奥田英朗さんの’14年作品『田舎でロックンロール』を読みました。『小説 野生時代』2013年8月号から2014年8月号までに連載された『ホリデイ・ヒット・ポップス!』と題されたエッセイに、『小説新潮』2007年9月号に掲載された短編『ホリデイ・ヒット・ポップス!』を加えてできた本です。
内容は奥田さんが13歳から18歳だった1972~77年の、奥田さんの洋楽青春期を綴ったものです。あとがきによると「77年を終わりにしたのはポピュラー音楽史においても必然だったとあらためて思う。ロックもソウルもジャズも、78年になるとシーンがガラリと変わるのである。ロックはAORと産業ロックへ、ソウルはディスコ・ミュージックへ、ジャズはフュージョンへと、まるで計ったように同時期に、それぞれが舵取りし、ひとことで言えば商業主義の産物となった。(中略)まったくもってクソな(しかし金になる)時代に突入するのである。だからあらためて、わたしはラッキーな世代だと思う。ロックの無垢な時代が、自分の青春期だったのだ。」
実は私も奥田さんと同じ年に生まれているので、奥田さんと同じような洋楽体験をしています。ただ、奥田さんが中学から洋楽を聞き始めたのに対し、私の洋楽人生は、高校1年の時に1歳年上の彼女がサイモン&ガンファークルのファンであったことから始まり、カーペンターズ、オリビア・ニュートン・ジョンといった“正統派ポップス”や、イージーリスニング、ポール・マッカトニー&ウイングス、そしてFM番組のオープニングで流れていた、キース・ジャレットの『ケルン・コンサート』を知るに至って火がつき、高校2年生頃から、同級生にレコードを借りたり、土曜日の夜に湯川れい子さんがDJをされていた『全米トップ40』という番組を愛聴したりすることによって、ますます洋楽にのめりこんでいったので、奥田さんよりはかなり遅れて洋楽人生を出発させたことになります。(実際、私は高校1年の時、太田裕美さんの『木綿のハンカチーフ』をFMから録音できないかと、悪戦苦闘したりもしていました。)高校2年生の時、洋楽を聞く男子は、クイーン派とレッド・ツェッペリン&ディープ・パープル派に分かれていて(ちなみに、ビートルズ派も1人いました)、私はどちらからもLPを借りて聞きましたが、私が判断する限りでは、ディープ・パープルやレッド・ツェッペリン、ピンク・フロイドの方が圧倒的に「すごい!」と思いました。(クイーンは当時、『ボヘミアン・ラプソディー』でヒットチャートを賑わせていましたが、なんかロック・オペラみたいで、私は馴染めませんでした。)そして私の本格的な洋楽人生が始まったのは、大学1年生、奥田さんがここでのエッセイの筆を折る’78年からのことで、パンク・ロックには馴染めなかったものの、ビリー・ジョエル、ジェリー・ラファティー、クリストファー・クロスなどに熱狂し始め、図書館でジャズのレコードを借りまくって、ビル・エヴァンスやアルバート・アイラーらの存在を知り、ドナ・サマーを中心とするディスコ・ミュージックも(レコードを買うほどではありませんでしたが)聞くといった感じでした。
自分の話が長くなりましたが、本の方に話を戻すと、短編を除くエッセイの部分は章の題名が曲の題名となっており、ちょっと書き出してみると、01「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」(The Beatles)、02「名前のない馬」(America)、03「スライダー」(T.Rex)、04「展覧会の絵」(Emerson, Lake & Palmer)、05「アビイ・ロード」(The Beatles)、06「狂気」(Pink Floyd)、07「ライヴ・イン・ジャパン」(Deep Purple)、08「黒船」(Sadistic Mika Band)、09「クイーン2」(Queen)、10「ウッドストック」(Various Artists)、11「フィルモア・イーストライヴ」(The Allman Brothers Band)、12「明日なき暴走」(Bruce Springsteen)、13「シルク・ディグリーズ」(Boz Scaggs)、14「夏草の誘い」(Joni Mitchell)、15「南十字星」(The Band)、16「彩(エイジャ)」(Steely Dan)となっていました。
その内容については、一昨年の夏に我が家のオーディオセットを買い替え、アナログレコードを聞き直してみると、20枚に1枚程度の割合でハッとするような音の盤があり、それはレコードを録音する際、元となるマスターテープのクオリティがモノをいっていると知って、最近アナログレコードをよく買うようになったことがまず枕として述べられ、その後、奥田少年が岐阜県各務原(かかみがはら)市という田舎町で1970年代に洋楽人生をいかにして始め、発展させていったかが、多くのレコードの名前や様々なエピソードとともに、生き生きと描かれています。
私はこの本で紹介されているCDを30枚以上、アマゾンの中古で買ってしまい、この本自体も図書館で借りて読んだ後、常に身近に置いておきたくて、やはりアマゾンで中古を買い求めてしまいました。それだけ挑発的な本であると思います。洋楽に限らず、音楽の好きな方にお勧めです。なお、この内容を改定したものを私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)の「Favorite Novels」の「奥田英朗」のところにもアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)
内容は奥田さんが13歳から18歳だった1972~77年の、奥田さんの洋楽青春期を綴ったものです。あとがきによると「77年を終わりにしたのはポピュラー音楽史においても必然だったとあらためて思う。ロックもソウルもジャズも、78年になるとシーンがガラリと変わるのである。ロックはAORと産業ロックへ、ソウルはディスコ・ミュージックへ、ジャズはフュージョンへと、まるで計ったように同時期に、それぞれが舵取りし、ひとことで言えば商業主義の産物となった。(中略)まったくもってクソな(しかし金になる)時代に突入するのである。だからあらためて、わたしはラッキーな世代だと思う。ロックの無垢な時代が、自分の青春期だったのだ。」
実は私も奥田さんと同じ年に生まれているので、奥田さんと同じような洋楽体験をしています。ただ、奥田さんが中学から洋楽を聞き始めたのに対し、私の洋楽人生は、高校1年の時に1歳年上の彼女がサイモン&ガンファークルのファンであったことから始まり、カーペンターズ、オリビア・ニュートン・ジョンといった“正統派ポップス”や、イージーリスニング、ポール・マッカトニー&ウイングス、そしてFM番組のオープニングで流れていた、キース・ジャレットの『ケルン・コンサート』を知るに至って火がつき、高校2年生頃から、同級生にレコードを借りたり、土曜日の夜に湯川れい子さんがDJをされていた『全米トップ40』という番組を愛聴したりすることによって、ますます洋楽にのめりこんでいったので、奥田さんよりはかなり遅れて洋楽人生を出発させたことになります。(実際、私は高校1年の時、太田裕美さんの『木綿のハンカチーフ』をFMから録音できないかと、悪戦苦闘したりもしていました。)高校2年生の時、洋楽を聞く男子は、クイーン派とレッド・ツェッペリン&ディープ・パープル派に分かれていて(ちなみに、ビートルズ派も1人いました)、私はどちらからもLPを借りて聞きましたが、私が判断する限りでは、ディープ・パープルやレッド・ツェッペリン、ピンク・フロイドの方が圧倒的に「すごい!」と思いました。(クイーンは当時、『ボヘミアン・ラプソディー』でヒットチャートを賑わせていましたが、なんかロック・オペラみたいで、私は馴染めませんでした。)そして私の本格的な洋楽人生が始まったのは、大学1年生、奥田さんがここでのエッセイの筆を折る’78年からのことで、パンク・ロックには馴染めなかったものの、ビリー・ジョエル、ジェリー・ラファティー、クリストファー・クロスなどに熱狂し始め、図書館でジャズのレコードを借りまくって、ビル・エヴァンスやアルバート・アイラーらの存在を知り、ドナ・サマーを中心とするディスコ・ミュージックも(レコードを買うほどではありませんでしたが)聞くといった感じでした。
自分の話が長くなりましたが、本の方に話を戻すと、短編を除くエッセイの部分は章の題名が曲の題名となっており、ちょっと書き出してみると、01「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」(The Beatles)、02「名前のない馬」(America)、03「スライダー」(T.Rex)、04「展覧会の絵」(Emerson, Lake & Palmer)、05「アビイ・ロード」(The Beatles)、06「狂気」(Pink Floyd)、07「ライヴ・イン・ジャパン」(Deep Purple)、08「黒船」(Sadistic Mika Band)、09「クイーン2」(Queen)、10「ウッドストック」(Various Artists)、11「フィルモア・イーストライヴ」(The Allman Brothers Band)、12「明日なき暴走」(Bruce Springsteen)、13「シルク・ディグリーズ」(Boz Scaggs)、14「夏草の誘い」(Joni Mitchell)、15「南十字星」(The Band)、16「彩(エイジャ)」(Steely Dan)となっていました。
その内容については、一昨年の夏に我が家のオーディオセットを買い替え、アナログレコードを聞き直してみると、20枚に1枚程度の割合でハッとするような音の盤があり、それはレコードを録音する際、元となるマスターテープのクオリティがモノをいっていると知って、最近アナログレコードをよく買うようになったことがまず枕として述べられ、その後、奥田少年が岐阜県各務原(かかみがはら)市という田舎町で1970年代に洋楽人生をいかにして始め、発展させていったかが、多くのレコードの名前や様々なエピソードとともに、生き生きと描かれています。
私はこの本で紹介されているCDを30枚以上、アマゾンの中古で買ってしまい、この本自体も図書館で借りて読んだ後、常に身近に置いておきたくて、やはりアマゾンで中古を買い求めてしまいました。それだけ挑発的な本であると思います。洋楽に限らず、音楽の好きな方にお勧めです。なお、この内容を改定したものを私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)の「Favorite Novels」の「奥田英朗」のところにもアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)