蓮實重彦先生が著書『映画崩壊前夜』で取り上げていた、エリア・スレイマン監督・共同製作・脚本の'02年作品『D.I.』をDVDで見ました。
丘を登って逃げるサンタクロースは少年たちに追いつめられて、ゆっくりと背を向けようとします。「D.I.」のタイトル。車を運転し、近所の人たちに挨拶しながら罵詈雑言をつぶやく男。「愛と苦悩の年代記」の字幕。バス停で待つ男に「バスは来ないよ」と教える近所の男。やがて待つ男はバスが来ないことを知っていると言い、壁には「君への愛で狂っている」の文字が。道路が破壊されているのを通報する車。警官が駆け付けると、屋上からビンを投げ付けて抵抗する男。道路が修復されると、また男はハンマーで破壊し、同じ車がまた通報します。食卓で郵便物をチェックしていた男は、立ち上がるとすぐに崩れ落ちます。隣人の塀の中に繰り返しゴミを投げ込んでいた男は、投げ返されると、なぜもっと早く苦情を言わなかったのかと文句を言います。車をどかすように言われた男は、その車の詳しい情報をくどく尋ねていると、やがて防犯サイレンが鳴り、ナンバープレートを持って男が現れます。道路でリフティングしていた少年のボールが屋上に乗ってしまうと、家の主人はボールに針で穴を開けます。向かいでそれを見ていた隣人は、家に乗り込むと、男を殴る音がします。空地で3人の青年が誰かを棒でめった打ちにして「まだ死なない」と言うと、別の男が現れ、拳銃で3発撃ち込み、その後皆で死体を燃やします。車を運転しながら食べ残した物を車外に放ると、そこにあった戦車が大爆発します。その男(エリア・スレイマン)が病院に着くと、サンタクロースだった男が車椅子で看護婦に押してもらっていますが、車で来た男は、テーブルから崩れ落ちた父と面会します。検問所で道路封鎖が行われ、渋滞する車に引き返すように銃を構える兵士。しかし引き返さない車からサングラスの女性が現れ、検問所に直進してきます。兵士たちは銃を構えますが、女性が一瞬サングラスを取ると、銃を落とし、検問所の塔は崩れ落ちます。「アル・ラム検問所」の字幕。見舞いの男は、さっきの女性を助手席に乗せて、検問所の脇で指を様々に絡ませ合います。夜になると、2台の車は発進して別れていきます。住宅の前で急停車した車は爆弾を投げ込み、住人は消火器で炎を消します。「エルサレム」の字幕。次にはマシンガンの銃撃を受け、翌日来た警官には住人である「パレスチナ地区の秘密の要人」が新車の自慢をして、皆でコーヒーを飲み歓談しているところを、例の女性がガンを飛ばして歩き去ります。パトカーの警官に道を訪ねるアメリカ人女性の観光客に、警官はパトカーの中から目隠しされた男を出して、道を教えさせます。「父重体」の張り紙を壁から別の壁に貼り直す見舞いの男。夜の病院の廊下はタバコを吸う患者で溢れかえっています。見舞いの男は「君への愛で狂っている」の張り紙を車の窓に貼り、検問所近くで女性に見せ、アラファトの顔が印刷されている赤い風船を飛ばすと、それに兵士が気を取られているすきに、二人は検問を突破します。「いつでも撃ちにおいで」と書かれたイスラム女性の看板を見た見舞いの男は、信号で隣に車を停めたユダヤ人と睨み合いになります。射撃練習場でイスラム女性が描かれた標的に射撃する5人。一つ残った標的から現実の女性が現れ、5人を次々と倒し、新たに現れたヘリも爆破します。「父死す」の張り紙を破る見舞いの男。「亡き父に捧ぐ」の字幕とともに、映画は終わります。
様々なエピソードが小出しで別々に現れ、主人公の二人の関係も暗示されるだけで、明確なものは示されません。ユーモラスな滑り出しながら、途中から露骨にイスラエル批判が始まり、その過激さは半端ではありませんでした。パレスチナ人の監督の面白い映画を見たい方には、特にオススメです。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/^m-goto)
丘を登って逃げるサンタクロースは少年たちに追いつめられて、ゆっくりと背を向けようとします。「D.I.」のタイトル。車を運転し、近所の人たちに挨拶しながら罵詈雑言をつぶやく男。「愛と苦悩の年代記」の字幕。バス停で待つ男に「バスは来ないよ」と教える近所の男。やがて待つ男はバスが来ないことを知っていると言い、壁には「君への愛で狂っている」の文字が。道路が破壊されているのを通報する車。警官が駆け付けると、屋上からビンを投げ付けて抵抗する男。道路が修復されると、また男はハンマーで破壊し、同じ車がまた通報します。食卓で郵便物をチェックしていた男は、立ち上がるとすぐに崩れ落ちます。隣人の塀の中に繰り返しゴミを投げ込んでいた男は、投げ返されると、なぜもっと早く苦情を言わなかったのかと文句を言います。車をどかすように言われた男は、その車の詳しい情報をくどく尋ねていると、やがて防犯サイレンが鳴り、ナンバープレートを持って男が現れます。道路でリフティングしていた少年のボールが屋上に乗ってしまうと、家の主人はボールに針で穴を開けます。向かいでそれを見ていた隣人は、家に乗り込むと、男を殴る音がします。空地で3人の青年が誰かを棒でめった打ちにして「まだ死なない」と言うと、別の男が現れ、拳銃で3発撃ち込み、その後皆で死体を燃やします。車を運転しながら食べ残した物を車外に放ると、そこにあった戦車が大爆発します。その男(エリア・スレイマン)が病院に着くと、サンタクロースだった男が車椅子で看護婦に押してもらっていますが、車で来た男は、テーブルから崩れ落ちた父と面会します。検問所で道路封鎖が行われ、渋滞する車に引き返すように銃を構える兵士。しかし引き返さない車からサングラスの女性が現れ、検問所に直進してきます。兵士たちは銃を構えますが、女性が一瞬サングラスを取ると、銃を落とし、検問所の塔は崩れ落ちます。「アル・ラム検問所」の字幕。見舞いの男は、さっきの女性を助手席に乗せて、検問所の脇で指を様々に絡ませ合います。夜になると、2台の車は発進して別れていきます。住宅の前で急停車した車は爆弾を投げ込み、住人は消火器で炎を消します。「エルサレム」の字幕。次にはマシンガンの銃撃を受け、翌日来た警官には住人である「パレスチナ地区の秘密の要人」が新車の自慢をして、皆でコーヒーを飲み歓談しているところを、例の女性がガンを飛ばして歩き去ります。パトカーの警官に道を訪ねるアメリカ人女性の観光客に、警官はパトカーの中から目隠しされた男を出して、道を教えさせます。「父重体」の張り紙を壁から別の壁に貼り直す見舞いの男。夜の病院の廊下はタバコを吸う患者で溢れかえっています。見舞いの男は「君への愛で狂っている」の張り紙を車の窓に貼り、検問所近くで女性に見せ、アラファトの顔が印刷されている赤い風船を飛ばすと、それに兵士が気を取られているすきに、二人は検問を突破します。「いつでも撃ちにおいで」と書かれたイスラム女性の看板を見た見舞いの男は、信号で隣に車を停めたユダヤ人と睨み合いになります。射撃練習場でイスラム女性が描かれた標的に射撃する5人。一つ残った標的から現実の女性が現れ、5人を次々と倒し、新たに現れたヘリも爆破します。「父死す」の張り紙を破る見舞いの男。「亡き父に捧ぐ」の字幕とともに、映画は終わります。
様々なエピソードが小出しで別々に現れ、主人公の二人の関係も暗示されるだけで、明確なものは示されません。ユーモラスな滑り出しながら、途中から露骨にイスラエル批判が始まり、その過激さは半端ではありませんでした。パレスチナ人の監督の面白い映画を見たい方には、特にオススメです。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/^m-goto)