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三崎亜記『決起! コロヨシ! ! 2』

2012-06-22 05:10:00 | ノンジャンル
 三崎亜記さんの'12年作品『決起! コロヨシ! ! 2』を読みました。
 3年になって掃除部の新たな主将となった藤代樹(いつき)は、新入生に向けての部活説明会に臨みます。戦後処理の課程でこの国は「国技を持つ権利」を剥奪され、以後40年間、国技がなかったこの国の「新国技」候補としてにわかに脚光を浴びたスポーツが掃除でした。樹は一般校の生徒でありながら、政府直轄校が上位を独占し続ける全国大会で2年生の時男子個人の部3位に食い込み、マスコミの注目を浴びていました。大会終了後、失踪した祖父に幼い頃教えてもらっていた掃除を続けていることを両親に隠していた手前、家に帰りずらかった樹は、知人でお嬢様の梨奈の家に居候させてもらっていました。そして父が掃除の審判をする「裁定士」であることも樹は初めて知ったのでした。
 部活説明会には樹の噂を聞いた新入生が大挙して押しかけ、樹以外の部員がエキジビションとしての掃除を披露しましたが、新入生の求めに応じて、樹も演技を披露させられるはめに陥ります。部活説明会を無事終えた樹たちは、校長の意向で部費を大幅に削られたことを知り、校長に直談判に行った樹は「少し注目されたぐらいでいい気になるな」と一喝されます。
 やがて樹の前に昨年全国大会男子個人の部で優勝した大介が現れ、昨年の大会のことを思い出させます。試合前に父から「勝敗は始めから決まっている」と告げられた樹は、本来なら手にした長物で巻き上げられるはずの塵芥を一つも動かさず、架空の塵芥を裁くという演技をして3位に選ばれたのでした。しかし1ヶ月後にテレビで放送された全国大会の画像では、樹の演技の映像に加工が施されていて、実際に塵芥を操っているようにされていました。大会の時、樹の後輩で女子個人の部で優勝した偲は故郷の居留地に帰ってしまい、寺西顧問も、樹たちが新国技選定を巡って、掃除にとって有利な方向性を導くための手駒として、否応なく利用され、翻弄されるはずだと言い、「私も、あなたを謀ります」と言って姿を消してしまったのでした。
 新たに顧問となった牧田先生は、樹の練習として3回同じ動きを繰り返すことを課し、そのプログラミングの管理を樹の一年下の後輩・後藤に託し、部室もより狭い場所に移し、自分の代理として、おどおどした喜多瀬コーチを送り込みます。しかし、一方、練習場所としては体育館の半分を確保してくれ、足りない部費の補填として学校の予備費を回してくれたりもするのでした。
 ある日、その体育館に姿を現した国家保安局の管理官は、掃除が40年前の戦争の戦後処理の過程で、占領統治政府によって、国技とともに活動を禁止され、それから10年後の自治権回復の際に、高校の3年間のみという制限付きながら活動が許された経緯を再確認し、新国技の候補としてお互いに頑張っていきましょうと言って、名刺を渡して去って行きます。
 いよいよ牧田先生にしたがった、夏の大会へ向けての樹の練習が始まりますが、それは部費の大半を注いで買われた機械により3回の演技のシンクロ率を測るというものでした。自信満々で演技をし終えた樹でしたが、目標の80%には遠く及ばない15%と後藤に言われ、牧田先生と後藤への闘志がめらめらと沸き上がってきます‥‥。

 ここに書いたあらすじは全体の8分の1にも満たない分量です。1ページごとに新しい展開が待っているという状態で、500ページを超える分量にもかかわらず、少しも飽きることなく楽しく読ませていただきました。前作『コロヨシ!!」の時は否定的な評価をしたようにも思うのですが、今回は「居留地」とか「廃墟」とか、三崎さんならではの題材も豊富に出てきて、読みやすい文体とともに、素晴らしい出来だったと思います。次回作を予感させる終わり方をしているので、是非続きを読みたい、そんな気持ちにさせてくれた本でした。なお、上のあらすじの続きを知りたい方は、私のサイト・Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)の「Favorite Novels」の「三崎亜記(『決起! コロヨシ!! 2』以降)のところにアップしておきましたので、是非ご覧ください。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/