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蓮實重彦『随想』

2011-03-11 02:30:00 | ノンジャンル
 若松孝二監督の'72年作品『天使の恍惚』をスカパーの日本映画専門チャンネルで見ました。過激派の消え行くセクトでの思想闘争を描いたもので、登場人物は「十月」「秋」「月曜日」などの名前で呼ばれ、唐突に何の脈絡もなくセックスシーンが始まるという不思議な映画でした。

 さて、蓮實重彦先生の'10年作品『随想』を読みました。月刊『新潮』の'09年新年号から12月号、'10年2月号から4月号までに掲載された同名のコラムを集めた本です。
 語られているのは、ル・クレジオ氏がノーベル賞を受賞した際の国籍報道について、第一回直木賞を受賞した川口松太郎氏の換骨奪胎と翻案ぶりについて、日本の映画作家を世界に紹介したマルコ・ミュレールについて、オバマ大統領の就任演説の血なまぐささについて、デヴィッド・ボールドウェルの『小津安二郎 映画の詩学』で国民服のことを訳者が軍服とそのまま訳していることについて、中村光夫氏との思い出について、環太平洋大学協会の創始者とジーン・クルーパの話題で盛り上がったことについて、フローベールによる散文に関する考え方について、マイケル・マン監督の『パブリック・エネミーズ』の公開が日本だけ遅れたことについて、芥川賞を受賞した磯崎憲一郎氏の慎みをわきまえたあつかましさについて、'91年にレニングラードを訪れた際に感じた至福感について、中秋の名月をめぐる思い出について、戦後スウェーデンからの帰国子女であった友人の思い出について、高齢でも映画を撮り続けたエリック・ロメールとクリント・イーストウッドについて、文字・活字文化推進機構をめぐるいかがわしさについてです。
 蓮實先生としては平易な言葉使いで、それほど苦労せず読めましたが、それでもフローベールの散文観に関する文章などは、私の凡庸な頭には理解できませんでした。ポストモダンや小津安二郎に関する記述があることで、以前から蓮實先生と接点があるのではと思っていた内田樹さんが、この本の中で蓮實先生によって徹底的に批判されているのには、内田さんの本もよく読んでいる私としては複雑な思いがしました。相変わらず、ご自分の特権的な体験を誇らし気に書く蓮實先生を再発見した本でもあったことを付け加えておきたいと思います。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/^m-goto)