また昨日の続きです。
早朝のレストラン。アール「コーヒーとサーモも満タンに」ベイツ「俺の勘定も頼む」「おはよう」「クソッ、今日は5日か。マズい」「いろんな“マズい”がある。もしかして誕生日でも忘れたのか?」「結婚記念日だよ。俺は大バカ野郎だ」「そうだな」「まったくだ。彼女は“結婚記念日おめでとう”とは言わない。俺が思い出すのを待ってるんだ」「昨夜は見事だったな。モーテルで。奴の捕らえ方、さすがだった」「ご迷惑を」「いや、少しも」「運が悪くて」「家族のことも考えろ。結婚記念日は大切だ。忘れちゃいかん。女には大事だよ。俺は仕事を優先した。最も大事なのは家族。仕事は2番目でもいいが1番は家族じゃないと。思い知ったよ。一人娘は俺と12年半も口をきかない。最悪だよ。仕事も、まるで家族は存在しないかのようだ。だが仕方ない。金を払う。ほら、お釣りはいい。余計なお世話だな。他人の私生活に口出しなんか」「とんでもない」「とにかく幸運を祈るよ。運が必要だ」「たまにはあなたのような人と話さないと」「“あなたのような”って?」「長く生きてるから遠慮なく本音を言える」「俺はもともと遠慮なんかしない。じゃあ元気で」「あなたも」。
去るアールにベイツ「待ってください。忘れ物だ」とサーモを渡す。「ありがとう」「いい一日を」「あんたも」。
病院からジニーの電話。「おじいちゃん、おばあちゃんが病気なの。とても重病よ。病院に来たけど家に帰された」「帰れるならよかったな」「いいえ、よくない。検査やスキャンをしたけど意味がない」「なぜ?」「数日もつかどうかよ」「予定が厳しいんだ。勝手に動かせない」「そう。分かった。今までずっと味方して、バカだった。ママたちが正しかった」「ジニー、すまない。すべてを捨てて行きたいが、できない」。ジニー、電話を切る。呆然とするアール。
昼間。アール、ドアを開けて入っていく。ジニー「来たの?」アール「母さんは?」「寝室にいる」「そうか、会って来る」。
鼻に酸素の管が入っているメアリー。「やあ、メアリー」「アール、何の用? 相続リストに入ってないのに……。ごめんなさいね。こんなことを言って。不安だから、つい……」「100歳まで生きようとするのは99歳の人間だけさ。すまなかった。何もかもすべて」「あなたはいつも外に生きてた。各地で品評会や人付き合い、注目の的でいたいのね。みんなを楽しませ、“すばらしい人”と言われる。家にいても、あなたは早く外へ戻りたがる」「その通り。外で認められるほうがずっと大事だと思ってた。家での俺は役立たずだから。今さらだと思うが、俺はここにいる」「なぜかしら。理由は分からないけど、来てくれてうれしい。ありがとう」。
電話をするフリオ。「また電話に出ない。覚悟していやがれ。アール。必ず見つけ出してやる」。
トレビノ「昨日来るはずだった。ルイスのウソか?」ベイツ「かもな。待て。電話してるぞ。奴らも居場所を知らない。怒ってる。見つけたら殺すそうだ」。
スプーンでメアリーに飲み物を与えるアール。「大丈夫か?」「平気よ、アール。ねえ、教えて」「何でも聞け」「どうやって大金を手に?」「こう見えても……嘘じゃない。俺は高級ジゴロなんだ」「賞金稼ぎ? 正直に答えて」「じゃ、正直に言う。麻薬組織の運び屋をやってる。305キロのコカインをトラックに積んでる」「教えてくれないのね。何であっても、そばにいるためにお金なんか必要ないわ」。
ジニー「やっと来たのね。お母さんはまだ想っているのよ」「お前を失望させた。俺はひどい父親で最低の夫だった。すべてしくじった。身勝手だった」「そんなことない。遅咲きなだけ」。
「奴ら、怒ってる。一週間以上連絡なし。1200万ドルのコカインだ。ハイウェー中を捜してる」「よし」。
ベイツ「新しい情報が」「ボスは捜査を終了させる気だ」「逮捕できます」「数ヶ月になる」「あと数日」「まだ奴はいるのか? これだけ時間と金をかけた。君はよくやった。もし事務処理で時間を稼げたら、どう動く?」「奴を捜してる組織の2人を追跡します」「よし、やれ」「どうも」。
アールが持つ携帯電話。“着信53件 受信メール98件”。夜。メアリーの息遣いが不安定になる。「どうした? 大丈夫か?」「何でもない。あなたは私の人生で最愛の人、そして最大の苦痛の元。ぜひあなたに知ってほしい。何よりもうれしいの。来てくれて。愛してる?」「メアリー」「昨日より今日の方が?」「明日はもっとだよ」。
(また明日へ続きます)
→サイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
→FACEBOOK(https://www.facebook.com/profile.php?id=100005952271135)
早朝のレストラン。アール「コーヒーとサーモも満タンに」ベイツ「俺の勘定も頼む」「おはよう」「クソッ、今日は5日か。マズい」「いろんな“マズい”がある。もしかして誕生日でも忘れたのか?」「結婚記念日だよ。俺は大バカ野郎だ」「そうだな」「まったくだ。彼女は“結婚記念日おめでとう”とは言わない。俺が思い出すのを待ってるんだ」「昨夜は見事だったな。モーテルで。奴の捕らえ方、さすがだった」「ご迷惑を」「いや、少しも」「運が悪くて」「家族のことも考えろ。結婚記念日は大切だ。忘れちゃいかん。女には大事だよ。俺は仕事を優先した。最も大事なのは家族。仕事は2番目でもいいが1番は家族じゃないと。思い知ったよ。一人娘は俺と12年半も口をきかない。最悪だよ。仕事も、まるで家族は存在しないかのようだ。だが仕方ない。金を払う。ほら、お釣りはいい。余計なお世話だな。他人の私生活に口出しなんか」「とんでもない」「とにかく幸運を祈るよ。運が必要だ」「たまにはあなたのような人と話さないと」「“あなたのような”って?」「長く生きてるから遠慮なく本音を言える」「俺はもともと遠慮なんかしない。じゃあ元気で」「あなたも」。
去るアールにベイツ「待ってください。忘れ物だ」とサーモを渡す。「ありがとう」「いい一日を」「あんたも」。
病院からジニーの電話。「おじいちゃん、おばあちゃんが病気なの。とても重病よ。病院に来たけど家に帰された」「帰れるならよかったな」「いいえ、よくない。検査やスキャンをしたけど意味がない」「なぜ?」「数日もつかどうかよ」「予定が厳しいんだ。勝手に動かせない」「そう。分かった。今までずっと味方して、バカだった。ママたちが正しかった」「ジニー、すまない。すべてを捨てて行きたいが、できない」。ジニー、電話を切る。呆然とするアール。
昼間。アール、ドアを開けて入っていく。ジニー「来たの?」アール「母さんは?」「寝室にいる」「そうか、会って来る」。
鼻に酸素の管が入っているメアリー。「やあ、メアリー」「アール、何の用? 相続リストに入ってないのに……。ごめんなさいね。こんなことを言って。不安だから、つい……」「100歳まで生きようとするのは99歳の人間だけさ。すまなかった。何もかもすべて」「あなたはいつも外に生きてた。各地で品評会や人付き合い、注目の的でいたいのね。みんなを楽しませ、“すばらしい人”と言われる。家にいても、あなたは早く外へ戻りたがる」「その通り。外で認められるほうがずっと大事だと思ってた。家での俺は役立たずだから。今さらだと思うが、俺はここにいる」「なぜかしら。理由は分からないけど、来てくれてうれしい。ありがとう」。
電話をするフリオ。「また電話に出ない。覚悟していやがれ。アール。必ず見つけ出してやる」。
トレビノ「昨日来るはずだった。ルイスのウソか?」ベイツ「かもな。待て。電話してるぞ。奴らも居場所を知らない。怒ってる。見つけたら殺すそうだ」。
スプーンでメアリーに飲み物を与えるアール。「大丈夫か?」「平気よ、アール。ねえ、教えて」「何でも聞け」「どうやって大金を手に?」「こう見えても……嘘じゃない。俺は高級ジゴロなんだ」「賞金稼ぎ? 正直に答えて」「じゃ、正直に言う。麻薬組織の運び屋をやってる。305キロのコカインをトラックに積んでる」「教えてくれないのね。何であっても、そばにいるためにお金なんか必要ないわ」。
ジニー「やっと来たのね。お母さんはまだ想っているのよ」「お前を失望させた。俺はひどい父親で最低の夫だった。すべてしくじった。身勝手だった」「そんなことない。遅咲きなだけ」。
「奴ら、怒ってる。一週間以上連絡なし。1200万ドルのコカインだ。ハイウェー中を捜してる」「よし」。
ベイツ「新しい情報が」「ボスは捜査を終了させる気だ」「逮捕できます」「数ヶ月になる」「あと数日」「まだ奴はいるのか? これだけ時間と金をかけた。君はよくやった。もし事務処理で時間を稼げたら、どう動く?」「奴を捜してる組織の2人を追跡します」「よし、やれ」「どうも」。
アールが持つ携帯電話。“着信53件 受信メール98件”。夜。メアリーの息遣いが不安定になる。「どうした? 大丈夫か?」「何でもない。あなたは私の人生で最愛の人、そして最大の苦痛の元。ぜひあなたに知ってほしい。何よりもうれしいの。来てくれて。愛してる?」「メアリー」「昨日より今日の方が?」「明日はもっとだよ」。
(また明日へ続きます)
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