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A・コルバン/J-J・クルティーヌ/G・ヴィガレロ監修『身体の歴史3 20世紀 まなざしの変容』

2011-03-03 08:35:00 | ノンジャンル
 先日、アニー・ジラルドの訃報が朝日新聞に載っていました。渋い味わいのあるフランスの女優さんとして印象に残っています。ご冥福をお祈り申し上げます。

 さて、朝日新聞で紹介されていた、A・コルバン/J-J・クルティーヌ/G・ヴィガレロ監修の'06年作品『身体の歴史3 20世紀 まなざしの変容』を読みました。
 第一部「人体と知識」では、医学と身体の関係、遺伝子と身体の関係が語られ、第二部「欲望と規範」では、性愛の歴史、日常における身体の歴史、身体をトレーニングすることの歴史が、第三部「逸脱と危険」では、奇形の文化史と文化人類学、個人を同定する様々な方法の歴史が、第四部「苦痛と暴力」では、戦争における身体の歴史、ソ連とナチスにおける強制収容所での身体の扱われ方が、第五部「視線とスペクタクル」では、スポーツスタジアムの歴史、映画における身体の歴史、踊る身体の歴史、身体と視覚芸術の歴史が語られます。
 原注を含めると600ページを超える大著ですが、述べられているのは、博物学的な描写による歴史的事実の羅列であり、具体的な事実に関する説明は、ある程度楽しく読めましたが、抽象的な言説になると難解で付いていけず、飛ばし読みしてしまいました。原作がフランス語の本であり、読者もフランス人を想定して書いているようで、第五部を除いて(特に映画の身体に関しては蓮實先生が言う固有名詞が多く登場していました)、内容がフランスやヨーロッパに偏っているのも気になりましたが、ヒトの遺伝子と最も単純な有機体の遺伝子は数がほぼ同数であり、多くが基本的に同一であることや、接吻は19世紀末までフランスでは猥褻罪の対象だったということ、第一次世界大戦では民間の死者はごく少数だったということ、第一次世界大戦以来、戦争で負傷する人の80パーセントは大砲によっていることなど、新しく知ることも多くあり、勉強になりました。20世紀の身体の歴史を網羅的に知りたい方にはオススメです。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/^m-goto)