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宮崎誉子『シロネズミ』その1

2012-06-07 05:39:00 | ノンジャンル
 ケン・ローチ監督の'09年作品『エリックを探して』をWOWOWシネマで見ました。さえない郵便配達夫のエリックが、マンUの英雄、エリック・カントナの幻影に導かれながら、15年前に別れた妻と仲直りし、その後の妻の連れ子がもたらしたギャングとのトラブルをマンUサポーターの郵便配達夫仲間らの助けを借りて解決するという映画でしたが、2つの物語がうまく溶け込まずに、後者のコメディぶりだけが浮き上がって感じられるように思いました。ただ、ローチ監督ならではの沈んだ色調で、透明な画面は健在だったように思います。

 さて、河出書房新社発行の『文藝』2012年夏号に掲載されていた、宮崎誉子さんの短編『シロネズミ』を読みました。
 中学生の僕・吉住健一は、何千匹ものシロネズミが体内で絶えず動き回っているような不安に、常にさらされています。同級生の優子は僕といるとなごむと言い、僕は優子の暗さが心地よいと感じます。僕の家は家族経営の仕事をしていて、母親は事務仕事をしているので、僕の面倒は僕が幼い頃から、祖父母がしていて、僕は優しいおばあちゃんが一番好きです。
 春休み、高校を卒業したら家業を継ごうと考えている僕は、自ら進んで、無給の職員として父親の会社で働かせてもらうことにしますが、初日の朝から不安でシロネズミが口から飛び出しそうになります。従業員は傷んだ髪のギャルである溝口さん以外は皆高齢者で、父親を狙っているという溝口さんに、僕はつくことになります。
 一日中洋服の検査をする仕事で、細かい作業とクソ安い時給、そして検査の仕事を極めるには最低でも15年はかかるということで、若い人は三日ともたないと、溝口さんは教えてくれますが、溝口さんの手首には無数のリストカットの跡がありました。新人の仕事は基本である糸けば切りとハンガー掛けが無難だと言う溝口さんの意見を取り入れ、父親は一日目はコート千枚のハンガー掛けを溝口さんとすることを僕に命じます。ダンボールから服を取り出して、検針機にかけるという午前の仕事を終えると、溝口さんの軽自動車の中で昼食を食べましたが、僕が父親の会社を継ぐつもりだと言うと、溝口さんは、それまで会社がもたないんじゃないかと言います。
 午後は服とタグとハンガーのサイズが合うようにハンガーに服を掛けて、サイズ別にハンガーにチップをつける仕事をし、溝口さんは春休みが終わるまでに「私のドブネズミが健一のシロネズミを退治してやる」と言ってくれます。
 帰宅して元気そうな声で「ただいま」を言うと、母親の声に似ていて僕はゾーっとします。おばあちゃんとの楽しい買い物に付き合い、祖父母と食事を終えると、帰って来た母親は、無数のリストカットの跡がある溝口さんに僕がついていることを心配します。(明日へ続きます‥‥)

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/