く着替えたまえ。逆らったら何が起こるか分からない。早く!」。バスケットボールを持ち、床に座っている生徒。「早くしないか?(声が裏返る)これは生徒会長の命令だぞ」。振動。床が開き、巨大な猫の置物、現れる。“猫ふんじゃった”の音楽。猫の首がバネでビヨヨーンと伸び、生徒の1人を丸飲み。ズズーンと体が滑って動き、次の生徒を丸飲み。その後も次々と飲み込んでいく。シュンとイチカの前に巨大な鈴が転がってくる。猫の首に輪っか。鈴のタイマー、残り9分32秒。「あそこにあの鈴をシュートしろってことか?」。さっきバスケットボールを持っていた生徒、猫の輪っかにボールをシュートする。“2年吉川晴彦・バスケ部エース”の字幕。「毎日500本のシュート練習をし、指の爪をはがしたのは30回以上。なぜバスケを続けてきたのか、今やっと分かった。すべてはこの瞬間のためだ」。鈴をシュートすると、輪っかへ一直線。しかし猫が鈴をつかむ。吉川「手、動くのかよ!」。猫、吉川を手で横殴りにし、吉川は鈴とともに壁にめり込む。口から血を垂らして倒れる吉川。また“猫ふんじゃった”の音楽。猫、再び生徒を襲い始める。シュン「皆、着ぐるみを脱げ。あいつは着ぐるみを着てる奴しか襲ってない」。皆、急いで着ぐるみを脱ぐと、猫はおとなしくなる。しかし生徒会長と他の生徒が口論を始めると、また猫は生徒を食べ始める……。

 この後、シュンは猫の輪っかに鈴を入れることに成功し、白い立方体の中の部屋に閉じ込められて、4体のこけしによって“カゴメカゴメで当てたら、終わり”と言われ、立方体から出ると、今度はシロクマに“本当のことを言ったらおわり”と言われ、最後にマトリョーシカに“カンケリしたら、終わり”と言われ、生き延びます。あらすじを書いた部分の後は凡庸なストーリーをなぞることに終始し、冒頭の「体の欠損による殺人」が魅力的に描かれていることが、この映画の最大の見せ場となっていたように思います。

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