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山田詠美『時計じかけの熱血ポンちゃん』

2015-10-05 06:14:00 | ノンジャンル
 無実をずっと訴えられていた奥西勝死刑囚が、拘置所生活も含めると54年、死刑判決が確定してからだと43年の拘束生活を経た結果、昨日肺炎で亡くなりました。冤罪という問題が存在する限り、そして「人が人を殺す」という、その形式においても、死刑は絶対にやってはいけない残虐刑だと、私は確信しています。報復刑として死刑を支持している方、この機に再考してみてはいかがでしょうか?

 さて、山田詠美さんの’15年作品『時計じかけの熱血ポンちゃん』を読みました。『小説新潮』’13年4月号から’15年3月号にかけて掲載されたエッセイをまとめたものです。
 今までの『ポンちゃん』シリーズ同様、その一人ぼけつっこみぶりに、もう思わず声を出して笑うしかないのですが、一部を引用させていただくと、「(今季の『アメリカン・アイドル』は)ニッキーが、あまりにもディーヴァ然としたマライアに腹を立てて出て行ってしまったり、全員がスタンディング・オベーションする際、マライアだけがドレスがきつ過ぎて立てなかったり、キースがフロアにひれ伏して出場者を称えたり、と見所がいっぱいだった。私は、毎回、ニッキーのファッションに目が釘付け。すっかり影響を受けて、伸ばしかけていた前髪をぱっつんと切り、イメージは麗子像? と誤解され、さらに口紅の色も、うんと発色の良いものに変えて、目標は草間彌生? と勘違いされるまでに。きーっ、これからも年甲斐もなくチャレンジして行くつもりよっ。年寄の冷水という新しい遊びを開拓して行く所存の私。温かく見守っていただければ幸いです(嘘。私は、このコメントを出す、すべての芸能人を忌み嫌っている。温かくなくていいから)。」といった感じです。
 また書き残しておきたい文章を引用させていただくと、「(前略)おいしいものをおいしく食べる瞬間に貴賤なんかない、というのが私と女友達の持論。」、「昔、デビューしてからの何年か、私は、マスコミに追い回されていた。その執拗さと言ったら、ものすごいもので、私はとことん痛めつけられた。記事の大半は、こんな国賊同然の女が作家面するのは許せんというもので、書くことがなくなると、今度は顔の美醜にまで及んだ。いわく、外人にしか相手にされないブスのくせに、とか何とか。どうして、私ごときに、ここまで執着するんだろうと、つくづく世の中が嫌になったものだ。」、「(私を不幸にする事件を)笑い飛ばしてくれる人がまわりに集まってくれる年齢になって良かったなあって。デビューした二十代の頃、近しい人々は、皆、私と一緒になって、怒り泣いてくれる人ばかりだった。つまり、私と同じように若かったのだ。」、「鬱野くん、二十二歳。そう、この年頃って、男も女も、中二病以来、新たな自意識の病を迎えるような気がする。ねえ、誰もあなたのこと見てないよ、と言いたくなるような、やみくもに高い自己評価。中学の時と違って、内実が伴っていないことを自身がうすうす認めているだけに、はるかに痛々しい。」、「行列……それは、私には、まったく縁のないもの……(後略)」、「しばらく前に、ローラ アシュレイっぽい小花模様のワンピースを着た、とっても素敵な白髪のおばあさんを見たのだった。足許は三つ折りにした白いソックスにストラップの付いたバレエシューズ。ジョン・レノンみたいな銀縁の丸眼鏡がなければ、ほとんど少女と同じ身なりである。それなのに、全然違和感がない、どころか、年齢が洋服の無垢を手玉に取っているような感じ。すごく魅力的なのだ。」、「アンチエイジングなんて、ことさら掲げなくても、年齢を超越した人っているものだ。だいたい、どうしてエイジングに『アンチ』なんて付けなきゃならないの?  年齢を重ねて来たという事実を、もっと肯定的にとらえなきゃ、ようやく大人になった甲斐がないよ。」、「子供の頃、あの歌(『遠くへ行きたい』)を耳にしただけで、心細くて泣きなくなったのは転校生だったせいか。大人になった今、もちろんそこまでは思わないが、やはり、センチメンタルな気分と共にあのフレーズは甦る。そういう昔の歌はいくつかあって、その静かなエナジーは、私を驚かせる。たとえば、生まれる前の歌だが『雪の降るまちを』とか。」、「(前略)私の手許に浅川マキだけは残ったの。一番好きな曲は、アニマルズのヴァージョンが有名な『朝日のあたる家』。ミドル・ティーンに売春宿の悲哀が解る訳もないのだが、すごく心に響いて涙が湧いて来たのを覚えている。暗い歌の多い彼女だが、同じ暗いものでも、外国の曲に日本語詞を付けたものだと、ブルージーな感じが増して格好良い。ベスト盤でマーク・ボラン(!)の曲を歌っているのだが、まったく、今の言い方での“awesome”(超ヤバイ)な感じ。ホール&オーツ(!)の曲も歌っているが、これも最高。」……。
 ここに書ききれなかったことは、私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)の「Favorite Novels」の「山田詠美」のところにアップしておきますので、興味のある方は是非ご覧ください。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/