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高野秀行『未来国家ブータン』

2012-06-25 03:06:00 | ノンジャンル
 牧口雄二監督の'77年作品『毒婦お伝と首斬り浅』をスカパーの東映チャンネルで見ました。明治初期を舞台にした『俺たちに明日はない』といったストーリーで、無法者のグループのヒロインを東てる美、公安の刑事を汐地章が演ずるという、ちょっとした「珍品」でした。

 さて、高野秀行さんの'12年作品『未来国家ブータン』を読みました。
 著者は、野性の植物や菌類といった「生物資源」から新しい医薬品や食品などを作るための研究開発を行っているバイオベンチャーを設立した二村さんから、ブータンの農業省の国立生物多様性センターと正式に提携して、今度共同で本格的にプロジェクトを始めるので、それに先立って、ブータン政府もよく把握していない少数民族の村に行って、彼らの伝統知識や現地の状況を調べ、今後フィールドワークに適した場所を決めてほしいと頼まれます。逡巡する著者に二村さんは、国立生物多様性センターの主任が「ブータンには雪男がいるんですよ」と言っていたと伝えると、これまで雪男の調査など行われてこなかったであろうブータンに、「未知」をひらすら追及する著者は行くことを決意します。
 ブータンは今でも半鎖国体制にあり、開発より伝統を重視し、国民は国王と仏教を篤く尊んでいます。国民は日本の和服に似た民族衣装の着用を義務づけられ、外国からの旅行者や外国企業の投資を厳しく制限しています。著者は肝心の生物資源調査について具体的に何をするか全く考えずに、ブータンに着いてしまいますが、雪男白書作成に必要な事柄である「伝説や信仰について特に訊ねたい」「いろいろな職業の人に会いたい」「なるべく現地の人の家に民泊して現地の人と同じものを食べたい」といったことは、今回のプロジェクトの現地の責任者のシンゲイさんに用意してもらっていました。現地で雪男のことを言う「ミゲ」についての証言は、シンゲイさんのお父さんから得られますが、それを検証するために現地を訪れることはできません。旅の途中では、食料調達のために山菜採りが行われます。その後も、断片的なミゲに関する情報は得られますが、それらも伝説の域を出ません。やがて著者はチュレイという未確認生物の証言を得ますが、これも決定的証拠は皆無です。そしてブータン伝統医学研究所にブータン伝統薬用植物の本があることを知り、著者は無力感に捕らわれます。
 ブータンでの生物多様性に関する教育は、国連が地球生き物会議(COP10)を開く前から徹底されていて、その先進性には瞠目すべきものがありました。人口が70万人ほどしかいないため、雑誌をめくっていると知り合いが必ず見つけられます。'04年からは全土が禁煙となり、たばこの売買自体も非合法化されていますが、実際にはインドから密輸されたタバコが公然と喫われています。ブータンで有名な国民総幸福量(GNH)は、四つの柱「持続可能かつ公正な社会経済的発展」「環境の保全と持続的な利用」「文化の保護と促進(再生)」「良い統治」からなっていて、これはそうせざるをえない状況があって生まれた考え方でした。しかし実際には屠畜関係の非差別民は存在し、毒人間と呼ばれる非差別民も存在します。ブータンの役人は奢ったところがなく、外国人にも対等に接し、純真な目をしている人ばかりです。実際には多民族国家ですが、実際に自分の足で全国を歩いて公正さを徹底させ質素な生活を送る国王の人徳は広く行き渡り、自国への帰属意識はとても厚い国です。そして英語教育、経済と分離した環境政策、行政の丁寧なインフォームド・コンセント的指導、伝統と近代化の統一、こうしたことがことごとく日本より進んでいると著者は感じ、近代化がすべての国に及ぼす典型的な堕落から逃れているブータンの姿に著者は魅了されていきます。

 高野さんのいつもの本と同じく、民泊することによる庶民との触れ合いが豊富に行われ、それがブータンという国の魅力をより一層具体的なものとして伝えてくれていたように思います。ブータン国王の来日より数年前に行われた、高野さんによるブータンの辺境調査のノンフィクションです。ブータンに興味のある方は必読の書でしょう。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

バート・ケネディ監督『続・荒野の七人』その2

2012-06-24 09:36:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 雷鳴の夜、チコとの友情を確かめるクリス。慰霊のための教会建設をロルカに勧めたことを悔やむ神父に、今こそ村人にあなたは必要だと言うクリスは、ヴィンに、荒野で襲われたら勝ち目はないので、ここで迎え撃とうと言います。長期戦に備え、夜の間に農民らとともに防弾壁を築くヴィンら。ロペスはロルカに、一日で行ける牧場で水と食糧を補給しようと言いますが、相手はたかが農民だとロルカは反論します。
 翌朝、村人に祈りを捧げる神父と周囲を見張る7人。ロルカの斥候を次々と倒した彼らは、馬で一気に突撃してきたロルカらを次々と撃ち倒し、一旦退却して再突撃したロルカは馬から落ちて弾切れし、ロペスに馬をもらい再度退却します。ロルカはロペスに牧場へ行き、牧童でも農民でも銃を持てる者は集めるだけ集めろと言い、ロペスに「そんなことをすれば牧場はつぶれてしまう」と言われますが、自分の宝である息子たちはあの村の地面の下にあると言って、ロペスを説き伏せます。
 夜襲では不利になると言うヴィンは、賞金の話は嘘で、実はクリスと一緒に旅をしたかったのだとも言うと、クリスは、ロルカの息子たちは優しい子たちで、酷い父を殺すために自分を雇ったが、ロルカはクリスをわざと逃がしてくれたと言い、それを聞いたヴィンは「君のことが気に入ったんだろう」と言います。父に強制されて戦いに挑み、殺された息子たちを英雄に祭り上げて、自分の誇りにするための慰霊碑建設だと言うクリス。その夜、仲間に知らせずに1人で敵の偵察に出たフランクは、ロルカが残した見張りたちの話で、ロペスが牧場から400人ほど連れて来ると知り、足を撃たれながら戻ってきてクリスに報告します。なぜ危険な場所に自ら行くのか尋ねられたフランクは、自宅がコマンチに襲われた時、懇願する妻に最後の一発を放ち、それ以来復讐に燃えながら死に場所を求めて5年が経ったことを教えます。村人もすべて殺すだろうと聞いた村人たちは、自分たちのために死なないで逃げてくれとクリスに言い、生き延びた村人だけでやり直すつもりでだと言いますが、自分たちが臆病だと言う農民たちにクリスは、自然と日々戦っているじゃないかと言い返します。コルビーは自分を1人立ちさせてくれたのはクリスだと言い、農民を1人立ちさせるにも助けがいると言って、クリスに翻意を思いとどまらせます。
 朝を迎え、祈りを捧げる農民たちと神父。援軍が来るまでのロルカたち30人ほどを一気にやっつけようとフランクは提案し、チャンスは1回だぞとクリスは言います。マニュエルを村に残し6人で出発すると、マニュエルが倒した箱からはダイナマイトが大量に出てきます。カメラがパンダウンすると、村の外の門の陰にロルカらが隠れています。そこへ山から馬で駆け降り、襲撃をかける6人。銃撃戦の途中で、ヴィンは山の稜線をロルカの援軍が埋めつくしているのに気付きます。一気に駆け降りてくる援軍と退却するクリス。クリスらが村の広場で援軍を迎え撃つと、農民たちはマニュエルの指揮のもと、周囲の高みからダイナマイトを投げ落とし、援軍を倒していきます。その中でコルビーは肩を負傷し、ルイスは腹を撃たれます。チコも右腕を撃たれますが、クリス目がけて馬を走らせたロルカは、爆風で馬から転げ落ち、弾を込めているクリスを撃とうとしますが、前に立ちはだかったフランクを撃ち、その後クリスに撃たれて、座り込み首をうなだれます。それに気付いたロペスは攻撃を止めさせ、引き揚げていきます。やっと死ねると言って倒れるルフランク。倒れているマニュエルに気付くヴィン。「皆殺しにしろ」と言い続ける瀕死のロルカの死を看取る神父。
 平和な村の風景。チコの発案で3つの村を一つにし、教会も完成させると神父はクリスとヴィンに言います。去るコルビー。村に残るチコと神父らと別れを告げるクリスとヴィン。見つめ合うチコとペトラ。遠くから村を見て「いい眺めだな」というクリスに、ヴィンは「久しぶりにいい夢を見た」と言い返すのでした。

 渋い配役が何といっても魅力的で、メキシコの革命軍と農民の関係というのも新鮮でした。ユル・ブリナーらが身を隠さずに直立したまま銃弾を放ち続ける姿がかっこよく、彼やクロード・エイキンズの代表作の一つとなると思います。続編でない方ばかりが有名になってますが、こちらも一見の価値ありです。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

バート・ケネディ監督『続・荒野の七人』その1

2012-06-23 08:38:00 | ノンジャンル
 バート・ケネディ監督の'66年作品『続・荒野の七人』をWOWOWシネマで見ました。
 メキシコの村に両手を縛られた男が瀕死の状態で現れ、村人たちに「隠れろ」と言います。やがて銃声とともに無数の無頼の群れが馬に乗って現れ、しまってあった拳銃を持ち出したチコは応戦しますが、すぐに失神し、他の村の男たちと連れ去られます。
 闘牛を見物していたクリス(ユル・ブリナー)の前に旧知の仲であるヴィン(ロバート・フラー)が現れ、クリスに賞金がかけられているのを知らせるために彼を探していたと言います。闘牛に飛び入りで参加し、他の闘牛士から抑え込まれた若者エマニュエルは、葬式代を出してやるからやらせろとクリスが闘牛士に言ってくれたため、見事に牛を仕留め、喝采を浴びます。その夜、花火が上げられ、フラメンコが踊られる中、クリスとヴィンが酒を飲んでいると、子供がクリスの元に拳銃を届けます。子供を追うと、そこにはクリスの仲間で、今は銃を捨てて堅気になっていたチコの妻・ペトラがいて、2日前に村の男たちが砂漠に連れ去られ、ここに来る途中の2つの村も男を連れていかれて、泣き叫ぶ女たちしかいなかったことを告げ、チコを助け出してほしいと言います。相手が50人以上いたと聞いたクリスは、人集めのために監獄を訪れ、看守を買収して、4人を殺したフランク(クロード・エイキンズ)と、あらゆる罪をおかして明日銃殺刑になるという男ルイスを牢から出します。その夜、妻を寝取られ銃を撃つ夫から逃げるコルビ-(ウォーレン・オーツ)と出会ったクリスは、女しかいない村の話をして、彼も仲間に加えます。闘鶏で勝負がついたところで負けた鶏を救おうとしてケンカに巻き込まれた若者・マニュエルを救ったクリスは、マニュエルからも仲間に加えてほしいと言われると、チコを加えれば縁起のいい7人になるという理由で彼に拳銃を渡します。
 早朝、クリスが町の中を馬で走ると、路地から次々に合流してくる仲間たち。最後に銃声に追われたルイスも加わって、勇ましいテーマソングのもと、6人は荒れ地を疾駆していきます。
 野営で皆にお酌をして回るペトラ。女との自慢話をするコルビーにフランクが苛立つと、クリスはコルビーを見張りに出します。クリスはヴィンに、捕虜が300人もいるので泉から泉へ移動するはずだと言い、ヴィンが、そういうルートはたくさんあると反論すると、いずれカウボーイの噂が聞こえてくるまで、手当り次第に捜すとクリスは言い、見つけることより見つかった後のことを心配しろと言います。
 無人の村に到着すると、男が縛り首になって1人吊るされ、木陰に馬が2頭います。吊るされた男を落とし、マニュエルにペトラと少年を隠させ、5人が村の中心の広場に進むと、周囲から一斉に銃弾が放たれますが、5人は襲撃してきた者らを全員倒します。黒衣の女たちが現れ、縛り首の男は逃げてきた者だと言います。その男の妻から捕虜のいる場所を特定したクリスらに、ペトラは貧乏人は警察も助けてくれないと言いますが、クリスはやがて世の中が変わるまで、自らの力で戦うしかないと言います。
 翌朝、ペトラと少年を加えた村の女たちが見守る中、出発する6人。一生に一度ぐらい人助けをしたいと言うルイスに、自分は友情でも人助けでもないとフランクは言います。
 捕虜が村を建設しているのを見張る監視を襲うクリスら。賊の頭領ロルカ(エミリオ・フェルナンデス)は村と教会の再建を目指していますが、神父(フェルナンド・レイ)から村人を殺すことを非難されます。クリスは馬に乗って1人で村に乗り込み、他の5人にロルカと部下のロペスを狙わせ、友人のチコと他の捕虜をすぐに返せと言います。農民は腰抜けだと言うロルカに対し、チコに銃を渡すクリス。ロルカは革命戦士の仲間300人が教会の中で戦死した時、農民たちは寝台の下で震えていたと言い、二人の勇敢な息子もその時に死んだと言います。そして新しい教会を彼らの慰霊碑にし、卑怯な農民らを人柱にするつもりだと言い放ちます。部下のロペスにこの場で農民を殺せと命ずるロルカに反論する神父。神父を殴ろうとするロルカを止めるクリス。一度命を助けてもらった礼に今日だけは見逃すので、仲間を連れて振り返らずに出ていけと言うクリスに、ロルカは一旦は退却します。(明日へ続きます‥‥)

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三崎亜記『決起! コロヨシ! ! 2』

2012-06-22 05:10:00 | ノンジャンル
 三崎亜記さんの'12年作品『決起! コロヨシ! ! 2』を読みました。
 3年になって掃除部の新たな主将となった藤代樹(いつき)は、新入生に向けての部活説明会に臨みます。戦後処理の課程でこの国は「国技を持つ権利」を剥奪され、以後40年間、国技がなかったこの国の「新国技」候補としてにわかに脚光を浴びたスポーツが掃除でした。樹は一般校の生徒でありながら、政府直轄校が上位を独占し続ける全国大会で2年生の時男子個人の部3位に食い込み、マスコミの注目を浴びていました。大会終了後、失踪した祖父に幼い頃教えてもらっていた掃除を続けていることを両親に隠していた手前、家に帰りずらかった樹は、知人でお嬢様の梨奈の家に居候させてもらっていました。そして父が掃除の審判をする「裁定士」であることも樹は初めて知ったのでした。
 部活説明会には樹の噂を聞いた新入生が大挙して押しかけ、樹以外の部員がエキジビションとしての掃除を披露しましたが、新入生の求めに応じて、樹も演技を披露させられるはめに陥ります。部活説明会を無事終えた樹たちは、校長の意向で部費を大幅に削られたことを知り、校長に直談判に行った樹は「少し注目されたぐらいでいい気になるな」と一喝されます。
 やがて樹の前に昨年全国大会男子個人の部で優勝した大介が現れ、昨年の大会のことを思い出させます。試合前に父から「勝敗は始めから決まっている」と告げられた樹は、本来なら手にした長物で巻き上げられるはずの塵芥を一つも動かさず、架空の塵芥を裁くという演技をして3位に選ばれたのでした。しかし1ヶ月後にテレビで放送された全国大会の画像では、樹の演技の映像に加工が施されていて、実際に塵芥を操っているようにされていました。大会の時、樹の後輩で女子個人の部で優勝した偲は故郷の居留地に帰ってしまい、寺西顧問も、樹たちが新国技選定を巡って、掃除にとって有利な方向性を導くための手駒として、否応なく利用され、翻弄されるはずだと言い、「私も、あなたを謀ります」と言って姿を消してしまったのでした。
 新たに顧問となった牧田先生は、樹の練習として3回同じ動きを繰り返すことを課し、そのプログラミングの管理を樹の一年下の後輩・後藤に託し、部室もより狭い場所に移し、自分の代理として、おどおどした喜多瀬コーチを送り込みます。しかし、一方、練習場所としては体育館の半分を確保してくれ、足りない部費の補填として学校の予備費を回してくれたりもするのでした。
 ある日、その体育館に姿を現した国家保安局の管理官は、掃除が40年前の戦争の戦後処理の過程で、占領統治政府によって、国技とともに活動を禁止され、それから10年後の自治権回復の際に、高校の3年間のみという制限付きながら活動が許された経緯を再確認し、新国技の候補としてお互いに頑張っていきましょうと言って、名刺を渡して去って行きます。
 いよいよ牧田先生にしたがった、夏の大会へ向けての樹の練習が始まりますが、それは部費の大半を注いで買われた機械により3回の演技のシンクロ率を測るというものでした。自信満々で演技をし終えた樹でしたが、目標の80%には遠く及ばない15%と後藤に言われ、牧田先生と後藤への闘志がめらめらと沸き上がってきます‥‥。

 ここに書いたあらすじは全体の8分の1にも満たない分量です。1ページごとに新しい展開が待っているという状態で、500ページを超える分量にもかかわらず、少しも飽きることなく楽しく読ませていただきました。前作『コロヨシ!!」の時は否定的な評価をしたようにも思うのですが、今回は「居留地」とか「廃墟」とか、三崎さんならではの題材も豊富に出てきて、読みやすい文体とともに、素晴らしい出来だったと思います。次回作を予感させる終わり方をしているので、是非続きを読みたい、そんな気持ちにさせてくれた本でした。なお、上のあらすじの続きを知りたい方は、私のサイト・Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)の「Favorite Novels」の「三崎亜記(『決起! コロヨシ!! 2』以降)のところにアップしておきましたので、是非ご覧ください。

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鶴田法男監督『13 thirheen ドリーム・クルーズ』その2

2012-06-21 08:46:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 船に何かがぶつかる音がするので、船上に出たジャックと百合は、船の近くにショーンの帽子が浮いているのを見つけます。圏内にもかかわらず無線はつながらず、ただ「ジャック」と呼ぶショーンの声が聞こえてきます。自分が弟を見殺しにし、弟もそのことを知っていると言うジャック。そこへ錨を持った英治が現れ、「私はお前のせいで殺された」と百合に向かって言うと、その声は前妻の声に変わっていきます。「絶対に許さない」と言って、百合に錨を降り降ろす英治と絶叫する百合。画面は暗転します。
 ジャックが船内で気が付くと、百合が殺されたはずの場所には何もなく、船上では英治が錨を何度も振り降ろしていました。百合を探すジャックは、やがて船上から降りて来た英治にレンチをふりかざして、百合の居場所を聞きます。英治は錨でジャックに襲いかかり、ソフォに深々と刺さった錨が抜けなくなると、ナイフを構えたジャックに素手で近づいていきます。ジャックの首に手をかける英治の胸に刺さるナイフ。英治は自分の胸からナイフを抜き取ると、ナイフは手から落ち、右腕もいきなりちぎれて床に落ちます。ジャックが上を見ると、英治は顔の右半分もぐしゃぐしゃになっていて、彼は後ずさりして行き、自ら海に落ちます。
 英治の錨から逃れる時にケガした右足の痛さに倒れるジャック。洗面所の中で気が付いた百合は、ドアに鍵がかかっているのに気付き、ジャックに助けを呼びますが、そこへ近づこうとしたジャックの右足を、先ほど床に落ちた英治の腕が掴み、海に引きづり込もうとします。洗面所では排水口から水が吹き出し、百合はパニックに襲われます。何とか右腕を足から引き剥がし、また前進しようとしたジャックは、また右腕に今度は首を掴まれ、これも何とか引き剥がすと、机に何度も叩きつけて、海に投げ捨てます。洗面所が水で満たされると、前妻の財産目当てで結婚した英治が、百合と再婚するため、このクルーザーで前妻の直美(蜷川みほ)を撲殺した場面が百合に見え、直美が英治に殴られる度に、百合も頭部に衝撃を受けます。直美は「あんたも、その女も絶対に許せない」と言って洗面所で死んでいくと、百合も息絶えます。シートでくるまれ、縄で縛られ、いかりを結びつけられて、海中深く沈められる直美。
 洗面所のドアを何とか破ったジャックは、百合に蘇生術を試み、彼女は息を吹き返します。真実を語った後、この場所は呪われているので、ここから逃れない限り、私たちは殺されると言う百合。既に英治によって粉々に破壊された操縦席を見た彼らの前の海中に、緑色の光が現れます。船の中に二人が逃げ込むと、百合の姿は一瞬にして水死体の直美の姿に変わり、逃げるジャックに近づいてきます。斧で退治しようとするジャックでしたが、その腕にはショーンの水死体が取りつきます。振り向いたジャックは百合が元の姿に戻っているのに気付くのでした。「しっかりして!」という百合。今度は直美の笑い声が聞こえてきて、照明が消えます。扉に鍵をかけて寝室に立てこもるジャックと百合でしたが、扉はギシギシと音を立て始め、破られると悟った彼らは船底をつたって別の部屋に逃げ込みます。ぬめぬめと彼らに追いすがる水死体の直美。浮き輪とともに海に飛び込んだ二人は必死に船から遠ざかろうとしますが、直美は海の上を漂いながら追ってきます。足のケガでもう泳げないと言うジャック。気が付くと直美の姿は消えていて、彼らは「助かった!」と言って喜び合いますが、カメラは海中から彼らに近づいていきます。喜ぶ彼らの目の前に現れた直美は、彼らに襲いかかり、百合を海底に引きづり込もうとします。百合の手を引っ張るジャックは、弟を助けようとしたシーンをフラッシュバックさせます。やがて水死体のショーンが海底から急浮上してきて、直美に取付くと、彼女を百合から引き剥がして、二人して海底に消えていきます。「ショーンがあなたを救ってくれた」と言う百合。近くに浮かぶショーンの帽子。そして日の出。
 快晴の空の下、帆を張ったボート。ショーンと写した写真をながめていたジャックは、妊娠3ヶ月の百合に向かって、男の子ならつけたい名前があると言い、二人は写真を花束に添えて、海に流すのでした。

 鶴田さんがサム・ライミに並ぶ才能の持ち主であることを証明する作品だと思います。必見です。

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